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家屋を生前にリフォームしていた場合の相続税評価の注意点

尾藤武英税理士事務所外観

以前、当サイト内の「建物(家屋・倉庫など)の相続税評価の方法【自用・貸家・賃貸割合】」という記事では、家屋をはじめとする建物の相続税評価の方法を紹介しました。

建物は
「建物の固定資産税評価額×1.0」
が相続税評価額となるため、基本的には、市区町村から毎年通知が来る「固定資産税評価額」がそのまま「相続税評価額」になると考えてOK!という話でした。

しかし、それはあくまで「基本的には」です。
この取り扱いには1つ例外があります、というのが今日の内容です。

びとう
【この記事は私が書きました】
税理士・尾藤 武英(びとう たけひで)
京都市左京区で開業している税理士です。
過去に税理士試験の予備校で相続税を教えていた経験から、相続税が専門分野。
事務所開業以来、相続税や贈与税の申告相続税対策など、相続税に関する業務を多数行っています。
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どこまでが「建物」に含まれる?

本題に入る前に、まずは財産評価における「建物」の範囲を確認しましょう。
いったいどんな財産が「建物」の範囲に入る(=固定資産税評価額だけで評価が終わる)んでしょうか?

「財産評価基本通達」では、このように言っています。
(この通達で言うところの「家屋」は一般的な「建物」を指しています。)

家屋の所有者が有する電気設備、ガス設備、衛生設備、給排水設備、温湿度調整設備、消化設備、避雷針設備、昇降設備、じんかい処理設備等でその家屋に取り付けられ、その家屋と構造上一体となっているものについては、その家屋の価額に含めて評価する。

引用元:財産評価基本通達92(1)

何が言いたいのかは後半部分だけを抜き出してみるとよくわかります。
「家屋と構造上一体となっているものについては、その家屋の価額に含めて評価する」ということは、
建物に取り付けられている設備などは固定資産税評価額の金額に含まれていると考えて良いということです。

これが、建物とそれに付属する様々な関連設備の評価の基本的な考え方です。

これを踏まえて今日の本題にいきましょう。

リフォームを加えていた場合は要注意

通常、一旦その建物に設定された固定資産税評価額は、余程外観が変わったりでもしない限り、評価額が上方修正されることはありません。
バリアフリー工事などのリフォームを加えて建物の価値が大幅に上昇していたとしても、それが固定資産税評価額に反映されることはまれです。

そうなると、当然のことながらそこに目を付ける人間が出てきます(^^;

ネットで検索すると、
「生前に自宅をリフォームしましょう!そうすれば、リフォームした部分は固定資産税評価額の中に含まれるので別個に評価する必要は無く、リフォームに充てたお金も財産から丸々減るので、立派な相続税対策になります!」
なんてことを書いている記事をたくさん見かけます。

確かにその考えは一理ありそうな気がします。
ただ、それが本当に相続税対策として通用するのかというと…?

その説は間違いです

実は、国税庁のHPにこんなものが挙がっています。

【照会要旨】
 所有する家屋について増改築を行いましたが、家屋の固定資産税評価額が改訂されていないため、その固定資産税評価額が増改築に係る家屋の状況を反映していません。このような家屋は、どのように評価するのでしょうか。

【回答要旨】
 増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産税評価額が付されていない場合の家屋の価額は、増改築等に係る部分以外の部分に対応する固定資産税評価額に、当該増改築等に係る部分の価額として、当該増改築等に係る家屋と状況の類似した付近の家屋の固定資産税評価額を基として、その付近の家屋との構造、経過年数、用途等の差を考慮して評定した価額(ただし、状況の類似した付近の家屋がない場合には、その増改築等に係る部分の再建築価額から課税時期までの間における償却費相当額を控除した価額の100分の70に相当する金額)を加算した価額(課税時期から申告期限までの間に、その家屋の課税時期の状況に応じた固定資産税評価額が付された場合には、その固定資産税評価額)に基づき財産評価基本通達89(家屋の評価)又は93(貸家の評価)の定めにより評価します。
(以下略)

引用元:増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産税評価額が付されていない家屋の評価|国税庁

メチャクチャ文章が長いのでポイントの部分だけを太字にしました(^^;

要約すると、
「リフォームをして家の価値が上がっているのに固定資産税評価額がそのままになっている場合は、価値が上がった分を財産として計上しないと申告漏れになるよ!」
ってことです。

そして、いくら計上すればいいかは
「リフォームに要した費用を今の価値に直した金額の7割」
だ、とも言っています。

実際、以前勤めていた会計事務所でも、まさにこの例で相続税を追徴されたのを見たことがあります。
(幸い(?)別の担当者のお客さんでしたが…。)
私自身も、該当するケースでは家屋の相続税評価額を増やして申告書を作っています。

つまり、リフォームしたらその費用の分だけ財産が減って相続税対策になる!という説は残念ながら間違いだと言わざるを得ません。
リフォームを加えた時期が亡くなる直前だった場合、効果があったとしてもせいぜいリフォーム費用の3割程度です。

リフォームから死亡までの期間が長くなればなるほど減額される金額は大きくなりますが、それでも「リフォーム代金の全額が財産から減る!」というわけではありません。

まとめ

というように、生前のリフォームは、一定額を財産から減らす効果はあるものの、
「その全額を相続財産から減らす」という魔法のような効果を産むものではありません。
そして、どれだけ減らせるかはいつ相続があるかに左右されます。

この取り扱いを知らない第三者から
「リフォームしたら相続税対策になりますよ!」
と言われても、本当にそうなるかは慎重な判断が必要です。

以上、この記事では生前に家屋を生前にリフォームしていた場合の相続税評価の注意点についてお伝えしました。


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