【受付再開】2024年分確定申告の受付は年内で終了いたします

家屋を生前にリフォームしていた場合の相続税評価の注意点

家屋を生前にリフォームしていた場合の相続税評価の注意点

以前、当サイト内の「建物(家屋・倉庫など)の相続税評価の方法【自用・貸家・賃貸割合】」という記事では、家屋をはじめとする建物の相続税評価の方法を紹介しました。

建物は
「建物の固定資産税評価額×1.0」
が相続税評価額となるため、基本的には、市区町村から毎年春に通知が来る「固定資産税評価額」がそのまま「相続税評価額」になると考えてOK!という話でした。

しかし、それはあくまで「基本的には」です。
この取り扱いには1つ例外があります。
それが、生前に家屋(自宅など)にバリアフリー工事などのリフォームを加えていた場合です。

この記事を書いた人


税理士 尾藤武英
税理士 尾藤 武英(びとう たけひで)
京都市左京区下鴨で開業している税理士です。
過去に税理士試験の予備校で相続税を教えていた経験から、相続税が専門分野。
事務所開業以来、相続税や贈与税の申告、相続税対策、相続税贈与税をテーマとした研修会の講師など、相続税に関する業務を多数行っています。
詳しいプロフィール(経歴や活動実績など)
相続税・贈与税に関するサービス
本記事の内容やテキスト・画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
当ブログの運営目的は一般の方への正しい情報の提供であり、同業及びその周辺業者への業務指南やコンテンツ提供ではありません。
無断転載や無断使用(それと思しき閲覧中の行動を含む)に対しては以下のポリシーに基づき迅速かつ厳正に対処します。
当ブログの運営ポリシー

【前提】附属設備は基本「建物」に含めて評価される

本題に入る前に、まずは財産評価における「建物」の範囲を確認しましょう。
いったいどんな財産が「建物」の範囲に入る(=固定資産税評価額だけで評価が終わる)んでしょうか?

「財産評価基本通達」では、このように言っています。
(この通達で言うところの「家屋」は一般的な「建物」を指しています。)

(1) 家屋と構造上一体となっている設備
家屋の所有者が有する電気設備(略)、ガス設備、衛生設備、給排水設備、温湿度調整設備、消化設備、避雷針設備、昇降設備、じんかい処理設備等でその家屋に取り付けられ、その家屋と構造上一体となっているものについては、その家屋の価額に含めて評価する。

引用元:第3章 家屋及び家屋の上に存する権利|国税庁

何が言いたいのかは後半部分だけを抜き出してみるとよくわかります。
「家屋と構造上一体となっているものについては、その家屋の価額に含めて評価する」ということは、
建物に取り付けられている設備などは固定資産税評価額の金額に含まれていると考えて良いということです。

これが、建物とそれに付属する様々な関連設備の評価の基本的な考え方です。

これを踏まえて今日の本題にいきましょう。

建物に含まれるなら生前に大規模リフォームをやっちゃえば…

通常、一旦その建物に設定された固定資産税評価額は、余程外観が変わったりでもしない限り、評価額が上方修正されることはありません。
バリアフリー工事などのリフォームを加えて建物の価値が大幅に上昇していたとしても、それが固定資産税評価額に反映されることはまれです。

そうなると、当然のことながらそこに目を付ける人間が出てきます(^^;

ネットで検索すると、

生前に自宅をリフォームしましょう!
そうすれば、リフォームした部分は固定資産税評価額の中に含まれるので別個に評価する必要はなく、リフォームに充てたお金も財産から丸々減るので、立派な相続税対策になります!

なんてことを書いている記事をたまに見かけたり、見かけなかったり。(ってどっちやねん)

確かにその考えは一理ありそうな気がします。
ただ、それが本当に相続税対策として通用するのかというと…?

リフォームによる価値上昇が固定資産税評価額に反映されてなければ危ない

実は、国税庁のHPにこんなものが挙がっています。

【照会要旨】
 所有する家屋について増改築を行いましたが、家屋の固定資産税評価額が改訂されていないため、その固定資産税評価額が増改築に係る家屋の状況を反映していません。このような家屋は、どのように評価するのでしょうか。

【回答要旨】
 増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産税評価額が付されていない場合の家屋の価額は、増改築等に係る部分以外の部分に対応する固定資産税評価額に、当該増改築等に係る部分の価額として、当該増改築等に係る家屋と状況の類似した付近の家屋の固定資産税評価額を基として、その付近の家屋との構造、経過年数、用途等の差を考慮して評定した価額(ただし、状況の類似した付近の家屋がない場合には、その増改築等に係る部分の再建築価額から課税時期までの間における償却費相当額を控除した価額の100分の70に相当する金額)を加算した価額(課税時期から申告期限までの間に、その家屋の課税時期の状況に応じた固定資産税評価額が付された場合には、その固定資産税評価額)に基づき財産評価基本通達89(家屋の評価)又は93(貸家の評価)の定めにより評価します。
(以下略)

引用元:増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産税評価額が付されていない家屋の評価|国税庁

メチャクチャ文章が長いのでポイントの部分だけを太字にしました(^^;

要約すると、
「リフォームをして家の価値が上がっているのに固定資産税評価額がそのままになっている場合は、価値が上がった分を財産として計上しないと申告漏れになるよ!」
ってことです。

そして、いくら計上すればいいかは
「リフォームに要した費用を今の価値に直した金額の7割」
だ、とも言っています。

現預金の想定残高が少ない場合などに着目されるケースが多い

具体的には、

  • リフォームの前後に預貯金口座から多額の出金を行なっている
    (その結果、相続税の申告書に記載された現預金の額が税務署の想定よりも少ない)
  • そのお金や借入金を利用して家屋をリフォームしている
  • リフォームによる価値上昇が固定資産税評価額に反映されていない

これら3点が揃った場合、税務署からこれをネタとした相続税の申告漏れ(追徴)を指摘されるリスクが高まります。

これは結構指摘されるケースが多く、
実際、私が勤務していた税理士事務所でも、別の担当者が作成した申告書でここを指摘されて相続税が追徴されたのを見たことがあります。
私自身も、該当するケースではお客さんにこの通達を適用しない場合のリスクを説明し、
ご納得いただいた方については、家屋の相続税評価額を増やして申告書を作っています。

びとう
税務署的には「このお金、リフォームしてなければまだあったよね?じゃあそれ足して。使った100%じゃなくて今の価値のさらに7掛けでいいから。」という理屈です。
上に挙げたように、生前に預貯金口座から多額の出金があったり、亡くなった方の生前の所得と(税務署が想定する)現預金の残高にズレがある場合にチェックの対象となることが多いです。

【まとめ】家屋を生前にリフォームしていた場合は相続税評価に要注意!

というように、生前のリフォームは、一定額を財産から減らす効果はあるものの、
「リフォーム代金の全額を相続財産から減らせる」という、魔法のような効果を産むものではありません。
そして、どれだけ減らせるかはいつ相続があるのかにも左右されます。

びとう
この取り扱いを知らない人から
「リフォームしたら相続税対策になりますよ!」
と言われても、本当にそうなるかは慎重な判断が必要なので気をつけてくださいね。
(わからなければ我々専門家に相談しましょう。)

以上、この記事では生前に家屋を生前にリフォームしていた場合の相続税評価の注意点についてお伝えしました。


【関連記事】


 相続税や贈与税でお困りの方へ
弊所では代表税理士がすべての業務を直接担当。
元予備校講師の経験を活かしたわかりやすいアドバイスでお困りごとを解決します。
オンラインでもお受けしていますので、お住まいの地域問わずお気軽にどうぞ!

この記事をシェアする