突然ですが、サラリーマンの貴方に質問です。
貴方は自分の給料やボーナスからどんなお金が天引きされているかはご存じですか?
…なんて偉そうな言い方をしている私も、サラリーマン時代には給与や賞与の支給明細書を見ては
「なんでこんなに天引きされてんねん?」
と不思議に思っていたクチです。
(そして、それ以上気にすることもありませんでした(^^;)
天引きされているのはどれも紛れもない「税金」ですから、どんなものが引かれているのかは国民としても関心を持っておきたいところですよね。
もうすぐボーナスが支給されます(※この記事は11/15に書いています)が、そのときに
「なんでこんなに手取りが少ないねん!いったい何が引かれてんねん!」
なんて思うことのないように、この記事で給料やボーナスからどんなお金が天引きされているのかを一緒に確認していきましょう。
この記事は「こんなんが引かれてるんでっせー。」というものの種類を紹介しよう、というものです。
この記事を書いた人
税理士試験大手予備校の元講師で、事務所開業後は所得税などの研修会講師を数多く担当。
Macユーザーで、クラウド会計を活用したスモールビジネス支援にも力を入れています。
詳しいプロフィール(経歴や活動実績など)
提供サービス:個人の確定申告 / クラウド会計税務顧問
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このページの目次
源泉所得税
まずは源泉所得税です。
天引きされる金額の中では一番有名なものですよね。
源泉所得税というのは、いわば仮払いの税額です。
「ホントは1年の最後に確定した税額だけをガバッと払ってくれればええんやけど、そんなんされてもどうせ払えへんでしょ?」
という国の配慮(狙い?)から存在するもので、
「この給料やボーナスの額ならコレだけ払って!」
と、それぞれの従業員の支給額ごとに天引きされる税額も細かく決められています。
天引きされる金額の決め方は?
天引きされる金額を勤務先がどのようにして出しているのかについても軽く紹介しておきます。
月払いの給料の場合
国税庁が公表している
「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」
という表に当てはめて天引きする金額を拾っています。
↓こんなのの中から当てはまる数字を拾います。
見慣れない方にとっては目がくらむような字の細かさです(^^;
ボーナスの場合
ボーナスの場合も同じような、でも中身はちょっと違う表に当てはめます。
「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」
というものに当てはめて、そこに挙がっている率をボーナスの支給額にかけることで天引きする金額を求めます。
こちらも↓こんな表から当てはまる率を拾います。
あくまでも仮払い。最終的には精算されます
ちなみに、こうして天引きされた所得税額はあくまでも仮払いに過ぎないので、1年の終わりに勤務先が行う「年末調整」という手続で精算されます。
(年末調整で計算した正式な所得税額よりも源泉税額の方が多ければ、差額は還付されます。)
住民税
2つ目は住民税です。
住民税は給料からのみ天引きされます。ボーナスからの天引きはありません。
(今日挙げているもののうちボーナスからの天引きがないのはこれだけです。)
源泉所得税とは納付先(所得税=国に納める、住民税=市区町村や都道府県に納める)が違いますが、実はそれ以外にも、源泉所得税とは↓こんな違いがあります。
- 源泉所得税はあくまでも仮払い。←→住民税は前年以前分のもうけに対する確定した税額を払う。
-
住民税は勤務先では天引きの金額を計算しない。自治体から通知された金額を引くだけ。
住民税は、前年のもうけに対する税額をその年1月1日現在住んでいる自治体に、その年の6月以降1年間かけて払う税金です。
なので、サラリーマンの方が給料から天引きされる住民税の額は↓毎年こんな流れで決まっています。
- 【1月末まで】
勤務先が前年に各従業員に対して支払った給料やボーナスの年額を、各従業員が1月1日現在住んでいる市区町村(例:京都市)に届け出る。
(これを「給与支払の報告」と呼んでいます。) - 【2月〜5月頃】
各自治体がそれぞれの従業員の今年の住民税額を計算する - 【5月頃】
各自治体から勤務先に対して、
「この人の今年の住民税の額はこんだけなんで、これを6月以降毎月こんだけずつ天引きしてね!」
という内容が書かれた通知書が届く。 -
【6月〜翌年5月まで】
通知書に書かれている住民税の額を給料から天引きする。
従業員の知らないところで勤務先と自治体の間で密接な(?)やりとりがされているんですね。
こうして天引きの方法で住民税を納める方法を「特別徴収」と呼んでいます。
(←→給料から天引きされずに自分で納める方法を「普通徴収」と呼びます。我々自営業者などはこの方法で納めています。)
それぞれの月に支給される給料から天引きされている住民税がいつの分なのかをまとめてみると↓こうなります。
- 1月〜5月の給料から天引きされる住民税=前々年(H28の場合H26)の給与収入に対する住民税
-
6月〜12月の給料から天引きされる住民税=前年(H28の場合H27)の給与収入に対する住民税
6月をひとつの境にして住民税の天引きされる金額が変わるということです。
毎年5月や6月の給与明細には、住んでいる自治体が発行した「住民税決定通知書」が同封されているハズです。
貴方のお手元にもあるかと思いますので、是非一度そちらの内容も確認してみて下さい。
社会保険料
所得税や住民税の他に、いわゆる「社会保険料」も控除されます。
支払先別に大きく分けると以下の2種類です。
健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料
「国民皆保険」制度の日本なので、我々は誰もが健康保険に加入して保険料を負担する必要があります。
また、40歳以上65歳未満の方は健康保険料に加えて介護保険料も納める必要があります。(私も去年から納めています…。)
これらは源泉所得税と同様、月々の給料とボーナスの両方から天引きされます。
天引きされたこれらの保険料は勤務先が毎月末までに年金事務所へ納付しています。
天引きされる金額の決め方は?
月払いの給料の場合
以下のような流れで、勤務先は天引きされる保険料の金額を計算します。
(ずっと同じ会社で働き続けている方の場合)
- 【その年の7月10日まで】
4月から6月までの3ヶ月間の(通勤手当や残業手当などの諸手当を全て含めた)給与の支給実績を元に、それぞれの従業員の保険料の基礎となる「標準報酬月額」が決まります。 -
【その年の9月〜翌年8月の毎月の給料から】
決まった「標準報酬月額」を「健康保険・厚生年金保険の保険料額表」という表にあてはめて天引きする社会保険料の金額を拾い、その金額を毎月の給料から天引きする。
4月から6月までの3ヶ月間の給料の金額を基にして、その年の9月以降1年間の保険料が決まります。
しかも、諸手当を含めた額で計算しますので、
「この3ヶ月間だけたまたま残業代が多くて…」
なんて方は、給料に対して保険料が割高になって損をすることもありえます。
ちょっと頭に入れておいた方がいいかもですね。
上の文章の中に挙げている
「健康保険・厚生年金保険の保険料額表」
は都道府県ごとに公表されていて、数ヶ月ごとに細かく改定されることが多いです。
今日(2016年11月15日)現在の京都府の最新の保険料額表は以下のリンク先にあります。
平成28年10月分(11月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
…色付きな分、所得税の源泉税額表よりは見やすいですかね?んなこともないか(^^;
ちなみに、社会保険料は勤務先と従業員が半分ずつ負担することになっています。(これを「労使折半」と呼んでいます。)
給料から天引きされるのは、上の表だと「折半額」の欄に書かれている金額です。
ボーナスの場合
ボーナスの支給額(1,000円未満切り捨て、上限あり)に上の表の中に書いてある率(10.00%とか11.58%とか18.182%とか)をかけて、さらにその金額を半分にして天引きの金額を求めています。
月々の給料同様、ボーナスの場合も保険料の半分は勤務先が負担してくれています。
雇用保険料
会社を退職した場合にもらえる失業保険や再就職手当などのお金の元手になる保険料です。
天引きされる金額の決め方は?
こちらの天引き額の出し方は上の3つの保険料に比べるとまだ単純です。
月々の給料、ボーナスともに、総支給額に厚生労働省が公表している「雇用保険料率」をかけて求めます。
こちらが今年度(平成28年度)の雇用保険料率です。
業種によって率は変わりますが、ほとんどの会社は「一般の事業」でしょうか。
給料やボーナスから天引きされる金額は「①労働者負担」という欄に挙がっている率を支給額にかけて求めます。
(「②雇用主負担」の欄に挙がっているのが会社が負担する保険料の率です。)
まとめ 大きく分けると3つの種類があります!
いざ書き出したらかなり長くなってしまいました(汗
最後に、給料やボーナスから天引きされているお金の種類をもう一度まとめます。
- 源泉所得税
- 住民税
-
社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料)
大きく分けて3種類。
社会保険料は細かく分けると全部で4種類あるので、それらを1つと数えると合計6種類あります。
ちなみに社会保険料にはもう1つ「労災保険料」というものもあるんですが、こちらは勤務先だけが負担するお金なので、給料やボーナスからの天引きはありません。
「いろんなもんが引かれてんねんなー(引かなあかんねんなー)」
ということがお分かりいただけると幸いです!
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