所得税の源泉徴収税額についての解説

報酬や料金の源泉徴収税率は何%?【種類別に紹介】

所得税の源泉徴収制度に関する記事・第4弾です。

前回の記事に続き、今回も「いくら源泉徴収すべきか」の話を書いてみます。
前回の記事源泉徴収税額はいくらにすべき?【源泉徴収税率のまとめ】

今回は、前回長くなったので省略した
報酬・料金等について源泉徴収すべき金額はいくらかを確認していきます。
今回の記事も長いですが、興味のある項目だけでも拾い読みして頂ければと思いますm(_ _)m

この記事を書いた人


税理士 尾藤武英
税理士 尾藤 武英(びとう たけひで)
京都市左京区下鴨で開業している税理士です。
税理士試験大手予備校の元講師で、事務所開業後は所得税などの研修会講師を数多く担当。
Macユーザーで、クラウド会計を活用したスモールビジネス支援にも力を入れています。
詳しいプロフィール(経歴や活動実績など)
提供サービス:個人の確定申告 / クラウド会計税務顧問

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このページの目次

「報酬・料金等」の範囲とは?【復習です】

本題に入る前に、まずはどんな報酬・料金等の支払いが源泉徴収の対象になるのかの復習です。
前々回の記事で紹介した報酬・料金等の範囲をもう一度ご紹介します。
前々回の記事源泉徴収の対象となる所得には何がある?

これらの種類ごとに源泉徴収すべき金額が細かく規定されています。
(リンク先はそれぞれの項目の該当箇所です。)

では、順番に確認していきましょう。

1 原稿料、デザイン料、講演料、技芸・スポーツ・知識等の指導料など

支払金額が100万円以下の場合

支払金額×※10.21%
※10.21%は所得税10%+復興特別所得税0.21%の合計です。

【具体例1】
20万円の原稿料を支払う場合

源泉徴収税額:200,000円×10.21%=20,420円
相手先への実際の支払額:200,000円-20,420円=179,580円

【より実践的な話】
・「支払金額」に消費税は含めて計算?除いて計算?
・キリのいい金額を支払いたい場合は総額いくらにすればいい?
これらについてはこの記事の末尾で紹介しています。

支払金額が100万円超の場合

(支払金額-1,000,000円)×※20.42%+102,100円
※20.42%は所得税20%+復興特別所得税0.42%の合計です。

100万円までは10.21%、100万円を超える部分については20.42%の税率をそれぞれかける計算をします。

【具体例2】
200万円の講演料を支払う場合

源泉徴収税額:(2,000,000円-1,000,000円)×20.42%+102,100円=306,300円
相手先への実際の支払額:2,000,000円-306,300円=1,693,700円

となります。

【より実践的な話】
・「支払金額」に消費税は含めて計算?除いて計算?
・キリのいい金額を支払いたい場合は総額いくらにすればいい?
これらについてはこの記事の末尾で紹介しています。

2 弁護士、公認会計士、税理士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金

司法書士、土地家屋調査士、海事代理士以外の者への報酬・料金

上記「1 原稿料、デザイン料、講演料、技芸・スポーツ・知識等の指導料など」と同じ

司法書士、土地家屋調査士、海事代理士への報酬・料金

(支払金額-10,000円)×※10.21%
※10.21%は所得税10%+復興特別所得税0.21%の合計です。

これらの資格者に対する支払いのみ、支払金額から10,000円を引いて源泉徴収税額を計算します。

【注意】
この2の項で言う「特定の資格を持つ人など」の範囲には行政書士は含まれていません。
つまり、行政書士に支払う報酬については源泉徴収は不要だということです。
参考URL行政書士に報酬を支払った場合|国税庁

※ただし、たとえ相手が行政書士でも、建築代理士業務に対する報酬ついては源泉徴収が必要となります。

3 社会保険診療報酬支払基金から支払われる診療報酬

(その月の支払金額-200,000円)×※10.21%
※10.21%は所得税10%+復興特別所得税0.21%の合計です。

4 プロ野球選手、プロサッカー選手、競馬の騎手、モデルや外交員、集金人、電力量計の検針人などに支払う報酬・料金

職業拳闘家への報酬・料金

(支払金額-50,000円)×※10.21%
※10.21%は所得税10%+復興特別所得税0.21%の合計です。

「職業拳闘家」とは、プロボクサーのことですね。えらい古い言い方です(^^;

外交員、集金人又は電力量計の検針人への報酬・料金

(その月の支払金額-120,000円)×※10.21%
※10.21%は所得税10%+復興特別所得税0.21%の合計です。

ただし、同月中に同じ方に対して給与も支給する場合には、上記算式中の12万円から給与の額を控除して源泉徴収税額を計算します。

上記以外の者への報酬・料金

上記「1 原稿料、デザイン料、講演料、技芸・スポーツ・知識等の指導料など」と同じ

5 芸能人や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金

上記「1 原稿料、デザイン料、講演料、技芸・スポーツ・知識等の指導料など」と同じ

6 バー・キャバレーなどのホステス、コンパニオンなどに支払う報酬・料金

(その月の支払金額-5,000円×その月の日数)×※10.21%
※10.21%は所得税10%+復興特別所得税0.21%の合計です。

上記算式中の「その月の日数」とは、3月なら「31」、先月なら「29」です。出勤日数、営業日日数ではありません。
ただし、同月中に同じ方に対して給与も支給する場合には、こうして計算した金額から給与の額を控除して源泉徴収税額を計算します。

7 プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金

上記「1 原稿料、デザイン料、講演料、技芸・スポーツ・知識等の指導料など」と同じ

8 事業の広告宣伝のための賞金

(支払金額-500,000円)×※10.21%
※10.21%は所得税10%+復興特別所得税0.21%の合計です。

9 馬主が受ける競馬の賞金

1:総賞金×20/100+600,000円
2:(総賞金-1で求めた金額)×※10.21%

※10.21%は所得税10%+復興特別所得税0.21%の合計です。

つまり、所有馬がレースで活躍して得た総賞金の額が1,000万円の場合、

10,000,000円×20/100+600,000円=2,600,000円
(10,000,000円-2,600,000円)×10.21%=755,540円

が源泉徴収されます。
馬主の取り分は総賞金の8割なので、馬主に入らない残り2割の部分を除いて源泉徴収税額を計算するイメージですね。
上記の場合だと、7,244,460円が馬主に支払われることになります。

より実践的な計算例を2つ確認!

と、ここまでいろんな源泉徴収税額の計算方法を見てきました。
文字ばっかりでクラクラきますね…。(すいません)

これで終わるのは不親切なので、
「実際計算するときはこんな点が知りたいですよね?」
という点を2点紹介しておきます!

その1:「支払金額」に消費税は含める?含めない?

まずは、支払う報酬や料金などの中に消費税が含まれている場合の話です
(って、それが通常ですが)

ここまでで紹介してきた算式中の「支払金額」には消費税を含めた金額で計算するんでしょうか?それとも含めないで計算?

それについては、以下の2種類の方法があります。

  • 【その1】
    原則は消費税を含めた額を「支払金額」として計算
  • 【その2】
    ただし、請求書などで報酬・料金等の本体の金額と消費税の金額が明確に区分されている場合には、本体部分のみを「支払金額」として計算してOK

つまり、報酬20,000円+消費税1,600円=合計21,600円の原稿料を支払う場合、

  • 【その1:原則】
    源泉徴収税額:21,600円×10.21%=2,205円(円未満は切り捨て)
    相手先への実際の支払額:21,600円-2,205円=19,395円
  • 【その2:特例】
    源泉徴収税額:20,000円×10.21%=2,042円
    相手先への実際の支払額:21,600円-2,042円=19,558円

という2つのうち好きな方を採れるということです。
支払を受ける側からすると、【その2:特例】の方が受け取り時の手取りが増えるというメリットがありますね。

その2:キリのいい金額を支払いたい場合は総額いくらにすればいい?

2つ目は、
「相手先には100,000円ピッタリを払うようにしたいんやけど?」
というケースです。

(消費税を含める含めないを問わず)源泉税を引いた後の金額をキリのいい数字にしたい場合、その数字から逆算して源泉税を引く前の支払金額を決めてあげればいいです。

報酬・料金の種類が「1 原稿料、デザイン料、講演料、技芸・スポーツ・知識等の指導料など」の場合だと、
相手先への実際の支払額の大きさに応じて↓以下のいずれかの算式に当てはめます。

  • 【相手先への実際の支払額を897,900円以下にしたい場合】
    実際の支払額÷0.8979
  • 【相手先への実際の支払額を897,901円以上にしたい場合】
    (実際の支払額-102,100円)÷0.7958

実際の数字で確認しましょう!

  • 【具体例1】
    実際の支払額を10万円ピッタリにしたい場合
    100,000円÷0.8979=111,370円
    (源泉徴収税額は111,370円×10.21%=11,370円なので、それを引いた残額が100,000円ピッタリとなる)
  • 【具体例2】
    実際の支払額を100万円ピッタリにしたい場合
    (1,000,000円-102,100円)÷0.7958=1,128,298円
    (源泉徴収税額は(1,128,298円-1,000,000円)×20.42%+102,100円=128,298円なので、それを引いた残額が100万円ピッタリになる)

逆算した金額と順算した金額がちゃんと辻褄が合っていますよね。
キリのいい金額で支払いたい場合はこのように源泉税控除前の金額を出してみてください!

国税庁HPにも情報が掲載されています

ここまでの内容は国税庁の以下のページでも掲載されています。
No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁
第5 報酬・料金等の源泉徴収事務|国税庁
手取契約の場合の源泉徴収税額の計算方法|国税庁

この金額は報酬・料金等の範囲に含めるの?含めないの?といった、この記事では省略していることもそれぞれの種類ごとに書かれていますので、興味のある方はどうぞ。

あとがき

以上、この記事では、報酬・料金等について源泉徴収すべき金額はいくらかを確認しました。
全てご覧頂いた方、ありがとうございます!

次の記事では、源泉徴収した所得税はいつまでに払えばいいの?という点を掘り下げます。


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