配偶者居住権の相続税評価の方法は?

配偶者居住権の相続税評価の方法を徹底解説!【平成31年度税制改正大綱】

今年(2018年)の民法(相続法)の改正で、

  • 亡くなった人(=被相続人)に配偶者がいる場合に
  • その配偶者が被相続人所有のマイホームに生前一緒に住んでいたときは
  • そのマイホームを誰が相続しようが、死亡後もそこに住み続けることができる権利

が認められることになりました。
これを「配偶者居住権」といいます。
(2020年4月1日から施行)

この配偶者居住権は民法上のれっきとした「財産」にあたるので、
これを実際配偶者が手に入れることになった場合には、その権利に対して相続税がかかります。

では、その権利にいったいどれだけの価値があるものとして相続税がかかるんでしょうか。

今日(2018年12月14日)公表された来年度の税制改正大綱にてその方法が示されましたので、
この記事では、具体的な数字も交えつつ、その方法をまとめてみます。

・配偶者居住権以外の平成31年度の税制改正大綱の内容は以下の記事で紹介しています。
2019年相続税・贈与税の改正項目総まとめ【平成31年度税制改正大綱】

・配偶者居住権を含めた民法(相続法)改正の全容は以下の記事で紹介しています。
民法相続法改正のポイント解説【2019年から順次施行】

この記事の運営元:京都市左京区の尾藤武英税理士事務所
税理士試験受験予備校「相続税法」の元講師が運営する税理士事務所です。
わかりやすいアドバイスで皆様をサポートいたします。

【前提】配偶者居住権とは?

その方法を知る前に、まずは「配偶者居住権ってなんぞや?」という話からです。

再度冒頭の文章を持ってきて紹介すると、配偶者居住権とは、

  • 亡くなった人(=被相続人)に配偶者がいる場合に
  • その配偶者が被相続人所有のマイホームに生前一緒に住んでいたときは
  • そのマイホームを誰が相続しようが、死亡後もそこに住み続けることができる権利

のことを言います。

また、配偶者居住権は上で列挙したこと以外にも、民法で↓以下のような特徴を持つものと規定されています。

    = 配偶者居住権の主な特徴 =

  • 基本、終身(配偶者が亡くなるまで)配偶者がマイホームに住む権利が保護される。
  • 民法上の財産の一種とされる(「財産性がある」)ため、配偶者は遺産分割を経てこの権利を取得できる。
    また、被相続人が遺言で配偶者にこの権利を取得させることもできる。
  • 配偶者は、マイホームに住むことはもちろん、そこを使って収益を上げる(事業をする、他人に貸すなど)ことも可能。
  • 配偶者居住権を取得した場合、その設定の登記が必要
  • 配偶者居住権は他人に譲渡することはできない
  • マイホームの所有者の承諾さえ得られれば、配偶者はマイホームの改築や増築、マイホームを第三者に使用収益させることも可能。

このように、通常の賃貸借で借主が得る権利とほぼ同等の権利が配偶者に保障されます。

つまり、配偶者居住権が設定された場合、マイホームとその敷地については↓以下のような権利関係になるというわけです。
(壮絶な手書きで失礼しますm(_ _)m)
配偶者居住権が設定された場合の権利関係図

マイホームである建物とその敷地である土地、それぞれごとに

  • 配偶者が取得する財産(赤い部分)の相続税計算上の価値(=「相続税評価額」と呼びます)
  • 土地・建物を承継した人が取得する財産(青い部分)の相続税評価額

を求める必要があります。
ではそれをどうやって求めていくんでしょう??

建物・土地それぞれごとに算式を組みます

その求め方は以下のようになります。
建物土地、それぞれごとに解説します!

建物の評価方法

まずはマイホームである建物の評価です。
大綱では「↓こうする!」と書いてあります。(大綱の文章をまとめてみました)

  • 建物の配偶者居住権(配偶者が取得する財産)の評価方法
    (1) (残存耐用年数-存続年数)/残存耐用年数
    (2) 建物の時価×(1)×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率
    (3) 建物の時価-(2)

  • 建物の所有権(建物を承継した人が取得する財産)の評価方法
    建物の時価-上で求めた配偶者居住権の価額

【用語の解説など】
・残存耐用年数=法定耐用年数に1.5をかけた年数-マイホームの築後経過年数
・存続年数=基本は配偶者の平均余命年数(または遺産分割協議などで定められた配偶者居住権の存続年数)
・(1)の残存耐用年数、残存耐用年数-存続年数のいずれかがゼロ以下となる場合、(1)はゼロとする
・建物の時価=配偶者居住権未設定時の建物の相続税評価額
・民法の法定利率=現在は3%(3年ごとに改定あり)

…って、こういうのは文字ではなく実際の数字に当てはめるに限ります(^^;

具体的には?

74歳女性の未亡人木造築年数30年相続税評価額が1,000万円のマイホームについて終身の配偶者居住権を取得するとした場合のそれぞれの評価額を計算してみましょう!

【建物の具体例その1】
・マイホームの法定耐用年数 22年(木造の居住用建物)
・マイホームの築年数 30年
・配偶者の年齢(74歳女性)に応じた平均余命年数 15年
・利率3%、年数15年の複利現価率 0.642
・建物の相続税評価額 1,000万円

  • 建物の配偶者居住権(配偶者が取得する財産)の計算
    (1) 22年×1.5=33年 33年-30年=13年(→残存耐用年数)
      13年-15年=0
    (2) 10,000,000円×0×0.642=0円
    (3) 10,000,000円-0円=10,000,000円

  • 建物の所有権(建物を承継した人が取得する財産)の計算
    10,000,000円-10,000,000円=0円

このように、上の例ではマイホームの相続税評価額の全額(100%)が配偶者居住権で、建物所有権の金額はゼロという結果になります。

もうひとつ、同じ条件でマイホームが鉄筋コンクリート造(法定耐用年数47年)だという場合も計算してみましょう。

【建物の具体例その2】
・マイホームの法定耐用年数 47年(鉄筋コンクリート造の居住用建物)
・マイホームの築年数 30年
・配偶者の年齢(74歳女性)に応じた平均余命年数 15年
・利率3%、年数15年の複利現価率 0.642
・建物の相続税評価額 1,000万円

  • 建物の配偶者居住権(配偶者が取得する財産)の計算
    (1) 47年×1.5=70.5年 70.5年-30年=40年(→残存耐用年数、1年未満の端数切り捨て)
      (40年-15年)/40年=0.625
    (2) 10,000,000円×0.625×0.642=4,012,500円
    (3) 10,000,000円-4,012,500円=5,987,500円

  • 建物の所有権(建物を承継した人が取得する財産)の計算
    10,000,000円-5,987,500円=4,012,500円

こちらは、建物の相続税評価額1,000万円のうち、配偶者居住権が5,987,500円建物所有権が4,012,500円という結果になりました。

ポイントはマイホームの残存耐用年数と配偶者の平均余命年数

配偶者居住権の割合が大きくなるか小さくなるかのポイントは、
マイホームの残存耐用年数配偶者の平均余命年数がそれぞれ何年あるかです。

  • 「あと●年使える」というマイホームの残存耐用年数が短ければ短いほど
    (具体例その1の場合はこれが13年、その2の場合は40年)
  • 「あと●年生きる」という平均余命年数が長ければ長いほど
    (74歳女性は15年だが、もし68歳女性ならこれが20年になる)

配偶者が取得する配偶者居住権の金額は大きくなり、建物の承継者が取得する建物の所有権の金額は小さくなります。

びとう
びとう

あと、複利現価率をかけるのは、「配偶者が死亡したあとに実現する、建物承継者自身の建物に対する権利」の今の価値を出すためです。
(利率3%はかなり高めの率ですが…。)

 
てか、上の算式は大綱の文章に従って書いているので、
同じ数字を何度も引いたりとゴチャついてますが、結局は↓こういうことですよね?

  • 建物の所有権(建物を承継した人が取得する財産)の評価方法
    (1) (残存耐用年数-存続年数)/残存耐用年数
    (2) 建物の時価×(1)×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率

  • 建物の配偶者居住権(配偶者が取得する財産)の評価方法
    建物の時価-上で求めた建物の所有権の評価額

なんかだいぶスッキリした気がします(^^

・マイホーム=建物の相続税評価額は基本「固定資産税評価額×1.0」です。
建物(家屋など)の相続税評価の方法とは?【自用と貸家】

・ただし、生前に加えていたリフォームが固定資産税評価額に反映されていない場合には↑これだけでは収まらない可能性も。
家屋をリフォームしていた場合の相続税評価の注意点

土地の評価方法

一方、配偶者居住権が設定された場合のマイホームの敷地(土地(宅地)や借地権など)の評価方法は建物よりも単純です。

建物と同じく、大綱で「こうする!」と書いてある文章をまとめてみると。

  • 土地等の敷地利用権(配偶者が取得する財産)の評価方法
    (1) 土地等の時価×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率
    (2) 土地等の時価-(1)

  • 土地等の所有権(土地を承継した人が取得する財産)の評価方法
    土地等の時価-上で求めた敷地利用権の価額

【用語の解説など】
・存続年数=基本は配偶者の平均余命年数(または遺産分割協議などで定められた配偶者居住権の存続年数)
・土地等の時価=配偶者居住権未設定時の土地等の相続税評価額
・民法の法定利率=現在は3%(3年ごとに改定あり)

具体的には?

こちらも、実際の数字に当てはめてみましょう。
条件は建物の具体例と同じです。

【土地の具体例】
・配偶者の年齢(74歳女性)に応じた平均余命年数 15年
・利率3%、年数15年の複利現価率 0.642
・土地の相続税評価額 5,000万円

  • 土地等の敷地利用権(配偶者が取得する財産)の計算
    (1) 50,000,000円×0.642=32,100,000円
    (2) 50,000,000円-32,100,000円=17,900,000円

  • 土地等の所有権(土地を承継した人が取得する財産)の計算
    50,000,000円-17,900,000円=32,100,000円

配偶者の平均余命年数が長ければ長いほど、配偶者が取得する敷地利用権の金額は大きくなり土地の承継者が取得する土地の所有権の金額は小さくなります。

まとめ その他気になる取り扱いは条文待ち!?

以上、この記事では、今日公表された平成31年度の税制改正大綱より、
配偶者居住権が設定された場合の建物と土地の相続税評価の方法を解説してきました。

実際こうして数字に当てはめて考えてみると、
なんだか私が予想していたよりも配偶者が取得する権利が高いなという印象です。
貸家とか貸家建付地みたいにせいぜい2〜3割程度に留まると思っていましたが、
まさか「建物の全額が配偶者居住権」というケースもあり得るとは…。

あと、今回の大綱だけではわからない・気になる点としては

  • 配偶者がその後死亡した場合のマイホームの所有者への課税の有無
    (居住権を持っていた配偶者がいなくなった=その分自分の財産が増えたカウントになるのかならないのか)
  • 配偶者が取得した敷地利用権は小規模宅地等の減額の特例の対象になるのか?
    (自民党の税制調査会の資料によると「なる」そうですが)

といったあたりがあります。
(私の大綱の読み込みが甘いだけでどこかに書いてあるのかもしれませんが…。)

「税制改正大綱」というのは、毎年4月に行う正式な条文や通達の改正に先んじて、その前年の12月に
「来年はここをこんな感じに変える予定なので覚悟しといてね!」
と政権与党が我々に伝えてくるものです。

なので、あくまでも「こう変える予定」しか書かれていないので、細かな部分はまだわからないんですよね(^^;

冒頭にもチョロっと書いたように、配偶者居住権について定める民法の改正は2020年4月1日に施行されます。
この記事で紹介している計算方法も、同日以降に発生する相続から適用されていく予定です。

2年後に施行と考えるとまだ先の話ではありますが、
この辺りを含めて、来年春までにどのような条文(通達ではなくこちらは相続税法の改正になるといわれています)が出来上がるのか。

ひとまずは、来年3月の改正法の公表を待ちたいと思います。

税制改正大綱の全文は以下の自民党のホームページに掲載されています。
平成31年度税制改正大綱 | 政策 | ニュース | 自由民主党

・配偶者居住権以外の平成31年度の税制改正大綱の内容は以下の記事で紹介しています。
2019年相続税・贈与税の改正項目総まとめ【平成31年度税制改正大綱】

・配偶者居住権を含めた民法(相続法)改正の全容を紹介しています。
大綱に挙がっていた「特別の寄与料」の内容についても。
民法相続法改正のポイント解説【2019年から順次施行】

・その他の関連記事(配偶者居住権の評価の前提となる、建物と土地の相続税評価の方法は?)
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