国内財産?国外財産?

相続税や贈与税の財産の所在地の判定基準【国内財産か国外財産か】

相続税や贈与税では、財産をもらった人の納税義務者の区分に応じて

  • 日本にある財産だけの課税だけで済むのか
  • 外国にある財産も含めて課税されるのか

が違ってきます。

ではその財産が「日本にある」か「外国にある」かの基準はどこにあるのでしょうか?
この記事では、財産の種類ごとに、その判定基準を紹介していきます。

この記事を書いた人


税理士 尾藤武英
税理士 尾藤 武英(びとう たけひで)
京都市左京区下鴨で開業している税理士です。
過去に税理士試験の大手予備校で相続税を教えていた経験から、相続税が専門分野。
事務所開業以来、相続税や贈与税の申告、相続税対策、相続税贈与税をテーマとした研修会の講師など、相続税に関する業務を多数行っています。
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動産、不動産、不動産の上に存する権利(借地権など)

相続や遺贈、贈与で財産を取得した時にその財産が所在している場所にあるものと考えます。

【例】

  • 日本にある自宅や家具などの家財道具、手持ち現金→国内財産
  • ハワイにある別荘→国外財産

これは一般的なイメージそのものなのでわかりやすいですね。

ただし、船舶や航空機については、船籍や航空機の登録をした期間の所在地にあるものと考えます。

金融機関への預金や貯金、積金など

預金や貯金、積金などの受け入れをした営業所や事業所の所在地にあるものと考えます。

【例】

  • マイアミ銀行(本社:アメリカ)豊山支店に預け入れた預金→国内財産
  • 鈴木銀行(本社:愛知県豊山町)マイアミ支店に預け入れた預金→国外財産

金融機関の本社がどこにあるのかは問わず、「支店、窓口ベース」で判定です。

生命保険契約や損害保険契約の保険金

その契約をしていた保険会社の本店や主たる事務所の所在地(国内に本店や主たる事務所が無い保険会社の場合は契約手続をした営業所や事務所の所在地)にあるものと考えます。

↑こう言われたらややこしく感じますが、結論は
「どの保険会社から支払われようが、日本で契約した保険の保険金は全て国内財産」
と考えて大丈夫です。
(昔はカッコ書きの部分は無かったんですが、外資の保険会社の参入によってカッコ書きの部分が付け加えられたという経緯があります。)

退職手当金等

給与の支給者の住所または本店や主たる事務所の所在地にあるものと考えます。
働いていた場所が国内で、国内にある事業者から退職金をもらった場合にはその退職金は国内財産です。

貸付金債権

相続や遺贈、贈与時の債務者の住所または本店や主たる事務所の所在地にあるものと考えます。
ただし、事業上の短期債権(6ヶ月以内に支払期限が来るもの)についてのみ、債権者の住所または本店や主たる事務所にあるものと考えます。

これも文章よりも具体例に当てはめた方がわかりやすいですね。

【例】
日本で事業をしている被相続人が外国で事業をしている人からの受取手形を有していた場合

  • 相続開始から5ヶ月後に決済日が来るもの→国内財産
  • 相続開始から7ヶ月後に決済日が来るもの→国外財産

【例】
日本に住む被相続人が外国に住む人に対してお金を貸し付けていた場合

  • 相続開始から5ヶ月後に返済期限が来るもの→国外財産
  • 相続開始から7ヶ月後に返済期限が来るもの→国外財産

というように、債権については基本は債務者の手元にあるものと考えますが、「事業上の短期債権」のみ債権者の手元にあるものと考えますので要注意です!

売掛金や営業権なども「債権者」基準です

ちなみに、上の「事業上の短期債権」には、事業をされていた方の事業上の権利、具体的には、

  • 売掛金
  • 営業権
  • 事業上の電話加入権

も含めて考えます。

つまり、もう一度整理すると、

  • 売掛金、営業権、事業上の電話加入権
  • 受取手形など、事業取引に関して発生した債権で、6ヶ月以内に決済日が到来するもの

については、事業をされていた方(債権者)の手元にあるものと考える、ということですね。

このあたりは条文と通達でごちゃごちゃした言い回しが連発されていますから、解読するのにも少し苦労します(^^;

社債、株式、法人に対する出資その他の有価証券

これらの有価証券を発行した法人の、相続や遺贈、贈与時の本店や主たる事務所の所在地にあるものと考えます。

  • 株式会社マイアミ(本社:アメリカ)の株式や社債→国外財産
  • 株式会社鈴木(本社:愛知県豊山町)の株式や社債→国内財産

これもイメージ通り、でしょうか!?

国債、地方債、外国が発行する公債

国債や地方債は国内、外国や外国にある自治体が発行する公債は国外にあるものと考えます。

その他にもいろいろあります

その他、相続税法では

  • 鉱業権や租鉱権、採石権
  • 漁業権
  • 集団投資信託、法人課税信託に関する権利
  • 特許権、実用新案権、意匠権、商標権など
  • 著作権、出版権、著作隣接権
  • 低額譲渡があった場合の時価と対価との差額部分

といった財産についても、「これはここにあるものと考えますよ」という細かな基準を定めています。
これらまで挙げだすと凄く長くなりますのでこの記事では省略しますが、気になる方は↓こちらの国税庁のページをご覧下さい。
No.4138 相続人が外国に居住しているとき|国税庁

相続税や贈与税の財産の所在の判定基準のまとめ

以上、この記事では「相続税や贈与税を計算する上での財産の所在の判定基準」をいろいろと紹介してきました。
言われて納得というものが大半でしたが、債権などの一部の財産では少しややこしい基準が設けられています。

とはいえ、↓下の別記事でも書いていますが、
大半の方にとっては、外国にある財産に対しても日本の相続税や贈与税がしっかりとかかってきちゃいます。

国内にある財産しか課税されなくて済むという方はほんの一握りなわけで、
その点から考えると、この記事の論点はややマニアック寄りかもしれません(^^;


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