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2024年タワマン節税改正の影響は京都市内や滋賀県内にも及びます

“タワマン節税”改正の影響は京都市内や滋賀県内にも及びます

2024年1月から、居住用の区分所有マンションの相続税評価額(相続税贈与税課税上の財産価値)の計算方法に見直しが入りました。

これにより、世の中には「タワマン節税が終わりを迎えた」とのネット記事がたくさん出ています。
また、私の地元・京都の同業者もみんな

あの改正ってタワーマンションが対象なんでしょ?
そんな高い建物がない京都には関係ないのでは?

といった認識です。

が、今回の見直しはあくまでも「居住用の区分所有マンション」が対象であり、
居住用マンションの1室であればタワーマンションに限らず対象となります。
そしてそれは東京や大阪だけでなく、京都市内や滋賀県内のマンションでも同様です。

この記事では、今年からの「タワマン節税」改正の内容を改めて整理しつつ、
この改正が京都や滋賀にあるマンションの相続税評価額の計算にどれだけ影響を及ぼすのか、実例を挙げながら検証してみます。

この記事を書いた人


税理士 尾藤武英
税理士 尾藤 武英(びとう たけひで)
京都市左京区下鴨で開業している税理士です。
過去に税理士試験の予備校で相続税を教えていた経験から、相続税が専門分野。
事務所開業以来、相続税や贈与税の申告、相続税対策、相続税贈与税をテーマとした研修会の講師など、相続税に関する業務を多数行っています。
詳しいプロフィール(経歴や活動実績など)
相続税・贈与税に関するサービス
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【前提】「タワマン節税」改正の具体的な内容とは

まずは前提として、今回の改正の内容をざっと確認しておきましょう。

2024年1月から、一定の要件に当てはまる居住用マンションについて相続税評価額が最低でも市場価格の6割となるよう、評価方法が改正されています。

具体的には、マンションの建物部分・敷地部分ともにそれぞれ以下の算式を組みます。

※リンク先はそれぞれの項目の当サイト内の解説記事です

従来の計算に、「区分所有補正率」というものが新たに加わることとされました。
区分所有補正率は「従来の方法で求めたマンションの評価額が税務署が想定する市場価格とどれだけ離れているか」に応じ、以下の3パターンに分かれています。
(スマホの方は表をスクロールしてご覧ください)

ケース 区分所有補正率
❶ 従来の評価額が想定市場価格とかけ離れている(=安い)
(評価乖離率が1.667以上)
評価乖離率×0.6
❷ 従来の評価額と想定市場価格の乖離が小さい
(評価乖離率が1〜1.666の間)
何もしない(=「補正なし」
❸ 従来の評価額が想定市場価格より高い
(評価乖離率が0.999以下)
評価乖離率

実務上❸に当てはまるケースはほぼないと思われるので、以下❶❷だけを意識してください。
(なのでそこだけ太字にしました)

ここで出てきた「評価乖離率」というのは想定される市場価格が従来の方法で求めた評価額と比べてどれだけ高いかを表す値で、
たとえばこれが2だということは、従来の評価額が市場価格の半分でしかない、ということです。
その上で、以下のような計算式を組みます。

【例】従来の評価額が1,000万円のマンションの評価乖離率が2の場合(上記表の❶に該当)
「1,000万円×2×0.6=1,200万円」と、従来より20%評価額が引き上がる

「評価乖離率」は4つの指数をもとに算定される

では、上の例に挙がっている「2」という評価乖離率はどのようにして求めるのでしょうか。
具体的な計算式は別記事(該当箇所に直接飛びます)で紹介しているのでここでは省略しますが、
考え方は↓以下のとおりです。

評価しようとするマンションの

  1. 築年数が新しいほど
  2. 総階数が高いほど
  3. 所在階が高いほど
  4. 部屋の専有面積に占める敷地面積の割合が低い(≒建物が高層である)ほど

評価乖離率は高くなる→以前より相続税評価額が引き上げられる可能性が高い

上記❶〜❹の要素を数値化したものが評価乖離率で、これが高いほど相続税評価額と時価との乖離も大きい、と判断します。
算定要素に❷❸❹が入っているので、一般的に、低層よりも高層のマンションの方が評価乖離率は高めに出る傾向にあります。

この記事の冒頭で紹介したような

これはタワマン節税を封じるための改正だ
この改正はタワマンにしか関係ない

といった声が多いのはそれが理由です。
ただ、その認識は間違っています。

「タワマン節税」改正の影響は京都滋賀にも及ぶ【実例で検証】

今回の改正を迎えるにあたり、
「この改正が自分にどれだけ影響があるのか(世の同業者の「京都には関係ない」という認識は合っているのか)」
を確かめるため、私は実際に評価乖離率や区分所有補正率を計算してみました。

材料としたのは、私が過去に相続税の申告などで目にした京都市内や滋賀県内に所在する居住用マンションの情報です。
それらのマンションの所有者が仮に今年お亡くなりになったとした場合、今回の改正は評価額の計算にどれだけ影響を及ぼすのでしょうか。

以下の4つのマンションについて、それぞれ評価乖離率→区分所有補正率を計算してみました。
(スマホの方は表をスクロールしてご覧ください)

A室 B室 C室 D室
建物の築年数 21年 18年 23年 46年
建物の総階数 14階 6階 5階 11階
部屋の所在階 3階 4階 4階 2階
敷地面積/専有部分面積 0.156 0.684 0.563 0.266
評価乖離率 2.495 1.923 1.896 1.499
区分所有補正率 1.497 1.1538 1.1376 補正なし

A室からD室まで区分所有補正率が高い順に並べてみました。
評価乖離率が1.499とそれほど高くない(具体的には1〜1.666の間に収まる)D室は従来の評価額のまま補正なしでOKですが、
1.667以上となるA〜C室は評価乖離率×0.6=区分所有補正率を従来の評価額に乗じます。

つまり、それぞれのマンション(建物・敷地合わせて)の従来の評価額がいずれも1,000万円だとすると、

  • A室=1,000万円×1.497=14,970,000円
  • B室=1,000万円×1.1538=11,538,000円
  • C室=1,000万円×1.1376=11,376,000円

が新たな相続税評価額となります。

このように、4室中3室が今回の改正の影響を受ける結果となりました。
そして、さらに興味深いのがそれぞれのマンションの所在場所です。
それぞれどの辺にあるマンションなのかをざっくりバラしてみると…

  • A室…京都市中京区某所
  • B室…滋賀県草津市某所
  • C室…京都市左京区(北部地域)某所
  • D室…京都市中京区某所

と、同じ京都市中京区内でも要素によって補正の有無が変わるという、なんとも面白い結果となりました。
2番目に滋賀のマンションが入っているのも驚きですよね。
(とはいえ、草津市ならあり得なくもないでしょうか(駅前にタワマンもあるし))
また、そのB室や左京区内のC室なんてタワーマンションから程遠い、単なる6階建や5階建のマンションです。

「ごくごく普通のマンション」でも補正の対象になりうる

この結果を受けて今回の改正について感じたことを以下に列挙してみます。

  • 築年数が古いマンションは「補正なし」になりやすい
    D室は京都市中京区の中でも某駅に近い、市内中心部に所在するマンションですが、それでも補正の対象にならなかったのは築年数が46年と古いことが大きいです。
    実際にこの算式に当てはめてみると、建物が高層かどうかよりも築年数が古いかどうかの方が影響度が大きいと感じます。(古いとほぼ「補正なし」となる)
  • 「築年数それなり」だとほぼ補正対象に?
    京都市内では超高層にあたる14階建マンションのA室はもちろんのこと、特に何の特徴もないB室、C室ですら補正対象に。
    よほど築年数が古い物件でもない限り、凡庸な(という表現は違うかもしれませんが)マンションであればほぼ補正対象になる?

まとめると、今回の改正は

  • 場所がどこであれ
  • 「ごくごく普通のマンション」であれ

適用の対象になりえます。

びとう
つまり、「今後相続税や贈与税の計算でマンションの評価をするときはこの計算は絶対にやんなきゃいけない」ってことです(^^;
気づかない方が評価額が低くなるってのが税理士的には不条理なんですが…(ぶつぶつ

【まとめ】「タワマン節税」改正の4要素に1つでも該当するマンションは要注意

以上、この記事では具体例を交えながら
今回の「タワマン節税」改正は東京や大阪だけの話じゃないんですよ!京都市内や滋賀県内でも要注意ですよ!
という点について解説してみました。

今回の改正は決してタワーマンションのみを狙い撃ちしたものではなく、
「時価と比べて低めに留まっていた居住用マンションの相続税評価額のベースを全体的に引き上げよう
というものであることがお分かりいただけたかと思います。

ちなみに、評価乖離率や区分所有補正率の計算方法については、
コロナ禍前かつ昨今の建築資材価格の高騰などの影響がない2018年(平成30年)時点の売買実例価格をもととしています。
国税庁からは「市場価格の動向を見つつ、今後も随時計算方法などの見直しを行なっていく」とのアナウンスが出ているので、
このやり方が今後どのように変化していくのかも(我々税理士は特に)気にしていく必要がありそうです。

最後にもう一度まとめると、今回の改正により

  1. マンションの築年数が新しい(というか「古くない」)
  2. マンションの総階数が高い
  3. 部屋の所在階が高い
  4. 部屋の専有面積に占める敷地面積の割合が低い

これらのいずれかに(たった1つであっても)当てはまる居住用の区分所有マンションについては場所を問わず、以前より相続税評価額が引き上げられている可能性が高いです。
気になる方はこの改正の適用の有無について一度確認することをお勧めします。

びとう
とはいえ、「たとえ引き上げられても想定時価の6割まで」ということは「相続税評価額が時価よりも低い状態は依然変わらない」ということなので、
「マンションを利用した節税がこれで完全に封じられた!」とまでは個人的には思わないですね。
(そんな風潮には流されないように気をつけてください笑)

 
この改正自体のより詳しい内容(評価乖離率の算式など)は「相続税贈与税は2024年からどう変わった?改正点をわかりやすく解説」という記事で解説していますので、興味のある方はこちらもどうぞご覧ください。

2024年から相続税と贈与税はこう変わる〜令和5年度税制改正を解説〜

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