国税庁が2024年分の贈与税申告状況を公表。相続時精算課税は6割増も、暦年課税は大幅減

国税庁が2024年分の贈与税申告状況を公表。改正の影響で相続時精算課税は増加

先日、国税庁から2024年(令和6年)分の贈与税の申告状況が公表されました。
令和6年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について(報道発表資料)| 国税庁

この発表は毎年行われていますが、
2024年といえば贈与税で大きな改正が入った、いわば「適用初年度」。
解説記事相続税と贈与税は2024年からこう変わった!改正点を徹底解説
その影響は申告件数などにもわかりやすく現れており、とても興味深いものとなっています。

この記事では、国税庁の公表内容を詳しく解説していきます。

この記事を書いた人


税理士 尾藤武英
税理士 尾藤 武英(びとう たけひで)
京都市左京区下鴨で開業している税理士です。
過去に税理士試験の大手予備校で相続税を教えていた経験から、相続税が専門分野。
事務所開業以来、相続税や贈与税の申告、相続税対策、相続税贈与税をテーマとした研修会の講師など、相続税に関する業務を多数行っています。
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贈与税全体の申告件数は前年よりも減少

まずは贈与税全体(暦年課税+相続時精算課税)の申告状況から見ていきましょう。

  • 贈与税の申告書の申告人員は約474,000人で、前年比36,000人減(▲7.0%)
  • うち申告納税額がある方は約333,000人で、前年比43,000人減(▲11.4%)
  • 申告納税額は3,935億円で、前年比387億円増(+10.9%)

このように、申告件数は減ったものの納税額は増えた結果となりました。

令和6年の贈与税の申告状況引用元:令和6年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について(報道発表資料)| 国税庁

グラフを見てのとおり、申告件数は4年前(令和2年/2020年)までの水準に戻りました。
令和2年といえば、その年の年末に公表された税制改正大綱で改正の可能性が初めて示唆され、我々業界人()が大いにざわついた年。
その翌年から駆け込みで前制度での申告が増えていたものが改正後元に戻った、と考えれば合点がいく動きです。

一方、申告納税額は改正の影響を受けることなく(?)今回も過去最高を更新しています。
(右肩上がりに増えていますね。)

暦年課税の申告件数は2024年改正の影響で大幅減

ここからは、上の数字を贈与税の課税方法別(暦年課税・相続時精算課税)に分けて見ていきます。
まずは、(精算課税と違い)何も選択をしない場合に適用がある暦年課税からです。

  • 暦年課税の申告人員は約397,000人で、前年比64,000人減(▲14.0%)
  • うち申告納税額がある方は約327,000人で、前年比44,000人減(▲11.8%)
  • 申告納税額がない方は約70,000人で、前年比20,000人減(▲22.2%)
  • 申告納税額は約3,274億円で、前年比289億円増(+9.7%)
    1人当たりの申告納税額は約80万円から約100万円にアップ(+20万円)

全体とだいたい同じ動きに見えるのですが、過去10年の推移を見てみると、特徴的な点が1つ見えてきます。
↓このグラフ、暦年と精算が一緒になっていてわかりにくいのですが、暦年の申告人員(長い方の棒グラフ)だけを見てください。

令和6年の贈与税の申告状況(暦年課税・精算課税別)引用元:令和6年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について(報道発表資料)| 国税庁

これを見ると、我々の業界がざわつく直前・令和2年(2020年)の暦年課税の申告人員が約446,000人だったのに対し、2024年は約397,000人。
ということは、実際に改正が行われたことにより、4年前以前の水準をさらに下回る申告件数まで落ち込んでいる(約49,000人減)ということです。
2024年分の贈与から生前贈与加算の対象年数が7年に延長された改正の影響が如実に現れていると言えますね。

ここで減った分がどこに行ったのかというと、それは次の章にて。(精算課税ですね(^^)

相続時精算課税の申告件数は6割増!も、暦年課税がそのまま移行しただけ?

というわけで、お次は相続時精算課税の申告状況を見ていきましょう。

  • 精算課税の申告人員は約78,000人で、前年比29,000人増(+59.2%)
  • うち申告納税額がある方は約6,000人で、前年比1,000人増(+24.6%)
  • 申告納税額は約661億円で、前年比98億円増(+17.5%)
    1人当たりの申告納税額は約1,216万円から約1,146万円にダウン(▲70万円)

こちらはこれまでにない動きとなっています。
申告件数は前年比6割増
とはいえ…。

令和6年の贈与税の申告状況(暦年課税・精算課税別)引用元:令和6年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について(報道発表資料)| 国税庁

もう一度このグラフで確認してみると(短い方の棒グラフです)、暦年との件数の違いは歴然。
「そら、元が少なかったら割合にするとそれぐらいは増えるよなー」
って感じですよね(^^;
ちょうど、暦年課税で減った分がほぼそのまま精算課税に流れてきた(=暦年の代わりに精算を選ぶ人が増えた)と言える状況です。

また、こちらも元の件数自体が少ないとはいえ、
1人当たりの納税額が減っているのも、基礎控除110万円が創設された改正の影響を感じさせます。

2024年(令和6年)分贈与税申告状況のまとめ

こうして見てみると、今回の贈与税の改正は申告状況にも少なからずの影響を与えていることがよくわかります。
最後に、この記事で紹介した2024年(令和6年)分の贈与税の申告状況をざっくりとまとめてみます。

  • 贈与税全体の申告件数は前年比では減少も、改正騒動前の水準に戻っただけとも言える
  • 改正により暦年課税の申告件数が減少し、その分が相続時精算課税に移行した
  • 申告件数が減った一方、暦年課税の納税額は1人当たり約20万円増加。
    総額でもここ10年で最高を記録し、納税額がない人の数も20,000人減少

「相続を見据えた財産の移転は暦年課税ではなく相続時精算課税で。
そのために精算課税の敷居を下げるんだ。」

という今回の改正に対する課税庁の意図が一定程度現れた結果、と言えるのではないでしょうか。

これが今後どう動いていくのか。
また、これを受けて次の改正はあるのか。
引き続き注目してまいります。


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