その贈与、贈与「したつもり」になっていませんか?

 

相続税の税務調査で必ずと言っていいほど指摘されるのがいわゆる「名義預金」です。

「子供や孫の名義にしていた預金口座を亡くなった方の相続財産に含めずに申告していた」
というようなケースですね。

実は私自身も、この業界に入るまでは
「名義が他人のものは自分の財産には含めなくてもいい」
と思っていました。

でも、相続税の計算では、たとえ名義は他人でも実質亡くなった方の財産だと認められるものについては相続財産に含めて申告をしなければいけません。

その理由はどこにあるんでしょうか。
そして、税務署から「これは名義預金だ!」と指摘されないためにはどうすればいいんでしょうか。

今日はその辺りを詳しくお話しします。

この記事の運営元:京都市左京区の尾藤武英税理士事務所
元税理士試験受験予備校「相続税法」講師が運営する税理士事務所です。
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税務署は何に目を付けている?

本題に入る前に、まずは「税務署は税務調査でどんな財産に目を付けているのか」を確認しましょう。

こちらは、過去の相続税の申告での財産の内訳を表したグラフです。
(国税庁HP「平成26年分の相続税の申告状況について」より引用)

上から2つ目の朱色が現預金を表しています。
現預金の構成比は年々増えてきてはいますが、それでも相続財産の中で一番多いのはやっぱり不動産、中でも土地です。
最新の年分で不動産の割合が46.9%(土地41.5%+家屋5.4%)、現預金の割合は26.6%に過ぎません。

それに対して、税務調査で申告漏れを指摘された財産の内訳を表したのがこちらのグラフ。
(国税庁HP「平成26事務年度における相続税の調査の状況について」より引用)

不動産の割合が一気に減って、現預金(35.7%)とその他の財産(34.7%)が全体の7割を占めているのがわかります。
このように、税務調査で申告漏れが指摘されやすいのは圧倒的に現預金+それに付随するその他の財産なんです。

ポイントは「贈与の成立の有無」

「名義預金」として税務署から指摘されるケースの代表的なものは以下の2つです。

・亡くなった方が生前に子や孫名義の預金口座を作ってその口座に振り込んでいた
・専業主婦の方が亡くなった夫の稼ぎで得たお金をへそくりとして自分名義の口座に預金していた

どちらも税務調査で税務署から
「それにも相続税がかかりますから申告し直して下さい」
と言われる可能性が高いです。

一般的な感覚では理解できない言いがかりにも思えますが、なぜそうなるんでしょうか?

「あげます」「貰います」の合意が無いものは贈与ではない

それは、法律上「贈与が成立していないから」の1点に尽きます。

どんな行為が贈与になるのかは民法第549条という法律でこう決められています。

贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

つまり、お金をあげる側、貰う側のそれぞれに

・お金をあげる側に「お金をあげる」という認識がある
・お金を貰う側にも「お金を貰う」という認識がある

場合にはじめて贈与は成立します。
上の2つの例にあてはめて考えてみるとどうでしょう?

・亡くなった方が生前に子や孫名義の預金口座を作ってその口座に振り込んでいた
→子や孫がその口座の存在を知らない、その口座のお金を自由に引き出せないのであればその口座は子や孫のものとは言えない

・専業主婦の方が亡くなった夫の稼ぎで得たお金をへそくりとして自分名義の口座に預金していた
→元は夫が稼いだお金であり、それを夫に代わって管理していたに過ぎない

「その財産が実質的にも貰った側の財産であると証明できない以上贈与は成立していない。
だったらそれも亡くなった人の財産のままでしょ?」

というのが税務署の理屈なんです。

つまり、税務署から「これは名義預金ですよ」と言われないためには、
その預金が完全に貰った側の財産になっているんですよ、ということを形で示す必要があります。

しなければいけないことは3つ!

そのために、あげた側、貰った側の両者がしなければいけないことは以下の3つです。

1:贈与の都度、贈与契約書を作っておく
2:年間の贈与額が110万円を超えるのであれば贈与税の申告をしておく
3:その財産は貰った人の意思でいつでも自由に使える状況にしておく
(たとえば、通帳やキャッシュカード、印鑑は貰った人が管理しているなど)

これら3つのすべてを満たしておく必要があります。
特に意識すべきは3つ目の「その財産は貰った人の意思でいつでも自由に使える状況にしておく」です!

よく、巷のブログなどで
「贈与契約書を作って保存しておけば大丈夫!」
とか
「贈与税の申告をしておけば大丈夫!」
なんてことを書いているのを見かけますが、必要なのはあくまでもこれら3つのすべてです。

いくら契約書を作って贈与税の申告をしていたとしても、財産を貰った人自身がその財産を自由に使える状況に無ければその申告には意味はありません。
3つのポイントすべてを満たしているかを意識することを忘れないようにして下さい。

未成年者の場合も同じです

これら3つをしなければいけないというのは、たとえ貰った人が未成年者であっても同じです。

親御さんとしては、
「未成年のうちからいっぱいお金を持ってしまったら教育上良くないから通帳もカードもこっちで預かっておこう」
と思われるケースが大半だと思いますが、その場合でも、未成年者自身の意思でその口座を自由に使える状況に無ければ「名義預金だ」と言われる可能性は高くなることを頭に入れておいて下さいね。

税務署は預金のお金の流れを職権で把握できます

ちなみに、相続があった場合には、本人はもちろん、家族名義の預金口座についても入出金の履歴は税務署に必ずチェックされます。

税務署は職権で金融機関に取引履歴の開示を請求できるのです。
チェックされる期間は、相続開始から遡っておおよそ10年分だといわれます。

何時何分にどこの預金機で入出金をしたかまで調べることができるので、

「この口座から引き出してすぐに同じ預金機で子どもの口座に入金してるな」

なんてことも向こうはしっかり把握してきます。

以前私が立ち会った税務調査でも、調査官は、亡くなった方とその家族の預金口座のすべての入出金履歴をまとめた表(A3サイズに細かく書かれていました)を調査資料として持参してきていました。
そういう資料を作成した上で、調査に入る入らないの目星を付けているようです。

マイナンバーなんて関係無しです

最近、
「マイナンバーが預金口座に紐付けされたら入出金の履歴が税務署に把握されるようになる!」
といって、口座からお金を引き出してタンス預金に切り替える方も多いと聞きますが、
上で紹介したように、マイナンバーが入る入らないに関わらず、入出金の履歴は今も税務署は簡単に把握することができます。

ガバッと口座から引き出した履歴もしっかりと残りますので、
「他の口座に入れた形跡がないから多分これはタンス預金にしてるんやろなぁ」
というのも税務署から見たらまるわかりです(^^;

そうすることによって、それが税務調査の呼び水になる可能性もありますし、個人的にはそんな心配はするだけ無駄やのになぁ、という気がします。
現金を手元に置いておくなんて防犯上も危ないですしねぇ…。

まとめ

というわけで、今日は「名義預金に相続税が課税されてしまう根拠とそうならないための対策」をいろいろとご紹介しました。

よくある、
「子や孫名義の預金口座を作ってそこにお金を振り込んでおく」
という形は、残念ながら生前贈与にすらあたらないので相続税対策にもなりません。

また、そうしてもし申告漏れを指摘されてしまったら、増えた分の相続税額はもちろん、それ以外にも罰金(過少申告加算税、重加算税、延滞税など)をいろいろと取られてしまいます。

それを避けるために意識しなければいけないポイントは今日紹介したように3つです。
中でも特に、
「貰った財産は貰った人の意思でいつでも自由に使える状況にしておくこと」
を意識することを忘れないように気を付けて下さい!

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AUTHORこの記事を書いた人

京都市左京区で開業している税理士です。元税理士試験受験予備校「相続税法」講師。相続税に強く、クラウド会計に特化した税理士として活動中。
「専門用語をなるべく省いたわかりやすい説明」と「税理士が直接お客様に全てのサービスを提供すること」を大切にしています。
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