今も残る「贈与税の基礎控除は60万円」の法律。110万円の根拠はどこにある?

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突然ですが、皆さんは贈与税の基礎控除がいくらかご存知でしょうか。

そら110万円やろ〜。

はい、正解です!

このブログの「贈与税ってどんな税金?贈与税の「キホンのキ」をご紹介!」という記事でも
「贈与税の基礎控除は『財産を貰った人単位』で年間110万円までです。」
と紹介していますし、
以下の国税庁のホームページでも

贈与税は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。

引用元:No.4402 贈与税がかかる場合|国税庁

と書いてあります。

でも、Googleで「贈与税 基礎控除」と入れたら、サジェスト機能で「贈与税 基礎控除 60万円」という候補が出てきます。
贈与税 基礎控除 60万円

60万円って何?110万円じゃないの??
今日はこの「60万円」の正体をご紹介します!

平成12年までは60万円でした

実はこの基礎控除、贈与税ができてから平成12年までの間はずっと60万円でした。
今の110万円という決まりは翌平成13年から続いているもので、贈与税の歴史の中では比較的新しい部類に入ります。

ちょっと前まで60万円だったので、それで検索する人が多い=サジェスト機能でも出てくるんでしょうね。

そんな現在は無くなっている「贈与税の基礎控除は60万円」の時代。
ただ、この「基礎控除は60万円」という決まり、法律の中では今もどっしりと生き続けています。

以下はその辺りの話を掘り下げてみます。

基礎控除を定めている法律は2つある

実は、贈与税の基礎控除がいくらなのかを定めている法律は現在は2つあるんです。
その2つの法律の名前は↓コレです。

・相続税法
・租税特別措置法

それぞれを、書かれている内容とともに紹介していきます!

相続税法

まず1つ目は「相続税法」です。

名前こそ「相続税」となっていますが、贈与税はあくまでも相続税を補完する税金、という位置付けなので、
贈与税の基本的な計算のやり方などは全てこの法律に定められています。

「基礎控除は60万円」

その相続税法の第21条の5というところに、贈与税の基礎控除についてこんな記述があります。

贈与税については、課税価格から60万円を控除する。

これが、上で書いた「今もどっしりと生き続けている法律」の正体です(^^;
この決まりは、基礎控除が110万円となっている今も削除されずに残されたままです。

「じゃあ、110万円ってのはいったい何なの??」
という話になりますが、これが決められているのは次に紹介する2つ目の法律です。
名前は「租税特別措置法」と言います。

租税特別措置法

「租税特別措置法(以下「措置法」)」というのは、上で紹介した相続税法をはじめとする国の税金(所得税、法人税、消費税などなど)の法律全般に関しての特例を定めている法律です。

・相続税法などの法律(以下「本法」と呼ばせて頂きます)では行き届かないような細かな規定
や、
・時限立法的な要素が強い規定
を定めている法律で、毎年行われる税制改正の大半もこの法律の中身をいろいろといじっているものが多いです。

本法に比べたら改正や新設、廃止も簡単にできるので、政治家さんたちにとっても実に使い勝手の良い法律(←強調(笑))のようです。

「基礎控除は110万円」

そんな措置法の第70条の2の4というところに、贈与税の基礎控除についてこんな記述があります。

平成13年1月1日以後に贈与により財産を取得した者に係る贈与税については、相続税法第21条の5の規定にかかわらず、課税価格から110万円を控除する。(以下略)

「相続税法第21条の5の規定」というのは、上で紹介した「贈与税の基礎控除は60万円ですよ」という内容ですね。
「平成13年以降はこの規定にかかわらず110万円を引く!」と、ここにハッキリと書かれています。

いくら本法で「基礎控除は60万円」と書かれていようが、
ここで「それは無視して今はとりあえず110万円で」と書かれている以上、この規定が存在する間は贈与税の基礎控除額は60万円ではなく110万円です。

これが生きているので、今は贈与税の計算で110万円を引くんですね。

もしこの規定が廃止になったら、本法の規定だけが残る形になるので、基礎控除の金額も60万円に下がることになります。
でもまぁ、今の「生前贈与を促進したい!」という政府の意図を考えるとそれはありえないでしょうね。
(むしろこの金額の引き上げの方が可能性は高いかもしれません。)

まとめ

というわけで、現在は110万円である贈与税の基礎控除の歴史について、2つの法律の関係性も交えつつ紹介してみました。

今見てきたように、措置法というのはあくまでも本法に対する特例を定めている法律なので、序列で言えば本法の方が完全に上です。
ただ、本法と措置法で同じ項目について異なった内容の記述がある場合には、序列が下である措置法に書かれている内容の方を優先して考えます。
(これを「特別法優先の原則」と呼んでいます。)

また、相続税と贈与税に限ってみると、我々にもとても馴染みの深い

・小規模宅地等の減額の規定
・住宅資金贈与、教育資金贈与、結婚・子育て資金贈与の非課税の規定
・相続時精算課税の適用を贈与者の孫が受ける場合
・各種納税猶予の規定

などは、全て本法ではなく措置法にその内容が定められています。

相続、贈与を生業にする税理士にとって、措置法の存在は切っても切り離せないものなんです。
追いかける方も大変なんで、そのときの流れでコロコロと規定の中身を変えるのはあまりしないで欲しいなぁ…。
(って、だから誰に言ってるんでしょうね?(^^;)

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AUTHORこの記事を書いた人

京都市左京区で開業している税理士です。元税理士試験受験予備校「相続税法」講師。相続税に強く、クラウド会計に特化した税理士として活動中。
「専門用語をなるべく省いたわかりやすい説明」と「税理士が直接お客様に全てのサービスを提供すること」を大切にしています。
この記事は、投稿日現在の法律・状況などに基づいて書いています。
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