法定相続人には2種類ある?民法と相続税法の範囲の違いを解説します

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京都市左京区で開業している税理士です。元税理士試験受験予備校「相続税法」講師。相続税や所得税など「個人の方にかかる税金」に特化した税理士として活動中。個人で運営し、「税理士が直接お客様に全てのサービスを提供すること」を大切にしています。詳しいプロフィール「DEEN 税理士」「Nikon 税理士」で検索1位な個人ブログはこちら

亡くなった方(被相続人)の財産を誰が相続できるのかは「民法」という法律で決められていて、その民法の規定に従って選ばれた方のことを「法定相続人」と言います。

この民法の規定は相続税の計算でも基本的には尊重していますが、一部、相続税法で独自に定める相続人の範囲を計算の中で使っていく場面があります。
つまり、民法で定める相続人と相続税法で定める相続人は少し範囲が違うということです。

この記事では、
その「相続税法で独自に定める相続人の範囲」とはどんなものなのか
そして、
どこの計算でそれが適用されるのかを解説していきます。

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民法で定める「法定相続人」とは?

本題に入る前に、まずは民法で決められている「法定相続人」の範囲を確認します。

被相続人の財産を承継できる相続人には誰がなれるんでしょうか?
以下の国税庁のページに詳細が挙がっています。

死亡した人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。

第1順位
死亡した人の子供
その子供が既に死亡しているときは、その子供の直系卑属(子供や孫など)が相続人となります。子供も孫もいるときは、死亡した人により近い世代である子供の方を優先します。

第2順位
死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
父母も祖父母もいるときは、死亡した人により近い世代である父母の方を優先します。
第2順位の人は、第1順位の人がいないとき相続人になります。

第3順位
死亡した人の兄弟姉妹
その兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子供が相続人となります。
第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいないとき相続人になります。

なお、相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。
また、内縁関係の人は、相続人に含まれません。

引用元:No.4132 相続人の範囲と法定相続分|国税庁

つまり、配偶者がご健在の場合、相続人の組み合わせとしては

・配偶者と子(またはその直系卑属)
または
・配偶者と直系尊属
または
・配偶者と兄弟姉妹(またはその子)

いずれかのみに限られることになります。

また、配偶者が既に亡くなっている場合には

・子(またはその直系卑属)
または
・直系尊属
または
・兄弟姉妹(またはその子)

いずれかのみが相続人となります。

民法で定める「法定相続分」とは?

ちなみに、これらの相続人の取り分の目安(相続分)も民法で定められています。
(引き続き国税庁のページからの引用です)

配偶者と子供が相続人である場合
配偶者1/2 子供(2人以上のときは全員で)1/2

配偶者と直系尊属が相続人である場合
配偶者2/3 直系尊属(2人以上のときは全員で)1/3

配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合
配偶者3/4 兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)1/4

なお、子供、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは、原則として均等に分けます。
また、民法に定める法定相続分は、相続人の間で遺産分割の合意ができなかったときの遺産の取り分であり、必ずこの相続分で遺産の分割をしなければならないわけではありません。

引用元:No.4132 相続人の範囲と法定相続分|国税庁

これが、法定相続人と法定相続分の内容です。(コピペで少し楽をしてしまいました(^^;)
これを踏まえて、今日の本題にいきましょう。

相続税法独自の相続人とは?

このサイト内の「相続税の総額の計算方法とは。「相続税の申告書第2表」で確認します」という記事で、

相続税の計算では、恣意性の排除を目的として、民法上の相続人とは別に定めた「相続税法上の相続人」を計算に使っていく場面があります。

と書きました。
上述した「民法上の」法定相続人とは具体的に何が違うのでしょうか?

相続税の計算では、
「ここまでならいくらあっても相続税はかけませんよー。」
という「相続税の基礎控除」が定められています。
金額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。

この基礎控除について規定している相続税法第15条という条文の中に、「相続税法上の法定相続人」の定義が書かれています。
どんな内容なのか要約するとこんな感じです。

1 法定相続人の中に養子がいる場合、以下の人数までしか相続人には含めない。
  ・被相続人に実子がいる場合…養子のうちの1人まで
  ・被相続人に実子がいない場合…養子のうちの2人まで
2 相続の放棄をした人がいても、その放棄が無かったものとした場合の相続人とする。

具体的には?

上のグレーの文章の内容を3つの家族構成に当てはめてみます。

【例1】
亡くなった方の家族構成が
・配偶者
・子供4人(うち実子が1人で、残りの3人は養子)
の場合
(相続放棄した人はいない)

【民法上の法定相続人】
「配偶者と子供4人」の合わせて5人

【相続税法上の法定相続人】
「配偶者と実子1人+養子3人のうちのどなたか1人」の合わせて3人

【例2】
亡くなった方の家族構成が
・配偶者
・子供4人(全員が実子だが、うち1人が相続放棄をしている)
の場合

【民法上の法定相続人】
「配偶者と子供3人」の合わせて4人

【相続税法上の法定相続人】
「配偶者と子供4人」の合わせて5人

【例3】
亡くなった方の家族構成が
・配偶者
・子供1人(相続放棄をしている)
・両親や祖父母は既に死亡
・兄弟姉妹3人はまだ健在
の場合

【民法上の法定相続人】
「配偶者と兄弟姉妹3人」の合わせて4人

【相続税法上の法定相続人】
「配偶者と子供」の合わせて2人

・養子は最高2人までしか相続人と考えない
・放棄はないものと考える

これが、「相続税法上の法定相続人」の範囲です。

こうして選び出した独自の相続人を、↓これらの計算の中で用いていくわけです。
(相続税の申告書第2表のうち、基礎控除相続税の総額を計算する欄のスクリーンショットです。)

スクリーンショット
スクリーンショット

どこでこの規定を使うの?

ここで挙げた相続税法独自の相続人は、以下の計算をする際に用いていきます。

・遺産に係る基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)
・相続税の総額(課税遺産総額を法定相続人の相続分に応じて按分)
・生命保険金等の非課税金額(500万円×法定相続人の数)
・退職手当金等の非課税金額(500万円×法定相続人の数)

1つめと2つめは相続税の税額を計算する中で欠かせないもの。
3つめと4つめは有名な非課税規定なので、ご存知の方も多いのではと思います。

これらの方々も「実子」と考えます

ちなみに、上に書いた「実子」には、

・特別養子縁組の手続を経て養子となっている方
・配偶者の連れ子の状態を経て養子となっている方
・被相続人の子供が既に亡くなっていたため代わりに相続人となった孫やひ孫

といった方も含めて考えていきますので、これらの方がいらっしゃる場合、ここでの相続人には養子は1人までしか入れられませんので注意が必要です。

なんでこんな規定があるの?

わざわざややこしくしなくてもいいのに…と、↑こう思われる方も多いと思いますが、その理由は、恣意性に左右されない公平な課税を実現させるためです。

上の【例1】と【例3】を見てみても、もし民法上の法定相続人を基礎控除や生命保険金の非課税の計算でもそのまま使えるのであれば、それぞれ2人ずつ相続人の数が増えることになり、それだけ基礎控除や非課税の金額も増えてしまいます。

実際、この規定が無かった頃には、基礎控除の金額を大きくするために10人単位で養子を迎え入れたりする方もいらっしゃいました。

同じ家族構成、同じ遺産の額で、それぞれの意思(放棄をするしない、養子を取る取らない、財産を貰う貰わないなど)によって税額に大きな違いが出たらそれはまずいでしょ…ということから、現在の形が出来上がりました。

民法が財産をどう分けるかを規定している法律なのに対して、相続税法はそれを踏まえてどう税額を出すかを規定している法律だ、というスタンスの違いもあります。

どっちの法律でも同じ相続人の範囲を使えればそれが一番わかりやすくていいんですが、それによって税負担の「公平さ」が損なわれるのであれば、独自の規定を設けるのも仕方無いのかもしれません。


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