競馬の税金の計算方法とは?馬好き税理士が解説します

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京都市左京区で開業している税理士です。 元税理士試験受験校「相続税法」講師。 相続税や所得税、贈与税など「個人の方にかかる税金」に特化した税理士として活動しています。詳しいプロフィール個人ブログも更新中です

※我が家で保存している記念馬券の数々。
記念馬券の数々

今日、朝起きたら
「馬券の払戻金を脱税した人が起訴された」
というニュースが各マスコミを賑わせていました。

関係者によると、元課長は2012年と14年、日本中央競馬会(JRA)の馬券の一種「WIN5」で4億3000万円の払戻金を得たが、申告しなかった。
このうち課税対象の一時所得とみなされたのは約1億6300万円で、約6200万円を脱税した疑いがある。過少申告加算税を含めた追徴税額は約7200万円。既に修正申告し、一部を納付したとみられる。

元課長は競馬新聞などを参考に、JRAが指定する五つのレース全てで1着を当てると払戻金が得られるWIN5を的中させていた。14年10月には、WIN5で当時の最高額約2億3200万円の払戻金を受けた。

引用元:脱税:寝屋川市元課長 馬券的中4.3億円申告せず – 毎日新聞(記事の公開期限切れ)

記事によると、脱税していたのは某地方自治体の固定資産税課の元課長とか。
税金取る側の人が脱税っておい(ー ー;)

って、それは置いといて。
この記事のタイトルにもあるとおり、馬券の払戻金には所得税や住民税がかかりますので、もしそれを払わなければ脱税になります。
じゃあ、これらの税金がかかるとして、いったい馬券の払戻金がどんな計算で課税されるのか貴方はご存じでしょうか。

去年(2015年)には、競馬ファンには有名な「ハズレ馬券が経費になる」例の判決もありました。
でも、
「で、あの判決を受けて今は結局どうなってるの?」
と思っている方も多いのではないでしょうか。

馬が好きで一口馬主もやっている税理士であるワタクシが今日はその辺をしっかりと整理してみます。
6,000字オーバーとかなりの長文ですが、よろしくどうぞお付き合い下さい!

【基本的には】「一時所得」として所得税や住民税がかかる

所得税(以下、住民税もこれに含めます)というのは、個人が1年間で稼いだ所得(もうけ)に対してかかる税金です。

そして、所得税の大きな特徴は、稼いだ所得(もうけ)の種類や性質によって10個の異なる計算方法(=「所得区分」と呼んでいます)を設けている点にあります。
これら「所得区分」の中で有名なのは「給与所得」「事業所得」「不動産所得」あたりでしょうか。

馬券の払戻金は基本的に、これら10個のうち「一時所得」という区分で課税されます。

「所得税基本通達34-1」という、国税庁が
「一時所得として課税するのには例えばこんなんがありますよー」
と公表している文章にもこんなのが↓書かれています。

次に掲げるようなものに係る所得は、一時所得に該当する。
(2) 競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等
(以下略)

引用元:法第34条《一時所得》関係|国税庁

というように、バッチリと「馬券の払戻金は一時所得」と書いてありますので、基本的に馬券の払戻金は「一時所得」として課税がされます。

「一時所得」というのは、単発で発生して、しかも偶然性が強いもうけが入る所得区分です。
馬券の払戻金って確かにそんな類のもうけですよね。

一時所得の計算方法は?

じゃあ、一時所得ってどうやって出すの?といいますと、算式はこうです。

総収入金額-その収入を得るために支出した金額-特別控除(50万円)
※この金額の1/2に対して税率がかかります。

って、文章だけだと全然ピンときませんよね(^^;

数字に当てはめると

こういう時は実際の数字に当てはめてみるに限ります。

↓こちらは私の一口出資馬・ブルヴェルソンが初勝利を挙げたときに買っていた当たり馬券です。

「金額がショボい」というツッコミは無しの方向で(^^;

1番人気だったので実際の払戻金は超絶安かったんですが、
もし奥に写っている馬券(3連単の1着流し・合計点数20点)で100万円の払戻金をゲットしたとした場合、一時所得の金額がいくらになるのかというと。

【20点購入@100円で100万円の払戻金をゲットした場合の一時所得の金額】

(1) 総収入金額
1,000,000円

(2) その収入を得るために支出した金額
100円

(3) 特別控除
500,000円

(4) (1)-(2)-(3)=499,900円

という算式となり、一時所得は499,900円となります。
さらに、この金額はこの後の計算の中で1/2されるので、結果、課税の対象になるのは

499,900円×1/2=249,950円

となり、この249,950円に対して税率がかけられることになります。

【ちなみに】
かかる税率は各個人の「もうけの総額」ごとに異なります。
(「もうけの総額」は、給与や事業などのもうけとも合算して求めます。)
所得税の場合、税率は最低5%〜最高は45%まで。住民税は一律10%です。

所得税の税率の詳細は以下の国税庁のページをご覧ください。
No.2260 所得税の税率|所得税|国税庁

・50万円が特別控除として引ける=もうけが50万円を超えないと課税されない
・その後、税率をかける際に金額が1/2になる

というのが、他の所得区分には無い一時所得のオイシイポイントです。

これは、
「偶然ドカンと手に入れたもうけにまでがっつり課税するのはさすがにかわいそう」
と国が配慮してくれていることの現れでもあります。

経費にできるのは「その収入を得るために」支出した金額だけ(ここが問題)

ただ、1つ注意なのが、経費として引けるのはあくまでも「その収入を得るために」支出した金額です。

上の例で言えば、100万円の払戻金を得るために投じた購入金額は2,000円。
それでも、「支出した金額」として引けるのは払戻金に直接対応する1点の購入費用(100円)だけ
となります。

我々の感覚では「20点買ったからこそ当たったんやん!」て感じですよね(^^;
でも、税法の計算ではそんな感覚は通用しません。
引けるのはあくまでも「収入に直接対応する金額」だけです。

馬券の払戻金が一時所得になる最大の問題点はここですね。
後述する例の「ハズレ馬券が経費」裁判も、これがために争われたと言っても過言じゃありませんでした。

中京競馬場場内

【超レアケース】「雑所得」になる場合もあります

実は、去年(2015年)の5月までは上の流れだけで終わりでした。
つまり、「馬券の払戻金は一時所得!」しか可能性は無かったんです。

ただ、現在はもう1つの所得区分に入る可能性もあります。

先ほど国税庁のホームページから引用した通達には、去年の5月に追加された「続きの文章」があります。
足された続きの文章(太字にしてます)も含めて再度引用し直すと、

次に掲げるようなものに係る所得は、一時所得に該当する。
(2) 競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除く。)
(注)
1 馬券を自動的に購入するソフトウエアを使用して独自の条件設定と計算式に基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げ、一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有することが客観的に明らかである場合の競馬の馬券の払戻金に係る所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得として雑所得に該当する。
2 上記(注)1以外の場合の競馬の馬券の払戻金に係る所得は、一時所得に該当することに留意する。

引用元:法第34条《一時所得》関係|国税庁

いきなりグチャグチャとわかりにくい文章が増えましたが(^^;

マーカーで強調している部分に「営利を目的とする継続的行為」という言葉があります。
もし、馬券の払戻金が「営利=お金儲け」を目的とした「継続的行為=反復、継続性を持って行われたもの」から得たものであれば、そのもうけは雑所得として課税がされることになりました。

雑所得というのは、副業から生じたもうけなどが入る所得区分です。
一時所得と根本的に違う点は、

・一時所得=突発的に、偶然手にいれたもうけ
・雑所得=生業(なりわい)というほどのものではないが、継続して発生するもうけ

という点です。
事業というほどの規模ではないけど「反復、継続性がある」のであれば雑所得となります。

雑所得の計算方法は?

雑所得は以下の算式で計算します。

総収入金額-必要経費

一時所得に比べると算式はすごくシンプルです。
一時所得のように50万円の控除はありません。
また、一時所得のようにその後金額が1/2になることもありません。
収入から引ける金額の文言も「その収入を得るために支出した金額」から「必要経費」に変わっています。

数字に当てはめると(一時所得より経費にできる範囲が広くなる!)

とは言え、これまた文章だけではピンとこないので、上の一時所得と同じ具体例に当てはめて雑所得の金額を計算してみます。

【20点購入@100円で100万円の払戻金をゲットした場合の雑所得の金額】

(1) 総収入金額
1,000,000円

(2) 必要経費
2,000円

(3) (1)-(2)=998,000円

となり、この998,000円に対して税率がかけられることになります。
(かかる税率は一時所得の場合と同じです。)

一時所得との違いを改めて挙げてみると、

・収入から引ける金額は100円から2,000円に増えている
・ただ、50万円の特別控除と、その後の1/2は無い

というところです。

「あの」判決を受けて入った改正。でも、当てはまる可能性はまず無い

「雑所得になる場合もある」と言っているこの通達の文章は、あの有名な「ハズレ馬券が経費になる」という判決を受けて去年(2015年)の5月に新たに加えられたものです。

去年出たこの「ハズレ馬券が経費」判決も、元はといえば、原告である元会社員の払戻金の所得区分が一時所得になるのか雑所得になるのかが争われた裁判です。

「雑所得なので、ハズレ馬券も収入を得るために支出した費用になる」と主張する原告
vs
「一時所得なので、収入から引けるのはあくまでも収入に直接対応する馬券代だけだ」と主張する被告(国)

という図式でしたが、結果は一審、二審、そして最高裁と、全て原告が勝利。
結果、原告の馬券の払戻金は雑所得として課税がされ、ハズレ馬券も必要経費として認められることになりました。

それを受けて、通達でも上記のような変更が加えられた、というわけです。

…てか、足された文章(特に(注)1、2の部分)をよくよく読んでみると、
「今回裁判で負けたような人だけは雑で、それ以外の人は今までどおり一時ですよ!」
と言っているようにしか見えませんよね(笑

こんな言い回しなので、当然これをくぐり抜けて雑所得になる人はごくごく限られてきます。
普通の馬券の買い方をしている我々は100%一時所得しかありえません。
(裁判所の判断も「この事例は一般の競馬ファンの買い方とは一線を画している。だから雑所得なんだ」という点を明確に示しています。)

【2017.12.18追記】
2017年12月15日、馬券の課税について裁判所から新たな判断が出されました。
これを踏まえて上記の取り扱いがどう変わっていくかに注目です。
「競馬の馬券は一時所得か雑所得か」の国の判断基準に裁判所が喝!
今年のダービーの発送前

【実は】「一時所得」のままの方が大抵は有利です

ただ、たいていの方にとっては一時所得として課税されるのは悪い話ではありません。
上のそれぞれの所得の計算方法のところで挙げた具体例はどちらも同じ数字を使っていますが、

・一時所得の場合の課税金額=249,950円
・雑所得の場合の課税金額=998,000円

と、一時所得の方が課税される金額が目立って少ない結果となっています。
このように、実は通常は一時所得の方が圧倒的に有利です。
50万円の控除ももちろんですが、特に1/2の存在が大きいですよね。
もうけの金額が大きければ大きいほどその効果は明らかです。

雑所得の方が有利になるのは必要経費の金額が膨大になってきたときぐらいです。
「ハズレ馬券が経費」裁判の原告なんかはまさにそのパターンだったので、雑所得になって助かった、というわけです。

横断幕

【私見】改善点は2つある

などなど、ここまで馬券の払戻金の課税方法の2つのパターンを見てきましたが、
払戻金に対する課税について、私自身、現状の課題は2つあると感じています。

その1:「支出した金額」の範囲を広げることはできないのか

1つ目は「『支出した金額』の解釈を変えましょうよ」という話です。

上で紹介した「馬券の払戻金は一時所得ですよ」と言っている通達は、馬券の種類が「単勝」「複勝」「枠連」の3種類しか無かった時代からずっと続いているものです。
その当時とは違い、今は3連単やWIN5のような、ある程度点数を張らないと当たらない券種も増えてきています。

いわば時代遅れとも言えるわけですが、でも、だからといって「払戻金は全部一時所得、という考え方を変えろ」という論調はズレていると思います。

前述のとおり、払戻金が一時所得にならないというのは大半の納税者にとっては不利な結果になるだけです。
また、我々一般の競馬ファンが支払いを受ける払戻金は偶然性が強く、継続性が一切無いのは明らかですし、その点からも、一時所得という区分は動かせない(動かす必要が無い)でしょう。

ただ、一時所得のままでいくとしても、「収入を得るために支出した金額」の概念は変えてもいいのではないでしょうか。

「ボックスやフォーメーション買いをして得た馬券の払戻金については、買った点数全てを『支出した金額』として差し支えない。」
みたいな通達がもし出てくれれば、競馬ファンの気持ちにより即した課税が実現する気がします(^^

その2:そもそも税金かけなきゃいいんじゃないの?

また、「そもそも馬券の払戻金って非課税にできないの?」という点もあります。

宝くじの当せん金が所得税の非課税所得に指定されているのは有名な話ですよね。
宝くじの当せん金が非課税で馬券の払戻金がなぜ課税?って、普通は思うかもしれません。

ただ、宝くじの当せん金が非課税なのは控除率が50%あるのが大きいでしょう。
中央競馬(JRA)の控除率は現在は20%〜30%。宝くじの約半分でしかありません。

もし、競馬の控除率も50%ぐらいに引き上げられるのであれば国も「所得税は非課税にしてもええよ」と言ってくれるかもしれませんが、そうすれば払戻金が大きく減る=馬券の売り上げもきっと減るのでJRAとしては嫌でしょうね。
てか、馬券でそんなに儲かる心配が無い私的にもそんなのは絶対に嫌です(笑

巷では「馬券の払戻金も非課税にしろ」という声をよく聞きますが、現状の控除率のままでそれを実現させるのは正直厳しい気がします。
身を切る必要が出てくるでしょうし、我々競馬ファンがそれを良しとするかです。

矢車賞のゴール後

まとめ

以上、長々と書いてしまいました。
ここまで読んで頂いた皆さん、ありがとうございますm(_ _)m

去年改正こそ入りましたが、それが適用される方はごくごく稀で、我々競馬ファンが普通に払い戻しを受ける馬券の払戻金は基本は一時所得として課税がされます。
50万円の控除があったり1/2してくれたりというのはありますが、「馬券に税金がかかる」という事実は動きませんので、もしWIN5などで高額の払戻金をゲットしたら正直に申告しましょうね。

てか、その前にまずは馬券を当てないとですが(^^;

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