今までと同じでしょ…では済まされない「財産債務調書」

 

今年度(H27年度)の確定申告から、富裕層の方には新たな書類の提出が求められます。
それが「財産債務調書」です。
財産債務調書

先日、所属している税理士支部の研修会に参加してきたんですが、そこでのテーマがこの「財産債務調書」。

話を聞いていると、思っていたよりもこの制度はかなり複雑で、
「これはもっとこの制度をちゃんと勉強しておかないと…。」
と思いましたので、私自身の知識の整理の意味も込めて、今日から全4回に分けてこの制度について書いてみます。

【財産債務調書関連の記事一覧】
初回の記事:今までと同じでしょ…では済まされない「財産債務調書」(←今はここ)
2つ目の記事:財産債務調書の罰則規定について考える
3つ目の記事:財産債務調書を出した場合に受けられるメリットとは?
まとめ記事:財産債務調書のまとめ記事:で、結局どう対応するのか

この記事の運営元:京都市左京区の尾藤武英税理士事務所
元税理士試験受験予備校「相続税法」講師が運営する税理士事務所です。
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従来から似たようなものはありました

これは平成27年度の税制改正で新たに加わった制度なんですが、実は似たような規定は去年までもありました。

「財産及び債務の明細書」というもので、
その年分の所得金額(給与所得、事業所得、不動産所得、譲渡所得etc、その人の1年間のもうけの金額)の合計額が2,000万円を超える方は、この明細書に、自分が持っている資産や負債の内訳を記載して、確定申告書に添えて提出しなければいけない、とされていました。

ただ、出さなかったからといって罰則規定があるわけでもないし、出したら自分が持っている財産が全部税務署に筒抜けになっちゃうことを嫌う方もいて、該当する全ての方が提出されていたわけではありませんでした。

この状況を変えようということで創設されたのが「財産債務調書」制度です。

財産債務調書制度の特徴

この制度の特徴はいくつかあるんですが、従来の「財産及び債務の明細書」からの違いは主に5つで、

1.対象者が絞られた

従来の明細書は上記のとおり、「その年分の所得金額の合計額が2,000万円を超える方」が提出しなければならない、とされていましたが、新しい調書制度では

・その年分の所得金額の合計額が2,000万円を超える
ことに加えて、
・その年12月31日の時点で持っている財産の価額の合計額が3億円以上
 (または、有価証券類の価額の合計額が1億円以上)

の方に限定されることになりました。
従来に比べると、対象となる方の数自体は減ることになりますね。

2.記載事項の指定がより細かくなった

従来の明細書に比べて、新しい調書には財産について書かなきゃいけない項目が増えたり、財産の価額として入れていく金額の算定方法が財産ごとに微妙に違ったりと、いざ作るとなれば結構手間がいりそうです。
(講師の方は「財産の計上漏れさえ無ければ、価額については多少の細かい数字のズレは問題無い」と仰っていましたが、そもそも財産を漏れなく計上すること自体が難しそうに感じるんですが…。)

3.罰則が規定された

従来の明細書では未提出の場合の罰則規定は何も無かったんですが、新しい調書制度では罰則規定が明文化されました。
その罰則規定が↓こちら。

財産債務調書の提出が提出期限内にない場合又は提出期限内に提出された財産債務調書に記載すべき財産又は債務の記載がない場合(重要なものの記載が不十分と認められる場合を含みます。)に、その財産又は債務に関して所得税の申告漏れ(死亡した方に係るものを除きます。)が生じたときは、過少申告加算税等が5%加重されます。

引用元:「財産債務調書制度」のあらまし|国税庁(PDFファイル)

???これだけじゃよーわかりませんよね。
これは記事を改めて詳しく考えてみます(^^;

4.税理士の署名押印欄が設けられた

署名欄がバッチリ設けられている

税理士的にはこれは結構重いと思います。
署名押印して提出する以上、税理士としてもいい加減な気持ちで書類の作成はできません。
(今までの明細書はいい加減に作っていたという意味じゃもちろん無いですよ(^^;)

また、所得税の確定申告書の添付書類の一部でしかなかったこれまでの明細書とは違って、一個単独の税務書類なんだということがこの様式にも表れています。

5.記載事項についての税務調査が可能になった

従来の明細書では、税務署がその明細書の記載内容について調査権を行使することは出来なかったんですが、新しい調書制度ではその権限を行使することが可能になりました。
しかも、所得税や相続税の調査とは違い、事前に税理士に通知すること無しに調査することが可能とか⁉︎

記載内容の正確性が余計に問われる形になりますね。

「相続税の事前申告」の意味合いがより強く

元々従来の明細書も、相続税の調査における参考資料として使われてはいたんですが、新しい調書制度は制度の根拠規定自体が所得税法から切り離されたことで、所得税法、相続税法、相互でのより横断的な調書の利用が可能となります。
また、記載方法の指定も細かく、その説明が書いてある書類の内容を見て私が思ったのは…。

「これって、相続税の申告書を作る作業と全く同じやん。」

そんな「相続税の事前申告」としての意味合いがより強くなった書類を、所得税の確定申告書と同じ提出期限までに仕上げて提出しなければいけないんですから、税理士としてもかなり難しい作業に挑むことになります。
私のお客さんの中にも提出義務者に該当する方がいらっしゃるので、早めに準備を進めないといけないですね。

↓続きの記事では、「罰則が出来たからって、じゃあ出さんかったら具体的にどうなんの?」といった辺りを考えてみます。

【財産債務調書関連の記事一覧】
初回の記事:今までと同じでしょ…では済まされない「財産債務調書」(←今はここ)
2つ目の記事:財産債務調書の罰則規定について考える
3つ目の記事:財産債務調書を出した場合に受けられるメリットとは?
まとめ記事:財産債務調書のまとめ記事:で、結局どう対応するのか

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AUTHORこの記事を書いた人

京都市左京区で開業している税理士です。元税理士試験受験予備校「相続税法」講師。相続税に強く、クラウド会計に特化した税理士として活動中。
「専門用語をなるべく省いたわかりやすい説明」と「税理士が直接お客様に全てのサービスを提供すること」を大切にしています。
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