私はかつて税理士試験の某大手予備校で講師をしていました。
そんな経歴から、現在も定期的に地元の同業者団体などから研修会講師の依頼を受け、人前で喋っています。
そんな人間なので、 主に同業者方面から
「アンタみたいに人前でペラペラ喋るにはどうしたらいいの?」
と聞かれることも。
そこでこの記事では、人に伝わる話し方をするために元講師な私が心掛けていることを5つ紹介してみます。
【人に伝わる話し方をするために心掛けていること】
上の5つのうち最初の2つが「事前準備編(準備の段階でこれは絶対にやるようにしてるよ)」で、
残り3つは「当日編(当日実際に喋るときはここに気をつけてるよ)」です。
(というか、最後の1つは「そもそも論」かもしれません。)
「人前で上手く喋るコツを知りたい!」という方の参考になれば幸いです。
この記事を書いた人

過去に税理士試験の予備校で相続税を教えていた経験から、相続税が専門分野。Macユーザーで会計ソフトはクラウド推し。
事務所開業以来、自作ホームページ(ここ)や各種SNSなど、ネット上での情報発信にも力を入れています。
詳しいプロフィール(経歴や活動実績など)
目次
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1.自分本位で喋らない
まずは事前準備としてやるべきことの1つ目です。
事前準備において(自分でレジュメを作る場合の)レジュメ作成と並んで最も大きな作業として、
どんな流れでどういうことを喋るのか、いわゆる「シナリオ作り」があります。
ここで心掛けていることは、自分本位で喋る内容を決めないということ。
「自分がこう喋りたい!」ではなく、


自分中心で物事を考えない。
私の研修会に来ていただく方のほとんどは、
私が喋る内容について(税理士なのでベースとなる知識はあったとしても)深く理解はしていません。
また、私のことを知らない人が大半なので、知り合いが話しているときのように
「こちらが言っていることを理解しようと『努力してくれる』」ことも期待できない。
なので、独りよがりな喋り方をしてしまうと絶対に伝わりません。
研修会に来る人のレベル感を予想して、
「だったらこういう順番で喋ろうかな」
「こういう例を出してみたら『ああなるほどな』とイメージしやすいんじゃないか」
といった点を常に意識しながらシナリオを作っています。
私が実際にやっていること
といっても、これだけじゃ漠然としたアドバイスになってしまうので、
私自身が実際にどういう喋りを意識しているのかをいくつか紹介してみます。
先日、京都の税理士の組合で税理士向け研修会の講師を担当しました。
そのときに撮った映像は↓YouTubeも公開しているので興味のある方は見ていただければと思いますが…。
こういった研修会で私が意識しているのは、要所要所で
- 今何について喋っているのか
「これってこういう文章になってますけど、これはつまりこういうことです」など - これから何を伝えたいのか
「今から何の話をするかというと、これこれこういうことです」など -
これから喋る内容と先に喋った内容とのつながり
「さっきこう言いましたけどこれが今から喋る内容にこのように関わってくるんです」など
というような、いわば「喋りの現在地」を聞いている方に対して細かく伝えることです。
私の研修会を聞かれた方の感想として、

というのが凄く多いんですが、
まさに私自身、そう言っていただけるような喋りをしようと心掛けています。
巷の講師でよくいるのが、テキストに載っている内容を何の補足もなしに順番に淡々と説明していく人。

だからこうなんです。
次はこの規定について。これはこうなんです。
で、その次はこの規定について。これはこうなんです…(続く
など、テキストの内容を淡々と説明していくだけだと聞いている人は辛いですよね。
まず確実に眠くなります。
いかに興味を持って自分の話を聞いてもらえるか。
そのためには、「へぇそうなん」「なるほど」はもちろん、
時には「え?そうなん?」「ん?じゃあこの場合はどうなんの?(それって間違ってるんじゃね?)」ともあえて思わせてみる。
(そしてその後その疑問を解消する、という流れへ。)
私はそうした工夫を心がけていますし、それをひとことでざっくり言うと、
「自分本位ではなく、聞いている人本位でシナリオを考える」ということになるのでは、と思います。
2.カンペを読まない
2つ目はカンペを読まないことです。
これは「当日喋るときに意識すべきこと」と思っている人も多いのですが、
当日カンペを読まずに済むように事前準備をしっかりとしましょうという意味で、ここで挙げさせてもらいます。
当日カンペを読まずに済むように、
事前準備の段階で、考えたシナリオをほぼ完璧に自分の頭の中に叩き込む、ということです。
実際、私の研修でも↓カンペを見ずほぼソラで喋っているシーンがあるのですが(その場所から再生されます)、
これができるのも、「ここで喋ることのシナリオ」が自分の頭の中に完璧に入っているからです。
政治家やプロ野球選手・監督のスピーチに学ぶ
今年9月に行われた自民党の総裁選では、とある候補者の「カンペ丸読み」が話題になりました。
それがネット界隈で批判の対象にもされていたり。
ただ、その候補者はそこでは落選したものの、
その後就任した大臣職においてはカンペ丸読みの機会も大幅に減少。
界隈では批判から一転、「覚醒した」とすら言われています。
それぐらい、「カンペ丸読み」の印象って悪いんですよね。
(まぁ、この人の場合、批判の原因はそれだけじゃない気もしますが(笑))
もちろん、カンペ丸読みでも(次の3つ目に挙げている)声の強弱や間を効かせる=棒読みしないことである程度「伝わる喋り」をすることはできます。
また、プロ野球のシーズン最終戦でよくある、引退する選手や監督のスピーチなども、
その人自身がそれまで築き上げてきた強烈なストーリーがあるので、
たとえ棒読みであっても伝わるものはあるし、聞いている側も感情移入できる。

(カンペ丸読みだった)DeNAの森唯斗投手のスピーチも同じぐらい感動しましたし。
ただ、我々はそうしたスター選手たちとはまったく違う、ただの人ですから。
聞いてる人にとって全く思い入れのない「ただの人間」がカンペを丸読みしてしまうと、
聞いている方としてはまぁキツいです。
税理士の研修の場合、条文の文言を紹介することもありますし、
そういった文章の場合は丸読みしなければ正確な文言が伝わらない。
なので、「何があっても全部カンペを見ずに喋るな」と言いたいわけではもちろんありません。
それでも、1つ目で紹介したような、たとえば「喋りの現在地」を伝えるようなとき。
そんなときも下を向いてカンペを読んで…だったら、せっかく準備したものもまったく伝わりません。
要所要所で聞いている人の目を見て語りかける。
それができてこそ、伝わる喋りになるのかなぁ、と。
それができるように、事前準備を自分の中で少しでも完璧にする。
喋る内容をいつでもソラで再現できるレベルまで頭の中に落とし込む、というのを必ずやってください。
私はそこを心掛けています。
以上、事前準備編としては、
聞いてる人本位で喋る内容を考える、カンペを読まずに済むように喋る内容を頭に叩き込む、の2つです。
【関連するブログ記事】
- 聴けるセミナー講義への第一歩は教材の棒読みをしないことから
- 「途中で喋りが詰まったときにどうするか」よりも「途中で詰まらないようにする」ことを考える
- 緊張しぃな私が人前でうまく喋るために心掛けている3つのこと
3.声の強弱や間を意識する
残り3つは「当日実際に喋るときはここに気をつけてるよ」という点です。
その1つ目は声の強弱や間を意識すること。
この点については以前ブログ記事としても書きました。
関連記事講義にメリハリを付けるには「声の強弱」と「間」が有効
1つ上の章で紹介している研修動画でもこの点はかなり意識しています。
(収音の関係上声の強弱は伝わりにくいですが、間や緩急は伝わるのかなぁ、と。)
「声の強弱」とは、強い声で喋ったり弱い声で喋ったりを織り混ぜること。
そして「間」とは、淡々と喋るのではなく、間(あいだ)にあえて数秒「喋らない時間」を設けてみることです。
こうした「喋りの波」をあえて作ることで、喋りにメリハリを出すことができます。

もちろん限界はありますが。(だからこそカンペを読まずに済む準備が重要)
特に、喋り慣れていない方が怖がるのが間を取ることですね。
あえて喋らないタイミングを作るという、それが、喋り慣れていない方は結構

「間」といえば、狙ったものではなく自分自身の準備不足で(次喋る内容が浮かんでこなくて)できちゃうモノもあるんですが、それはホント恐怖でしかないので(^^;
そうならないように事前準備をしっかりと、というのはさっきの話にも繋がってきますが、それはそれとして。
あえて喋らない。
3〜5秒ほど「間」を取ってみるのは有効なので、試してみてください。
4.出だしと締めを意識する
「当日実際に喋るときはここに気をつけてるよ」という点の2つ目は、出だしと締め(最後)の喋りは特に完璧に、です。
税理士相手の研修会は通常3時間ありますが、
たとえば3時間だったら、その出だしと最後の2つ。
とにかくここをスムーズに・できるだけ完璧に終えること。これ大事です。
出だしのスムーズさを意識しなければいけない理由は、聞いている人の信頼を得るためです。
知らない人間が講師として来た場合、聞いている人(特に税理士に多い偉そうな人種(笑))は


という、いわば「疑いの目」でこちらを見ています。
そういう人たちに「ま、これならいいか」とまずは思わせること。
そのためにも、最初の「入り」は特に大事です。
そして、締めを意識する理由はもちろん、「終わりよければすべてよし」ですね。
最後時間どおりに(←これも大事。延長厳禁です)きっちり終われば、講師に対する印象も良く、帰っていただけます。
当然、いい印象で終わろうと思ったらそれまでもスムーズに喋ってこないといけないですが、
せっかく途中までスムーズに来ていたのに最後グッダグダで終わっちゃったら

となっちゃうので。
なので、最初と最後、この2つは特にスムーズに行くように、事前の準備=シナリオ作りをしっかりする。
出だしと締めはカンペを見ずソラで喋れるように準備をする。
これまでしてきた話の繰り返しになりますが、それをする上でも、この2つの時点には特に力を入れて準備を行いましょう。
5.とにかく場数を踏む
最後5つ目は冒頭にも言ったように、当日の喋りというか「そもそも論」です。
人前で上手く喋るにはどうしたらいいか。
人に伝わる話し方をするにはどうしたらいいか。
もう、これしかないです。場数を踏んでください。
私が今こうして人前でペラペラ喋れているのも、たくさんの場数を踏んできたからです。
講師時代はもちろん、講師を辞めてから干支1周以上の年数が経った今でも、地道に場数を踏み続けています。
(このブログを書いたりYouTubeをやったりしているのもその「場数」に入ります。)
ド素人からの講師生活スタートを経て
そんな私も、某予備校に講師として就職したときは「素人そのもの」でした。
出勤した初日、職場の先輩に


と絶望したところからのスタートでした。
そこから、1ヶ月間猛練習してなんとか人前で喋れるようになり、授業がスタート。
1年目はとにかく訳が分からず、与えられた教材を自転車操業で予習して喋るだけ。
2年目も同じ感じであっという間に過ぎていき。
ただ、3年目の出だしぐらいでようやく

と感じるようになりました。
それまでは一言一句レベルでシナリオをがっちり作って授業に臨んでいましたが、
そこまでガッチリしたシナリオでなくても「喋れる」感覚をようやく得られたというか。
当時の私は1回あたり3時間の授業を週4回担当していました。
1年は約50週なので、1年間で3時間×4回×50週=600時間。
それを2年なので、1200時間。
1200時間も人前で喋ってようやく「あ、なんか掴んできたかも」なんで、
どんだけ不器用な人間やねん、という話なんですが(^^;
ただ、それぐらい場数踏んでナンボなんです。
いろいろ試行錯誤してナンボなので、
「喋るスキルを上げたい」「その必要性に迫られている」という人については、
いろんな形で場数を踏む、アウトプットの機会を設ける・増やすことをとにかく意識しましょう。
まとめ:とにかく実践あるのみです!
以上、この記事では人に伝わる話し方をするために元講師な私が心掛けていることをあれこれ紹介してみました。
もう一度、今回挙げた5つをまとめてみます。
【人に伝わる話し方をするために心掛けていること】
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小学生相手の授業も勉強になるし面白いです
母校の小学校で税金の授業をしてきました。心掛けたことや感じたことの覚書
などの記事を書いています。
枝派の部分もいろいろありますが、そういうところはやっているうちに自分なりに
「あ、ここは気をつけよう」
というのが出てきますので。
とにかく、この記事で紹介した5つのポイントを意識しながらまずは練習をしてみてください。

詳しくは研修会講師に関するサービスページをご覧ください。
元予備校講師の経験を活かしたわかりやすいアドバイスでお困りごとを解決します。
オンラインでもお受けしていますので、お住まいの地域問わずお気軽にどうぞ。










