財産を貰った時期に注意!110万円以内の生前贈与に相続税がかかることも

※「これで贈与税も相続税もかからんやろー!」と思いきや…。

 

先日相談に乗らせて頂いていたお客さんからこんな質問を受けました。
「贈与税の基礎控除(110万円)以内の贈与って、贈与税はもちろん、その後の相続税もかからないんですよね?」

残念ながら、そうとは言い切れません。

この記事の運営元:京都市左京区の尾藤武英税理士事務所
元税理士試験受験予備校「相続税法」講師が運営する税理士事務所です。
豊富な知識でわかりやすく皆様をサポートいたします!

生前に贈与をしていればその財産には絶対に相続税はかからない?

贈与税には
「財産を貰った人単位で、年間ここまでの金額ならいくら貰っても贈与税はかかりませんよ!」
という基礎控除が設けられています。
金額は110万円です。

たとえば、被相続人がお亡くなりになったのが平成28年8月17日で、生前に以下の贈与があったとします。

被相続人から長男に対して

・平成25年中:4月に50万円、10月に50万円
・平成26年中:4月に50万円、10月に50万円
・平成27年中:4月に50万円、10月に50万円
・平成28年中:4月に50万円

平成25年以降、長男に対してたまたま半年おきに50万円ずつ、合計で350万円の贈与を行っていました。

贈与税は1年間に貰った財産の金額の合計が基礎控除を超えなければかかりません。
それぞれの年中に貰った財産の金額の合計はいずれも100万円なので、長男はそれぞれの年分の贈与について生前に贈与税を払ってはいませんでした。

一方、これらの贈与のおかげで、結果的に被相続人の相続財産から350万円が削減できています。

生前にこまめに贈与を行っていたおかげで、贈与された350万円については、贈与税はもちろん、相続税もかからずに長男の手に渡ることになりました。
めでたしめでたし!

…とは残念ながらいかないんですよね(^^;

なぜかと言えば、相続税法には「生前贈与加算」という規定があるからです。

亡くなってから遡って3年間の贈与は相続財産に足されることがある

「生前贈与加算」というのはどんな規定なんでしょうか?
その内容を要約すると以下のようになります。

・今回発生した相続で財産を取得した人(遺言で取得した人や生命保険金などの「みなし相続財産」だけを取得した人も含む)が
・相続が開始した日から遡って3年以内(相続開始日が平成28年8月19日なら平成25年8月19日以降)に
・亡くなった被相続人から贈与で財産を貰ったことがある場合には、
その過去に贈与で取得した財産を相続財産に加算して相続税を計算します。

これが「生前贈与加算」という規定の内容です。

つまり、上の例に挙げた長男が今回発生した相続で財産を取得している場合相続開始日から遡って3年の間にその長男が被相続人から贈与で取得した財産については、相続財産に足して相続税の計算をしなければいけません。

さらに、この規定には「贈与税の基礎控除以内の財産は除いてもいいですよ」なんて文言はひとこともありません。
ということは、相続財産に足さなきゃいけない贈与財産は贈与税の基礎控除以下のものも当然含みます。

たとえ10万円でも、極端な話たった1円でも、相続で財産を取得した人が過去3年の間に被相続人から贈与で貰っているものであれば、そのお金は相続財産に加えます。(=贈与税はかからないけど相続税はかかる、という結果になります。)

具体的には?

上に書いたことをその上の具体例に当てはめて考えてみましょう。
どこまでの贈与を相続財産に足さなければいけないのかというと…。(相続開始日:平成28年8月19日)

・平成25年4月の50万円→相続開始日から遡って3年を超えての贈与なので足す必要は無い
(平成25年8月19日:相続開始日から遡って3年の日)
・平成25年10月の50万円→相続開始日から遡って3年以内の贈与なので足す必要がある
・平成26年4月の50万円→相続開始日から遡って3年以内の贈与なので足す必要がある
・平成26年10月の50万円→相続開始日から遡って3年以内の贈与なので足す必要がある
・平成27年4月の50万円→相続開始日から遡って3年以内の贈与なので足す必要がある
・平成27年10月の50万円→相続開始日から遡って3年以内の贈与なので足す必要がある
・平成28年4月の50万円→相続開始日から遡って3年以内の贈与なので足す必要がある

というように、生前に贈与で貰っていた350万円のうち300万円については相続財産に足して相続税を計算しなければいけません。
たとえ贈与税の基礎控除以下の金額であってもそこは問わずに加算!です。

私も相続業務をやる中で、これを納税者の方に納得して頂くのにはいつも苦労します。
「ええ?そうなんですか?なんで??」
「贈与税も相続税もかからないと思っていたのに」
とよく言われます(^^;

でも、もしこの規定が無かったとすれば、みんな亡くなる直前に「少しでも!」って勢いで贈与してしまいますよね。
それによって、少なくない金額が(国側から見ると)相続財産から除かれてしまって、その財産に対しては何の課税もできなくなってしまう。
それを防ぐための規定なんです。

あくまでも対象は「今回の相続で財産を取得した人」です

ただし、この規定の対象はあくまでも「今回発生した相続で財産を取得(相続した、遺言で財産を貰った、死亡保険金を貰った、など)した人」です。

上の例の長男が、もし今回の相続でひとつも財産を貰っていなければ、その場合は贈与財産を足す必要はありません。
この場合、生前に貰った350万円という財産には贈与税も相続税もかからなくて済むことになります。

この記事の一番上の出だしのところで「そうではない」と断定はせず、「そうとは言い切れない」という微妙な言い方をしているのも、その人が相続で財産を貰っているかいないかによって結果は変わるからなんです(^^;

同じ生前に贈与をするのであれば、将来相続で財産を取得しない方(たとえば子が健在な状態での孫など)に贈与をするのもひとつの手と言えます。

国も目を光らせています

この「生前贈与加算の漏れ」については、国税庁のホームページでも「相続税の申告書作成時の誤りやすい事例」の1つとして紹介されています。
事例14:被相続人が亡くなる前3年以内の贈与財産

こうして挙がっているということは、税務署もここは漏れが多いと網を張っているということです。

「誤りやすい事例」については以前「「相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集」は税理士も納税者も要チェック!」という記事にして紹介しています。

過去に贈与を受けていた場合には正直に税理士に伝えて下さいね

今日話している「生前贈与加算」ついては、たとえ税理士が関与して申告書を作ったとしても申告漏れが非常に生じやすいところです。
というのも、いくら税理士だけが頑張っても生前贈与を把握するのには限界があるからです。

預貯金の贈与であれば亡くなった方と相続人の方双方の通帳を見れば贈与があったことはわかりますが、それ以外の財産の場合は皆さんの積極的な情報の開示が無ければ税理士としても贈与の把握ができません。
(贈与税の申告がされていない基礎控除以下の贈与は特に!)

遡って3年の間に亡くなった方から財産を贈与でもらっていた場合には、その旨を税理士に正直に伝えるようにして下さいね。
また、自分では「これは対象じゃない」と思っていたとしても、その判断が正しいのか必ず一度は税理士のチェックを受けるようにして下さい。
もしそれで払う相続税額が増えてしまったとしても、後から税務署に「罰金と一緒に払え」と言われるよりはずっとマシですから。

足された贈与財産について過去に贈与税を払っていたらどうする?

ちなみに、上の数字は「各年それぞれ100万円ずつしか贈与を受けていないから贈与税も払っていない」という設定でしたが、もしそれぞれの年間の贈与額が200万円だったらどうなるでしょう?
その場合、長男は平成25年から27年まで、毎年90,000円ずつ贈与税を払っていたことになります。

1つの財産に対して生前に贈与税を払っているのに、今回の相続でさらに相続税までかかってくるなんてことがあるの!?

…と思われるかもですがご安心を(^o^)
この場合、生前に払っていた贈与税は相続税の計算の中で控除を受けることができます。
(この内容についてはまた記事を改めて詳しく紹介します。)

まとめ

以前「一番はやっぱり生前贈与。将来の相続税を減らすための4つの対策」という記事で、生前贈与は相続税対策として最も有効だという話をしました。

ただし、今日見てきたとおり、生前贈与で効力を発揮するのは相続開始日から遡って3年を超えるものにほぼ限られます。
ということは、生前贈与は長期的な視点で行うことが重要なんです。

生前贈与については当サイト内の記事でもそのメリットや注意点についていろいろと触れています。
将来の相続税を減らすために、正しい知識で早めの対策を取っていきましょう。

ご案内

相続税・贈与税についてまとめたページを作りました
この記事以外にも、基本的な内容からマニアックな話まで、全記事の一覧は↓このボタンをクリック!

相続でお困りの方へ:お気軽にご相談ください!
京都市左京区の尾藤武英税理士事務所では、相続税に関するご相談や申告のご依頼をお受けしています。
元税理士試験受験予備校「相続税法」講師である税理士が、豊富な知識でわかりやすく皆様をサポートします。

AUTHORこの記事を書いた人

京都市左京区で開業している税理士です。元税理士試験受験予備校「相続税法」講師。相続税に強く、クラウド会計に特化した税理士として活動中。
「専門用語をなるべく省いたわかりやすい説明」と「税理士が直接お客様に全てのサービスを提供すること」を大切にしています。
この記事は、投稿日現在の法律・状況などに基づいて書いています。
このサイトの閲覧・利用にあたっては、免責事項に合意されたものとして取り扱わせていただきますのでご了承ください。