元ブルーウェーブファンで現在もイチローを応援している、野球好き税理士のびとうです。
突然ですが、
「これは建物なの?それとも構築物?」
と迷うときはないでしょうか。
建物と構築物はそれぞれざっくり
- 建物=屋根や周壁などを有し、土地に定着した建造物
-
構築物=土地に定着した建造物のうち建物以外のもの
という違いがあります。
こうした中、見た目は建物に見えないのに建物として登記されている建造物の代表例が、
埼玉県所沢市にある野球場・ベルーナドーム(以下「西武ドーム」)です。
私も、同業者などへの研修で「建物の定義」を解説するときは必ずネタ具体例として挙げさせていただいています(^^;
この記事では、
「これは建物?それとも構築物?」
と迷ったときの判別方法(法律上の違いなど)を、西武ドームのあれこれを例に挙げながら解説してみます。
この記事を書いた人
過去に税理士試験の大手予備校で相続税を教えていた経験から、相続税が専門分野。
事務所開業以来、相続税や贈与税の申告、相続税対策、相続税贈与税をテーマとした研修会の講師など、相続税に関する業務を多数行っています。
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不動産登記がされていれば建物でOK
建物かどうかの判別方法としてまず挙げられるのが、不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)を確認する方法です。
不動産登記法という法律で「建物は登記の対象」とされているので、目的のモノが登記簿謄本に載っていれば構築物ではなく建物であることがわかります。
西武ドームも屋根の部分を含めた野球場全体が建物として登記されています。
以下、西武ドームの登記簿謄本(インターネットで誰でも取れます)から現在の実際の登記情報を引用してみると。
- 種類
野球場- 構造
鉄骨・鉄筋コンクリート造ステンレス鋼板ぶき・張力膜屋根・陸屋根地下4階付3階建- 床面積
1階 39775.17㎡
2階 572.82㎡
3階 918.06㎡
地下1階 1267.85㎡
地下2階 630.34㎡
地下3階 211.55㎡
地下4階 1961.50㎡
建物の種類で「野球場」というのは我々の仕事ではほとんど見ないワードですね(^^
1階の床面積がやたらと広いのですが、屋根の部分はすべてここに含まれています。
実はこちら、「西武ライオンズ球場」として開設した昭和54年当時の登記情報は↓こうでした。
- 種類
野球場- 構造
鉄筋コンクリート造陸屋根地下1階付3階建- 床面積
1階 901.81㎡
2階 484.49㎡
3階 849.60㎡
地下1階 497.84㎡
そこから、以下のような変遷を遂げています。
ドーム化に伴い、1階の床面積が901.81㎡から39,761.02㎡へ。
あわせて構造が「鉄骨・鉄筋コンクリート造ステンレス鋼板ぶき・張力膜屋根・陸屋根地下1階付3階建」へ。
観客席を大幅に改修し地下を4階まで増やすなど、計2,621㎡を増築。
ホーム側が3塁側に変更されたのもこの年から。
参考URL西武ドーム改修 | WORKS | KAJIMA DESIGN | 鹿島建設株式会社
「西武ライオンズ40周年記念事業」として約3年にわたり行われた大改修が完了。
改修部分の延べ床面積は23,242㎡にも及び、現在の形に。
参考URLベルーナドーム(西武ドーム)エリア | WORKS | KAJIMA DESIGN | 鹿島建設株式会社
平成11年、既存の球場の上に屋根が架けられてドーム化された際に1階の床面積が38,859㎡増加。
あわせて、構造に「鉄骨」「ステンレス鋼板ぶき・張力膜屋根」が追加されました。
というのが想像できて面白いですよね。
未登記の場合:固定資産税の課税対象か、で判別可能
ただ、西武ドームはこのように登記されているものの、
現状、日本にあるすべての建物が登記されているわけではありません。
(登記は義務化されている(リンク先は根拠法令です)ものの、それが守られていないケースが多い)
その場合は、そのモノが「固定資産税で建物として課税されているか」を見ます。
たとえ未登記でも、固定資産税の課税対象になっている建物は(毎年春に所在自治体から送られてくる)固定資産税の課税明細書(納税通知書)に記載されているので、
ここから建物であると判断することが可能です。
【でも】周壁が無いのに建物登記、な西武ドームに違和感が…
このように、野球場のスタンドは建物の一種とされていて、
西武ドームも屋根を含めた全体がしっかりと建物として登記されています。
が。
なんか西武ドームの屋根の部分って、建物という感じがしないんですよね。
ドーム球場化後の膜屋根はスタンドの最上段から伸ばした柱で支えられているが、屋根とスタンドの隙間に壁を造らない設計で架設されたため、他のドーム球場と違って隙間から自然の空気を取り込めるようになっている。
とあるように、西武ドームのドームとしての一番の特徴は後付けされた屋根と元からあったスタンドとの間に壁が一切ないこと。
しかもそのスペースが結構でかい。
これが、冒頭でちらっと紹介した、不動産登記規則という法律に規定されている建物の定義↓と合わないのでは?と感じるのです。
(建物)
第百十一条
建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない。
周壁、無いじゃん西武ドーム。
どう見ても壁がないですよね。
とはいえ、土地に定着した建造物ではある。
果たして建物なのか構築物なのか。
実務上めちゃくちゃ迷うケースです。(たぶん)
実際、西武さんも屋根を付けたときは一旦構築物として申告したけど、
それが所沢市に認められず、結局建物として登記することになった、という噂話もあったりなかったり…??
しかも、増築日は「平成11年2月日不詳」となっています。
なにやら大人の事情を感じさせる記載…笑
とはいえ。前例のない(そしてたぶん今後もない笑)工法で建てられた建造物だけに、
既存の法律の枠組みで判断することが難しければ…こういうこともまぁよくありますよね。
建物と構築物は財産評価の方法が違います【詳しくは別記事にて】
なお、建物と構築物は完全に別個の財産なので、
相続税や贈与税の財産評価でもこれら2つは方法が全く違います。
- 建物の相続税評価の方法
固定資産税評価額×1.0(詳しい解説はこちら) - 構築物の相続税評価の方法
(構築物の再建築価額-償却費の額または減価の額)×70%
また、土地の貸し借りがあった場合においても、
と、それぞれ評価方法が変わりますので、
同じ「土地に定着した建造物」でもそれが建物なのか構築物なのかは相続税や贈与税の計算上は大違いです。
建物と構築物の判別方法のまとめ
以上、この記事では西武ドーム(ベルーナドーム)という日本で最も特徴的な建造物を例に挙げながら建物と構築物の違いについてまとめて(?)みました。
- 不動産登記法第2条では不動産の定義として「土地又は建物をいう。」(=構築物は不動産ではない)と定められている一方
-
民法第86条では「土地及びその定着物は、不動産とする。」(=構築物も不動産である)とされていて
結局どっちやねんという感じですが(笑)、
構築物が不動産であろうがなかろうが、税金、特に相続税や贈与税の財産評価の世界においてはこの2つを正確に区分することが大切となります。
通常は不動産の登記簿謄本を見れば確認できるのですが、中にはこーんな迷う例もあるよ、というお話でした!
この記事、野球ファンな方には響かないですかねぇ…。(むしろそっちに読まれて欲しい)
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