その副業、本当に事業所得?「書類さえ出せばOK!」ではありません

サラリーマンの副業は事業所得?雑所得?

「働き方改革」の名の下、最近では従業員の副業を認める勤務先も徐々に増えてきています。

そんな流れの中、巷のブログやSNSなどを見ていると、

副業収入があるなら開業届を出して事業所得として青色申告しちゃいましょう!

なんて書いている記事をよく目にします。

でもこれ、税理士的には正しくないんですよね(^^;

というのも。
基本的にサラリーマンの副業収入は所得税の計算上「事業所得」ではなく「雑所得」と考えるからです。

事業所得にあたらないということは、事業所得が対象である青色申告は受けられないし、「事業」を始めた人が出す書類である開業届を出しても副業収入に対しては何の効力も生じません。

「出すべき書類さえ出せば、中身が何であれ事業所得として申告しちゃっていいんだ!」
というわけではない
ので、気を付けてください!

以下、この記事での「副業」は、サラリーマンが会社から受ける給与収入以外のもうけで、不動産所得にあたらないもの(例:ブログのアフィリエイト収入など)を指しています。

事業かそうでないかでこんなところに違いが出ます

所得税の大きな特徴は、
稼いだもうけ(=所得)の種類や性質に応じて10個の異なる計算方法(=「所得区分」と呼んでいます)を設けている点にあります。

びとう

今回ネタにしている事業所得や雑所得もそんな10個のもうけの1つです。

 
副業収入に対しての事業所得と雑所得の関係性はとても深くて、ざっくり言うと、
自分が生業(なりわい)としていることで稼いだもうけは事業所得、それ以外が雑所得となります。
詳しくは後述

所得税の計算では、もうけが「事業」と呼べる規模なのかそうじゃないのかは大きな違いを生みます。
なぜなら、それによって受けられる特典が違ってきますので。

↓これらは、もうけが「事業」と呼べる規模であってはじめて受けられる特典です。

  • 青色申告の65万円控除
  • 奥さん・ダンナ・子供など家族への給料を経費に入れる(=「青色事業専従者給与」)
  • 10万円以上30万円未満の固定資産の購入代金を一括で経費に入れる(=「青色申告者の少額減価償却資産の特例」)
  • もうけの計算で出た赤字を他の種類のもうけと相殺する(=「損益通算」)
  • 相殺後に残った赤字を翌年以後3年間繰り越す(=「純損失の繰越控除」)
  • 相殺後に残った赤字を前年の計算に充てて前年払った税額の還付を受ける(=「純損失の繰戻還付」)

  • 青字は青色申告者が受けられる特典です。
    (青色申告は事業所得、不動産所得、山林所得のみが対象です(雑所得での適用は不可))

どれも、事業所得だと受けられるけど雑所得では受けられないものばかりです。
もうけの種類が事業所得なのか雑所得なのかは最終的な所得税額(ついでに住民税の税額にも)に大きな影響を与えると言えます。

事業所得に該当するもうけとは?

じゃあ、どんなのが「事業」と呼べる規模と言えるの?という話になるんですが、
それは先ほども触れたとおり、そのもうけの元となった仕事が自身にとっての生業なのかがすべてです。

所得税法だけでは「事業」の中身がよくわからない…

ここで証拠資料として実際の条文を…といきたいところなんですが。
実は、所得税法で定めている事業所得の意義はたった↓これだけなんです。

事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で対価を得て継続的に行なうものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。

ホンモノの条文はもっと細かい言い方をしていますが、おおむねこんな感じの内容です。

 

…だからその「事業」の中身を教えてくれよ!

って感じですよね(^^;

過去の判例&裁決事例を紐解いてみる

これについては過去の判例を紐解いていくしかありません。

まず紹介するのは、昭和56年4月に出たとある最高裁判決です。

事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいう

かなり抽象的な表現ですが、ここで示された考えをより具体的にしたのが、平成19年12月に国税不服審判所で出た以下の裁決です。

事業に該当するか否かは、

  1. 営利性・有償性の有無
  2. 継続性・反復性の有無
  3. 自己の危険と計算における事業遂行性の有無
  4. 取引に費やした精神的・肉体的労力の程度
  5. 人的・物的設備の有無
  6. 取引の目的
  7. 事業を営む者の職歴・社会的地位・生活状況

などの諸点を総合して、社会通念上事業といい得るか否かによって判断するのが相当と解される。

引用元:(平19.12.4、裁決事例集No.74 37頁) | 公表裁決事例等の紹介 | 国税不服審判所

上の最高裁の判例を踏まえて、このような判断が示されました。

ご自身の副業のもうけが事業所得にあたるかは、自身の副業の状況がこれらの要件を満たしているかを考える必要があります。

サラリーマンの副業を裁決事例に当てはめると?

上の2つの判例&裁決事例のうち、特に意識すべきなのは後者(平成19年の裁決事例の方)の要件ですね。

  1. 営利性・有償性の有無(営利=売上、有償=経費のイメージ。これらがそれなりの規模か)
  2. 継続性・反復性の有無(コンスタントに売上が発生しているか)
  3. 自己の危険と計算における事業遂行性の有無(これが無い=サラリーマンと同じ状態、なのでここは「有」でOK)
  4. 取引に費やした精神的・肉体的労力の程度
  5. 人的・物的設備の有無
  6. 取引の目的
  7. 事業を営む者の職歴・社会的地位・生活状況(自分が世の中に認知されている職業や売上・もうけの比率などを考慮)
  8. これらを踏まえて、社会通念上事業といい得るか否か

少し表現が抽象的なものは後ろに解説を入れました。

これに当てはめると、サラリーマンの副業は果たして「事業」と呼べるレベルにあると言えますか??

ブログのアフィリエイト収入で例えると、
サラリーマンが本業の合間(実働時間で週に2〜3日程度)にブログでマネタイズして得たもうけを生業として税務署に納得してもらうのはかなり難しいのでは、というのが個人的な印象です…。

事業所得に当たらないなら雑所得として申告です

副業が事業所得に当たらない場合、そのもうけは雑所得として申告する必要があります。
雑所得の場合だと、冒頭で紹介した様々な特典は受けることができません。

既に出した開業届や青色申告承認申請書が無効になるわけではありませんが、
税務署的には
「開業届は出しているけど今年は事業所得が無かった人ですね」
という扱いになってしまいます。

まとめ 「書類さえ出せば中身を問わず事業所得OK」ではないです!

ここまで見てきたように、事業所得は
「開業届や青色申告承認申請書など、必要な書類さえ出せば中身が何であれ認められる」
というものではありません。

事業所得として税務署に認めてもらえるかはもうけの中身(内容)が全てです。
ご自身のもうけが税務署から見て
「これは確かに事業ですね」
と納得できるものである必要があります。

確定申告の内容に間違いや疑問点があった場合、しばらく経ったのちに税務署から
「ちょっと話を聞きたいんですけど」
なんて確認の連絡が来ます。

そこで税務署が納得する証拠が示せなければ、

事業所得として申告していたもうけが雑所得になった
→事業所得だから受けることができていた特典が受けられずに税額が増えた
→税額が増えただけでなく利子(罰金)まで一緒に払えと言われた
→ついでに住民税まで増えちゃった

なんて負のスパイラルにも陥りかねません。

副業収入を事業所得として申告するには慎重な判断が必要です。
チャレンジするのであれば、上で紹介した要件を満たしているかを十分確認することはもちろん、
税務署からの突っ込みにも対抗しうるしっかりとした証拠を準備しておくことをオススメします。

お困りの方へ:お気軽にご相談ください!
京都市左京区の尾藤武英税理士事務所では、所得税や確定申告に関するご相談をお受けしています。
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AUTHORこの記事を書いた人

京都市左京区で開業している税理士です。元税理士試験受験予備校「相続税法」講師。相続税に強く、クラウド会計に特化した税理士として活動中。
「専門用語をなるべく省いたわかりやすい説明」と「税理士が直接お客様に全てのサービスを提供すること」を大切にしています。
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