中途退職者への給与の源泉徴収票発行はここに注意!

中途退職者に給与の源泉徴収票を発行する場合の4つの注意点

現在は税理士として独立して活動している私ですが、過去には会社組織で働いていた経験ももちろんあります。
しかもいくつか渡り歩いたので(詳しくはプロフィールをどうぞ)、退職の際にはその都度会社から「給与所得の源泉徴収票」をいただいてきました。

そして、いただいたその源泉徴収票に関して間違いやミスを発見することも多かったです。

そこでこの記事では、私自身が過去の中途退職の際に源泉徴収票の受給者として遭遇した4つのミスをいろいろと紹介してみることにします。

給与計算業務をされている方の参考になれば幸いです。

この記事を書いた人


税理士 尾藤武英
税理士 尾藤 武英(びとう たけひで)
京都市左京区下鴨で開業している税理士です。
税理士試験大手予備校の元講師で、事務所開業後は所得税などの研修会講師を数多く担当。
Macユーザーで、クラウド会計を活用したスモールビジネス支援にも力を入れています。
詳しいプロフィール(経歴や活動実績など)
提供サービス:個人の確定申告 / クラウド会計税務顧問

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なかなかもらえない【退職後1ヶ月以内に発行を】

「え、そんな話?」って思います??
ただ、これが結構ある話なんですよ…。(ですよね?)

私自身、退職後何度催促しても源泉徴収票をなかなか発行してくれない会社があって、とても困らされたことがありました。

中途退職者に対する源泉徴収票の発行には、↓以下のような法律上の期限があります。

第二百二十六条 居住者に対し国内において第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(第百八十四条(源泉徴収を要しない給与等の支払者)の規定によりその所得税を徴収して納付することを要しないものとされる給与等を除く。以下この章において「給与等」という。)の支払をする者は、財務省令で定めるところにより、その年において支払の確定した給与等について、その給与等の支払を受ける者の各人別に源泉徴収票二通を作成し、その年の翌年一月三十一日まで(年の中途において退職した居住者については、その退職の日以後一月以内)に、一通を税務署長に提出し、他の一通を給与等の支払を受ける者に交付しなければならない。
(以後略)

引用元:所得税法第226条

このように、所得税法の第226条第1項というところで
「退職日以後1ヶ月以内に発行せよ」
とバッチリと書かれていますので、それを過ぎてもなかなか発行しない会社は所得税法違反です。
(これには「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」という罰則もあります。)

次の項目で書いている、再就職後の勤務先での年末調整でももちろん必要ですが、
人によっては、退職後の失業保険や健康保険料の減免の申請などで必要な場合も出てきます。
中途退職者に対する源泉徴収票の発行は速やかに行いましょう!
(間違っても嫌がらせで発行しない、なんてことはしないように…。↑ペナルティもありますからね。)

原本を送ってくれない【データ交付は原則不可】

これも実際ありました。
コピーしたデータだけがメールで送られてきて結局原本は届かず。
しかも、プリントしたのを低い解像度でスキャンしたものなので文字が黒潰れしていたという…。

現在の法律では、源泉徴収票のデータでの交付自体は認められていますが、これも、交付を受ける側がデータで交付することを許可している場合のみです。
上の私のケースのように、向こうが勝手にデータで源泉徴収票を送ってくるというのは法律上は認められていません。

【参考】
以下のページにその辺のことがいろいろと書かれていますので興味のある方はどうぞ。
給与所得の源泉徴収票等の電磁的方法による提供(電子交付)に係るQ&A|国税庁

再就職する場合ももちろん必要→会社としての印象が悪くなるかも?

また、同年中に他の会社に再就職した方はその会社で年末調整を受けることになります。
この場合、前の会社でいくら給料をもらっていたのかを確認する資料として源泉徴収票が必要となるのはご存知のとおりです。

もしここで、源泉徴収票が原本ではなくメールデータの白黒コピーだったりしたらその会社に対する印象はどうですか?
「ええ加減な会社やなー」と思ってしまいません??

びとう
気にしない人は気にしないのかもしれませんが、個人的にはこういうところはちゃんとやって欲しいと思います…。

 
退職された方が同年中に別の会社に再就職するかしないかは辞める時点ではわからないケースが大半でしょうが、
会社側としては、義務を果たす意味でも原本の送付を(しかも速やかに!)心掛けたいものですね。
間違っても、時間が無いから慌ててデータをメールで送って終わり、なんてズボラなことはやめましょう…。

確定申告書への原本添付は不要になりました【平成31(2019)年4月1日以降】

ちなみに、平成31(2019)年4月1日以降給与の源泉徴収票の原本を確定申告書に添付する必要はなくなっています。

↓以下のe-Taxのページの最下部にもこんな注意書きが増えています。

(注6) 平成31年4月1日以後、次の書類については、申告書の提出の際に、提出又は提示が不要となりました。

  • 給与所得、退職所得及び公的年金等の源泉徴収票
  • オープン型の証券投資信託の収益の分配の支払通知書、配当等とみなされる金額の支払通知書、上場株式配当等の支払通知書
  • 特定口座年間取引報告書

引用元:e-Taxを利用して所得税の確定申告書を提出する場合の「源泉徴収票」や「生命保険料控除の証明書」などの第三者作成書類の添付省略の制度について教えてください。|e-Tax

びとう
2019年3月までは原本提出が義務だったので、そういう点からも原本を発行することが重要だったんですが、ここに関しては気にする必要は無くなりました。
(ただ、それでも、上で書いたように原本発行が義務であることは変わりなしです!)

退職日の記載なし・退職日に間違いがある

あと、中途退職したのに退職日が書かれていない源泉徴収票の交付を受けたこともあります。

こうした源泉徴収票をもらってしまうと、

退職日を証明する書類として源泉徴収票を使おうと思ってたのに、退職日が書かれてへんから使えへんやん!
ってことになってしまいます。

中途退職者のその後のためにも、退職日はちゃんと記入するようにしましょう。

最後の給料から社会保険料が間違って天引きされている

最後はちょっと話が難しくなります。
ここは源泉徴収票そのものというよりは、それに書く内容の話。
具体的には、退職者に対する最後の給料から社会保険料を引くのか引かないのかという話です。
これは退職日が月末ではない場合(例:1月の最後の平日など)に発生しやすいミスです。

実は、中途退職した場合の社会保険料の負担については

  • 退職日が月末の場合:その月の保険料は会社の社会保険料を払う。
  • 退職日が月末より前の日の場合:その月の保険料は国民健康保険、国民年金保険に加入して払う。
    (=会社の社会保険料は払う必要がない)

と決められています。
つまり、

【ケースその1:退職日が1月31日(月末)の場合】
いつもどおり、2月に支払う最後の給料から1月分の社会保険料を天引きする。

【ケースその2:退職日が1月30日(月末以外)の場合】
いつもとは違い、2月に払う最後の給料から社会保険料は天引きしない。
(社会保険料の負担は12月分までのため)

と、退職日によって社会保険料を天引きするのかしないのかが違ってくるんです!

私自身、これは過去に在籍した会社のいくつかで受けているミスです。
(しかもそのうち1つは税理士事務所だったりします…。)
それだけ間違えやすいということでしょうから、給与計算をする方はここには特に要注意ですね。
 

退職者に給与の源泉徴収票を発行する場合の注意点のまとめ

以上、この記事では私自身が過去の中途退職の際に源泉徴収票の受給者として遭遇した4つのミスをいろいろと紹介してみました。
最後にもう一度項目をリストアップしてみましょう。

こうして見ると「大小(?)いろんなミスがあるんだなぁ」と思われるでしょうが、
ただ、1つの会社でこれを全部コンプリートしてきたところも実はあったりして(^^;
(なかなか発行してくれなくて、送られてきたと思ったらデータで、退職日が書かれてなくて、社会保険料が間違って引かれてたという。)

ま、世の中にはそんな会社もあるんだなぁ、ぐらいに思って頂ければ…。

とはいえ。
大きな会社ならともかく、小さな会社ではこういったミスのいくつかは結構やりがちなのではないでしょうか。
この記事を反面教師として頂いて、適切な源泉徴収票の発行を心掛けていきましょう!


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