小規模宅地等の特例とは?土地の相続税の計算で欠かせない特例を徹底解説します

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京都市左京区で開業している税理士です。元税理士試験受験予備校「相続税法」講師。相続税に強く、クラウド会計に特化した税理士として活動中。
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亡くなった方が持っていた土地を相続人などが承継した場合に、相続税の計算で受けられる「小規模宅地等の減額の特例」。
これっていったいどんな規定なんでしょうか?

この記事では、その「小規模宅地等の減額の特例」という規定について、

  • そもそもどんな規定なのか
  • どれぐらい減額されるのか
  • どんな使い方をしていた土地に適用ができるのか

といった点をいろいろと解説してみます。

そもそもどんな規定?:「生活の基盤」となっていた土地の相続税の負担を軽くするための規定

まずは「これってそもそもどんな規定?」という点からです。

いきなり結論から書くと、「小規模宅地等の減額の特例」というのは

・亡くなった方の遺産の中に、亡くなった方やその方と生計を一(いつ)にしていた親族(=生計一親族)の「生活の基盤」となっていた土地がある場合に、
・その土地について、相続税の評価額を減額する特例制度

です。

相続税は、亡くなった方が持っていた財産でお金の価値に換えられるもの全てにかかります。
ということは、現金や預金はもちろん、土地や建物などの不動産にももちろん相続税はかかってきます。

ただ、一言で「不動産を持っていた」と言っても、その所有目的は様々ですよね。
「副収入として不動産収入を稼ぎたいから持っていた」
という場合もあれば、
「自分で事業をするためor住むために持っていた」
という場合もあります。

そんな場合に、もし「事業をするためor住むため」に持っていた土地に対して普通に相続税がかかってくるとしたら。
そして、そのせいで
「相続税が払えへんから家売ろか…。」
なんてことになってしまうとしたら。
それはとても大変なことです。

そうならないようにするために、
亡くなった方やその生計一親族が生前に自身の「生活の基盤」としていた土地については、一定の要件を満たせば相続税の負担を軽くしてあげますよー!
というのが「小規模宅地等の減額の特例」の規定です。

以下、ここまでで押さえておいて頂きたい細かい点を3つ触れておきます。

「生活の基盤」とは?

まずは、ここまでご丁寧に「」で括って書いてきた「生活の基盤」という言葉についてです。

「生活の基盤」って、具体的にどんな使い方を指すのでしょうか?
以下の3つのパターンがそれに当てはまります。

【その1:その土地を不動産賃貸に利用していた】
・亡くなった方が土地で不動産収入を得ていた(賃貸していたなど)
または
・亡くなった方やその生計一親族が土地の上にある建物を賃貸していた
のいずれか

【その2:その土地で事業を営んでいた】
・亡くなった方やその生計一親族が土地の上にある建物で事業をしていた

【その3:その土地に住んでいた】
・亡くなった方やその生計一親族が土地の上にある建物に住んでいた

これらのうちどれかに該当すれば、その土地は亡くなった方やその生計一親族が生前に自身の「生活の基盤」としていたと考えていきます。

この考えが後の「どれぐらい減額されるか」という話にも活きてきます。詳しくは後述。

「小規模宅地等」の「等」は何を指す?

次に。
この特例はどんな土地でも適用できるものではありません。
「小規模宅地等の減額」とあるぐらいなので、対象となるのは主に宅地です。

宅地とは、建物の敷地として使われている土地を指します。

ただ、「小規模宅地」とありますよね?

「この『等』って何か他を指してんの?」

はい、指してます。
それは、駐車場用地などの雑種地です。

上に建物が建っていない駐車場用地などの土地は宅地ではなく「雑種地」という種類に入ります。

関連記事

詳しくはこちらの記事をどうぞ
駐車場用地(=雑種地)の相続税評価の方法とは?

これら雑種地についても、それを利用して収入を得ていたのであれば、亡くなった方の「生活の基盤」となっていた土地としてこの特例の適用を受けることができるんだ、ということです。

↓このようないわゆる100円パークについても、他の要件さえ満たせば特例の適用を受けることができます。
駐車場用地

駐車場用地については、その土地の上に構築物(アスファルトや立体駐車場設備など)が敷かれていてはじめて適用が可能となります。
何も敷かれていない更地の駐車場はこの特例の対象にはならないので注意が必要です。

「生計一親族」とは?

あと、ここまでの文章の中で散々出てきた「亡くなった方の生計一親族」という言葉について。
これって具体的に誰を指してんの?というと、税法上、↓以下のいずれかに当てはまる人を指します。

・「亡くなった方と同じ家で生活をしていた人」
(代表例:同居していた家族)

または

・「同じ家に住んでいなくても、亡くなった方のお金で生活をしていた(または逆に養っていた)人」
(代表例:大学に通うために別居して仕送りを受けていた家族)

ざっくり言うと、亡くなった方の財布で生活をしていた親族のことです。

これらの人達は、亡くなった方とはもちろん完全に別人なのですが、
「いくら個々の人間とはいえ、亡くなった方と一緒に住んでいたり同じ財布で生活していた方を亡くなった方と完全に切り離して考えるのはさすがにかわいそうでは?」
ということで、この特例では「亡くなった方の生計一親族」も亡くなった方に含めて考えます。
(というわけで、以下、この本文では「生計一親族」という言葉は省略します。)

「生計一親族」についてより細かい決まりが知りたい方は国税庁の以下のページをご覧下さい。
No.1180 扶養控除|国税庁

どれぐらい減額されるかは土地の生前の用途で決まる

では、この特例が受けられるとして、いったいどれぐらい減額されるんでしょう?

それは、亡くなった方が、どのような形でその土地を「生活の基盤」としていたかによって決まります。
以下の表のように、「生活の基盤」の形ごとに、限度面積と減額割合が決まっています。

「生活の基盤」の形限度面積減額割合区分の名称
(1)その土地で事業を営んでいた400㎡80%特定事業用宅地等
または
特定同族会社事業用宅地等
(2)その土地に住んでいた330㎡80%特定居住用宅地等
(3)その土地を不動産賃貸に利用していた200㎡50%貸付事業用宅地等

 
「生活の基盤」の形、つまり、その土地の生前の用途だけで、自動的に、限度面積と減額割合が決まります。
土地の平米単価は一切問わないので、地価の高い土地の方が減額の効果は大きくなります。

亡くなった方の遺産の中に複数の土地がある場合(例:事業用の土地と居住用の土地がそれぞれある、不動産賃貸の土地が複数ある、など)には、上のいずれかの形で「生活の基盤」となっていた土地すべてについて、限度面積までの範囲で減額が可能です。

この場合、トータルどこまで減額できるか(限度面積がいくらになるのか)の考え方はちょっとややこしくなります。
(長くなるので、この記事では省略します。)

亡くなった方に加えて、「土地を承継した親族」の生活基盤にもなっている必要がある

というように、この特例は、
「亡くなった方の『生活の基盤』となっていた土地について、その『基盤』の形に応じて、相続税の評価額を減額するもの」
です。

ただ、「亡くなった方の『生活の基盤』となっていただけ」でこの特例が受けられるのか、というと、実はそうではありません。

「亡くなった方の『生活の基盤』になっていた」
というのはあくまでも第一条件に過ぎなくて、

・亡くなった方の「生活の基盤」になっていて

かつ

・それがその土地を承継した親族の「生活の基盤」にもなる

場合に、初めてこの規定を受けることが可能となります!

減額できるかは2つの時点での土地の利用状況で決まる!

具体的には、この特例は
「適用を受けようとする土地が以下の2つの時点でそれぞれに挙げている用途に使っているか」
で適用の有無が決まります。

その「2つの時点」と「それぞれの用途」とは。

その1:相続開始の直前(人が亡くなる直前)
その土地が亡くなった方の「生活の基盤」になっていたかを見る。
 ↓
その2:相続税の申告期限(≒死亡から10ヶ月後)
その土地を承継した親族がその土地を同じ用途で「生活の基盤」としているかを見る。

これら2つの時点でそれぞれ
「はい、『生活の基盤』になっています!」
と言える土地だけが減額の対象となります。

つまり、たとえ亡くなった方の生活の基盤となっていた土地であっても、
それを引き継いだ親族がその土地を同じ用途で(←ここポイント)生活の基盤にしていなければ、この特例の対象にはならず減額も受けることができないので注意が必要です!

この流れをチャートにまとめると↓こうなります。
(超絶フリーハンドの汚い字で申し訳ございません(汗))
小規模宅地等の特例 判定チャート図

先ほど紹介した「生活の基盤」ごとの限度面積、減額割合のパターンをもう一度紹介しますが、

「生活の基盤」の形限度面積減額割合区分の名称
(1)その土地で事業を営んでいた400㎡80%特定事業用宅地等
または
特定同族会社事業用宅地等
(2)その土地に住んでいた330㎡80%特定居住用宅地等
(3)その土地を不動産賃貸に利用していた200㎡50%貸付事業用宅地等

これらの区分ごとに、「その1」「その2」それぞれの時点において、細かい要件がいろいろと設けられています。
上のチャート上、それらを満たしてずーっと右に流れていく土地だけがこの特例の対象になる、ということです。

「細かい要件」には

  • 相続税の申告期限までに減額の対象となる土地の承継者が決まっていること(=遺産分割協議を終えていること)
  • 相続税の申告をすること(減額した結果相続税額が無くなる場合でも、減額前の状態で税額があるなら申告は必要)

などもその一部として含まれます。

ほか、書き出すと本当にキリがないので、詳しい内容はこの記事では省略します。
お近くの税理士または私に相談してください(^^;

ただ、基本的な考え方はこのチャートのとおりですので、これさえ押さえて頂ければ、それら細かな要件についてもイメージは湧きやすくなるのではないかと思います。

この記事のまとめ

ここまで、「小規模宅地等の減額の特例」について、

  • そもそもどんな規定なのか
  • どれぐらい減額されるのか
  • どんな使い方をしていた土地に適用ができるのか

というところの基本的な考え方をじっくりと見てきました。

もう一度まとめますと、「小規模宅地等の減額の特例」というのは、

・亡くなった方の遺産の中に、亡くなった方やその方の生計一親族の「生活の基盤」となっていた土地がある場合に、

・その土地について相続税の評価額を減額する特例制度で、

・亡くなった方はもちろん、その土地を承継した親族の「生活の基盤」にもなってはじめて適用がある規定

です。
ざっくり言うとたったこれだけですが、実際には細かな要件がいくつもあって、適用するには慎重な判断が必要です。

ま、
「元々ある土地の値段を最大8割も引き下げてあげよう!」
という思い切った特例なので、要件が細かくなるのは仕方ないんですが…。

この記事ではめっちゃ長くなっちゃいましたが細かい要件はなるべく省いて、基本的な考え方を中心に解説をしてみました。
参考となれば幸いです。

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