相続税はいくら財産を貰ったらかかってくる?【相続税の課税遺産総額の計算方法】

AUTHORこの記事を書いた人

京都市左京区で開業している税理士です。 元税理士試験受験校「相続税法」講師。 相続税や所得税、贈与税など「個人の方にかかる税金」に特化した税理士として活動しています。詳しいプロフィール個人ブログも更新中です

相続税は
「個人の方が亡くなった方(被相続人)から財産を相続したり遺言で取得したりした場合に、その取得した財産に対して課される税金」
です。

その辺りの話は以下の記事で詳しく解説しています。
相続税がかかる財産取得の理由は3つ。相続、遺贈、死因贈与

では、いくら財産を取得したら相続税はかかってくるんでしょうか?

「そりゃ、たくさん財産を貰ったらかかってくるんでしょ?」

えーっと、だいたい合ってます。
でも、法律で決められている実際の基準はもう少し細かいです(^^;

その「法律で決められている基準」ってのが具体的にどんな内容なのかを見ていきましょう!というのが今日の記事です。

【ご案内】相続税・贈与税に関する解説記事をまとめています

この記事以外にも、基本的な内容からマニアックな話まで、いろいろ書いています。
相続税、贈与税ってどんな税金?【解説記事のまとめ】ページはこちら

一言で言うと「遺産の総額>相続税の基礎控除」!

では、実際のところ、どれぐらい財産を貰ったら相続税がかかってくるんでしょうか?

ここで着目していくのは、貰った人単位ではなく、亡くなった人単位。
1人の人が亡くなったことによって遺した財産の総額です。

亡くなった人の遺産の総額が相続税の「遺産に係る基礎控除額」を超える場合に、その超えた金額に対して相続税はかかります。

遺産の総額が5,000万円なら?

「遺産に係る基礎控除額(以下「基礎控除」と略します)」というのは、相続税の計算上、
「ここまでだったらどれだけ財産があっても相続税はかけませんよー」
と許して(?)くれている範囲の金額を言います。

算式も決まっていて、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。

つまり、具体例で当てはめると

【その1:相続人が4人の場合】
3,000万円+600万円×4人=5,400万円

【その2:相続人が3人の場合】
3,000万円+600万円×3人=4,800万円

です。
ということは、亡くなった人の遺産の総額がもし5,000万円だとしたら、

【その1:相続人が4人の場合】
遺産の総額5,000万円≦基礎控除5,400万円 →相続税はかからない♪

【その2:相続人が3人の場合】
遺産の総額5,000万円>基礎控除4,800万円 →相続税がかかる…。

という結果になる、というわけです!
判断基準はたったこれだけです。

…って、ここで終わってしまってもいいんですが、せっかく1つの記事にしているのでもう少しマニアックなところまで話しておきたい(^^;
というわけで、続きではより詳しくこの計算の流れを見ていくことにしましょう!

もっと詳しく流れを追ってみよう!

上でざっくりと紹介した流れをより詳しくまとめてみるとこうなります。

1:相続・遺贈で取得した財産の相続税評価額の合計額を出す。

2:1の金額に「相続時精算課税贈与」で取得した財産の金額を足す。

3:2の金額から被相続人の債務や葬式費用の合計額を引く。

4:3の金額に「暦年贈与」で取得した財産の金額を足す。
(ここで出てきた金額を「相続税の課税価格の合計額」と言います)

5:4までで求めた金額から「遺産に係る基礎控除額」を引く。

6:引いても引ききれない金額(「課税遺産総額」)がある。

相続税がかかるorz

1から順に解説していきます!

1:相続・遺贈で取得した財産の相続税評価額の合計額を出す

まずは、「亡くなった人が遺した財産=相続人が相続した財産や相続人以外の人が遺言で貰った(これを「遺贈」と呼びます)財産」の「相続税評価額」を求めて、その全員分の合計額を出します。

「財産」とは?

ひとことで「財産」と言っても、実は触れるべき論点はいっぱいあります。

たとえば、
・どんなものが「財産」の範囲に含まれてくるのか
・亡くなった人(以下「被相続人」)の固有の財産以外にも相続税が課税される財産がある?
・被相続人や財産を取得した人の住所や国籍によって課税される財産の範囲が変わる?
・相続税にも非課税財産なんてものがある?

などです。

「相続税評価額」とは?

あと、「相続税評価額」というのは、相続税や贈与税を計算するために求める、その財産の「価値」を表す金額です。

相続税評価額の出し方は財産の種類ごとに決められていて、たとえば

・宅地の場合には「宅地の相続税評価の方法は2つ。「路線価方式」と「倍率方式」」という記事で紹介した方法を

・家屋や倉庫などの建物の場合には「建物の相続税評価の方法とは?」という記事で紹介した方法を

・駐車場用地(雑種地)の場合には「駐車場用地(雑種地)の相続税評価の方法とは?」という記事で紹介した方法を

それぞれ採っていきます。

こうして、まずは被相続人が遺した財産の相続税評価額ベースの合計額を出します。

2:1の金額に「相続時精算課税贈与」で取得した財産の金額を足す

次に、被相続人の子や孫の中に、生前に被相続人から「相続時精算課税贈与」で財産を貰っていた人がいる場合には、1で求めた金額にその財産の金額を足します。

「相続時精算課税贈与」というのは、親と子や孫の間で選択することができる贈与の1形態です。

これを生前に選択した場合には、贈与税はあくまでも「仮払い」の位置付けとなり、その贈与で取得した財産は、財産を贈与した人が将来亡くなった時点(相続があったとき)の相続税の計算に必ず反映させなければいけません。

「これの適用を受けていた場合、その財産の金額を忘れずに足して下さいね」というのがここで言っている内容です。

ちなみに、ここで足していく財産の金額は相続時ではなく、贈与時の相続税評価額をそのまま使います。

3:2の金額から被相続人の債務や葬式費用の合計額を引く

ここまでは加算でしたが、次にやっていくのは減算の作業です(^^

2の金額を出したら、次にその金額から、
・借入金や未払いの税金など、亡くなった時点で被相続人が負っていた債務
・被相続人の葬儀で要した費用

の合計額を引きます。

ここで引ける債務や葬儀費用にも細かい決まりがいくつかあって、

【債務の場合】
「被相続人が亡くなった時点で現に抱えていた確実なものに限る」
「相続税の非課税財産を取得するために生じたもの(例:墓地や仏壇のローン残高)はダメ」
などの決まりが

【葬儀費用の場合】
「本葬において発生した費用に限る(法要の費用は引けない)」
などの決まりがあります。

葬式費用に関する細かな話は「香典返し費用はOK?相続税の計算で引ける葬儀費用の範囲とは」という記事で紹介しています。

4:3の金額に「暦年贈与」で取得した財産の金額を足す

減算イベント(?)はこれだけで、次はまたまた加算です(^^;

今回の相続で財産を取得した人の中に、
・被相続人が亡くなった日から遡って3年の間に被相続人から暦年贈与(上で見た「相続時精算課税贈与」以外の贈与を指します。一般的な贈与のことです。)で財産を貰っていた人がいる場合
には、3で求めた金額にその財産の金額を足します。

注意点を1つ挙げるとすれば、
たとえ贈与で貰った財産の金額がその年分の贈与税の基礎控除(110万円)以下であっても、その財産の金額を忘れずに足さなければいけない、という点です。

ここは相続税の申告書を作る作業の中でも凄く抜け落ちやすいところです。
(「財産を貰った時期に注意!110万円以内の生前贈与に相続税がかかることも」という記事で詳しく紹介しています。)

また、精算課税贈与の場合同様、ここで足していく財産の金額も贈与時の相続税評価額をそのまま使います。

ここで出てきたのが「相続税の課税価格の合計額」です

ということで、ここまでを経てようやく相続税の課税の対象になるものの金額の合計が出ました!
これを「相続税の課税価格の合計額」と言います。

実は、ここまでの流れは「相続税の申告書第1表」にもそのまま形として表れています。
相続税の申告書第一表
①の欄がこの記事での「1」、②の欄が「2」、③の欄が「3」、⑤の欄が「4」の流れをそれぞれ指していますし、これらを経て一番下の⑥の欄に相続税の課税価格の合計額が入ります。

5:4までで求めた金額から「遺産に係る基礎控除額」を引く→引ききれなければ相続税がかかる!

相続税の課税価格の合計額を求めたら、その金額から引いていくのが冒頭で触れた「遺産に係る基礎控除額」です。

この計算の結果、引いても引ききれない金額(「課税遺産総額」と言います)が出てしまった場合に、その部分の金額に対しては相続税がかかってしまいます。

これが、いくら財産を貰ったら相続税がかかるのか、の判定の流れです!
(長かったですねー、ふぅ。)

具体例を持ってきました

文字だけだとなかなかイメージがしづらいので数字で見てみましょう。

・相続・遺贈で取得した財産の相続税評価額の合計額(1の金額):1億円
・相続時精算課税贈与で取得した財産の金額(2の金額):2,000万円
・被相続人の債務や葬式費用の合計額(3の金額):1,000万円
・暦年贈与で取得した財産の金額(4の金額):500万円
・被相続人の死亡時の家族構成:配偶者と子2人

という場合、

【4まで:相続税の課税価格の合計額】
1億円+2,000万円-1,000万円+500万円=1億1,500万円

【5:遺産に係る基礎控除額】
3,000万円+600万円×3人=4,800万円

【6:課税遺産総額】
1億1,500万円-4,800万円=6,700万円

ということで、この場合には6,700万円という金額に対して相続税がかかってしまう!という結果になりました。
これに当てはまってしまえば、原則相続開始があった日から10ヶ月以内に相続税の申告と納税が必要です。

まとめ

ちょっとマニアックなところを触れておこうと思ったら、とんでもなく長い記事になってしまいました(^^;
最後に、前回の記事も含めてまとめます!

どんな場合に相続税がかかるのか、それは

【まず】亡くなった人から「相続」「遺贈」「死因贈与」で財産を貰って(前回の記事の内容)
【そして】亡くなった人の遺産の総額が基礎控除を超えたとき(今回の記事の内容)

に、その遺産を貰った人たちにかかってくるんだ、ということです。

【ご案内】相続税・贈与税に関する解説記事をまとめています

この記事以外にも、基本的な内容からマニアックな話まで、いろいろ書いています。
相続税、贈与税ってどんな税金?【解説記事のまとめ】ページはこちら

京都下鴨の「尾藤武英税理士事務所」

当事務所では相続税や贈与税に関する業務を随時お受けしております。
・相続や贈与が発生した後の税金の申告
はもちろんのこと、
・生前における相続税の試算と相続税対策のご相談
についてもお受けすることが可能です。
【サービスメニュー】
相続税や贈与税の申告
相続税の試算・相続税対策の提案
単発のご相談もお受けしています

京都下鴨の「尾藤武英税理士事務所」

相続税や所得税、贈与税など「個人の方にかかる税金」を専門とする税理士事務所です。
相続税に関してお困りの方や、個人事業主をはじめとするフリーランスの皆様のサポートに力を入れています。
税理士プロフィール
ブログ
当事務所の特長

仕事のご依頼・お問い合わせはこちら