所得税の源泉徴収制度に関する記事・第2弾です。
前回の記事では「源泉徴収制度」と呼ばれるものについて、
どんな制度で、誰がしなきゃいけないのかを、しなかった場合に課されるペナルティにも触れながら見てきました。
前回の記事源泉徴収義務者とは?こんな人は源泉徴収が必要です
今日は前回の続きとして、
どんな種類の金品のやり取り(以下「所得」と呼びます)について源泉徴収をしなければいけないのかを見ていきます。
- 源泉徴収義務者とは?こんな人は源泉徴収が必要です
- 源泉徴収の対象となる所得には何がある?(←今はここ)
- 源泉徴収税額はいくらにすべき?【源泉徴収税率のまとめ】
- 報酬や料金の源泉徴収税率は何%?【種類別に紹介】
- 【源泉所得税の納付期限】原則と納期の特例の違いとは?
- 中途退職者に給与の源泉徴収票を発行する場合の4つの注意点
この記事を書いた人
税理士試験大手予備校の元講師で、事務所開業後は所得税などの研修会講師を数多く担当。
Macユーザーで、クラウド会計を活用したスモールビジネス支援にも力を入れています。
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支払いを受ける者が誰なのかで対象が変わります
源泉徴収の対象となる所得は、支払いを受けるのが
- 日本に住んでいる(1年以上居所に滞在している場合を含む)個人なのか
- 日本に本社、本店などがある法人なのか
-
外国に住んでいる個人または海外に本社本店などがある法人なのか
によってまずは異なります。
このうち、3つ目の「外国に住んでいる個人」のことを所得税法では「非居住者」、「海外に本社本店などがある法人」のことを「外国法人」と、それぞれ呼んでいます。
これら外国の方に支払う所得にはより複雑な源泉徴収の取り決めがなされていますが、そこまで触れると長くなるので今日の記事では省略します。
非居住者や外国法人の源泉徴収の対象になる所得について詳しく知りたい方は↓以下の国税庁のページをご覧下さい。
No.2878 国内源泉所得の範囲(平成29年分以降)|国税庁
居住者の場合
上の黄色のボックス1つ目の「日本に住んでいる(1年以上居所に滞在している場合を含む)個人」のことを所得税法では「居住者」と呼びます。
支払いを受けるのが居住者である場合、源泉徴収の対象となる所得は大きく分けて以下の12種類です。
1 利子等
2 配当等
3 給与、賞与等
4 退職手当金等
5 公的年金等
6 報酬・料金等
7 保険会社などから支払われる個人年金
8 定期積金の給付補填金等
9 匿名組合契約などに基づく利益の分配
10 特定口座の中にある上場株式の譲渡益等
11 懸賞金付預貯金などの懸賞金等
12 割引債の償還差益
「等」が付いているのが多すぎですが、ザックリ挙げているので、細かいのは全部「等」の中に省略しています。
1〜5は皆さんにも馴染みのあるものだと思います。
7以降でよく見かけるのは7とか10とか11あたりでしょうか。
競馬の一口馬主をされている方は9もお馴染みですよね。(後述します)
ちなみに、「6 報酬・料金等」の内訳はさらに細かく規定されています。
「報酬・料金等」の範囲
1 原稿料、デザイン料、講演料、技芸・スポーツ・知識等の指導料など
2 弁護士、公認会計士、税理士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
3 社会保険診療報酬支払基金から支払われる診療報酬
4 プロ野球選手、プロサッカー選手、競馬の騎手、モデルや外交員、集金人、電力量計の検針人などに支払う報酬・料金
5 芸能人や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
6 バー・キャバレーなどのホステス、コンパニオンなどに支払う報酬・料金
7 プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
8 事業の広告宣伝のための賞金や馬主が受ける競馬の賞金
(国税庁の以下のページから引用したものに加筆・修正しています)
No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁
我々税理士がお客さんから受け取る報酬もここにバッチリ挙がっているので、源泉徴収が必要だ、というわけです。
こうして見てみると、いろんなものが源泉徴収の対象として指定されていることがわかります。
内国法人の場合
一方、黄色のボックス2つ目の「日本に本社、本店などがある法人」(所得税法では「内国法人」と呼びます)が支払いを受ける場合の源泉徴収の対象となる所得は以下の7種類のみです。
1 利子等
2 配当等
3 馬主が受ける競馬の賞金
4 定期積金の給付補填金等
5 匿名組合契約などに基づく利益の分配
6 懸賞金付預貯金などの懸賞金等
7 割引債の償還差益
個人の所得から、3、4、5、7、10と6のうち競馬の賞金以外の全部を除いた残りです。
税理士に支払う報酬が源泉徴収が必要なのに対して、税理士法人に支払う報酬に源泉徴収が不要な訳は、↑上のボックスの中に税理士報酬が含まれていないからなんです。
逆に、利子や配当については支払いを受けるのが個人であろうが法人であろうが、源泉徴収の対象です。
ご自身が源泉徴収義務者だ、という方は、上記それぞれの所得を支払う際には源泉徴収を忘れないようにしましょう!
趣味に走ったまとめ
どんな所得が源泉徴収の対象となるのかのまとめとしてふさわしい(?)例が、一口馬主の賞金です。
一口馬主をされている方は、所有馬の活躍によって自分の手元に賞金が入ってくるまでに3回源泉徴収をされていますが、そのお金の流れは
JRA
↓
↓(「法人への競馬の賞金の支払い」なので源泉徴収される)
↓
クラブ法人
↓
↓(「法人への匿名組合契約の利益の分配」なので源泉徴収される)
↓
愛馬会法人
↓
↓(「個人への匿名組合契約の利益の分配」なので源泉徴収される)
↓
出資者
と、間に2つの法人を経由していて、それぞれにお金が流れるたびにそれぞれの取引が源泉徴収の対象となる所得に該当するので、3回とも源泉徴収をされてしまっている、ということなんです。
…競馬に興味が無い方にとってはワケワカラン話ですよね、スイマセンm(_ _)m
ま、根拠に基づいて源泉徴収されているんだという好例をひとつご紹介しました!
源泉徴収された税額は申告をすることで精算されます
こうして徴収される源泉徴収税額ですが、給与や賞与に対する源泉徴収税額は事業者が行う年末調整を通じて、また、報酬や料金に対する源泉徴収税額は確定申告をすることによって、それぞれ精算されます。
昨年度中に何らかの形で源泉徴収された税額がある方で還付を受けられそうな方は忘れずに申告しましょう!
所得税の確定申告は3月15日で終了しますが、還付申告の場合は確定申告期限とは関係無く、今年の1月1日から5年間提出することが可能ですよ。
次の記事では、この記事を踏まえて、源泉徴収をすべき「金額」はいくらなのか?について見ていきます。
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