「競馬の馬券は一時所得か雑所得か」の国の判断基準に裁判所が喝!

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京都市左京区で開業している税理士です。 元税理士試験受験校「相続税法」講師。 相続税や所得税、贈与税など「個人の方にかかる税金」に特化した税理士として活動しています。詳しいプロフィール個人ブログも更新中です

※当たり馬券と外れ馬券

先週の金曜日、競馬ファン(私もその1人です)にとって注目の判決が最高裁判所で確定しました。

「外れ馬券は経費になるのか(=馬券の払戻金は一時所得か雑所得か)」
を納税者(税金を払う側)と国が争っていた裁判で、納税者の主張が認められたものです。

しかも、そこで掲げられた内容はざっくり言って、

今ある
「馬券の払戻金が雑所得で、外れ馬券も経費になる」
とするための国の判断基準(通達)はピント外れで、物事の本質を全然わかってない。

と、国の考えを裁判所がバッサリと切り捨てた形となりました。

今日は、今回裁判所が下したこの判断について掘り下げてみます。

【前提】今の払戻金に対する税金の仕組みとは?

まず、今現在の馬券の払戻金に対する税金の仕組みから整理しておきましょう。
馬券の払戻金には所得税や住民税がかかりますが、では、これらはどんな形で課税されるんでしょうか?

基本は「一時所得」、特異な場合のみ「雑所得」

まとめると↓このようになります。

1:馬券の払戻金は基本的に偶発性の高い儲けなので、原則はそんな儲けが対象となる「一時所得」として課税する。

2:でも、もしその域を超えている(「継続して儲ける目的で買っている」)のであれば「雑所得」として課税する。

3:「一時」か「雑」かの判断基準の分かれ目は、「ソフトを使って機械的かつ網羅的に」長期にわたって頻繁に馬券を買い、儲け続けているかどうか。

これが、国の現在の馬券の払戻金に対する課税の考え方です。

これは、国が「所得税基本通達34-1」(リンク先は国税庁の該当ページです)という税務署向けの内部文書で
「こういうのは一時所得として課税しますよー」
と伝達しているものを根拠としています。

2年前から「ソフトを使っている場合のみ雑」が加わった

実は、今のこの形は比較的新しい考えで、
2年前(2015年)に国が↓以下の裁判に負けたことで出来上がったものです。

競馬ファンには有名な「外れ馬券が経費に!」な裁判の第一号ですね(^^

この敗訴を受けて、この裁判で争った事例に当てはまるようなケース、つまり、ソフトを使って機械的かつ網羅的に馬券を購入していた場合のみ雑所得として認めよう、として通達が改正されて今に至ります。
(それ以前は、1に挙げている「払戻金は一時所得」しか書かれていませんでした。)

この「ソフトを使って」という点が今回の話の伏線となりますので頭に入れておいてください (^^

「一時」と「雑」の一番の違いは「外れ馬券が引けるか引けないか」

ちなみに、「一時所得」と「雑所得」の計算方法の大きな違いは「外れ馬券が経費になるかどうか」です。

払戻金が「一時所得」に該当する場合、外れ馬券は経費として認めてくれませんが、
「雑所得」に該当する場合には、外れ馬券も収益を生み出すための支出として、必要経費に含めることができます。

外れ馬券の金額が大きくなればなるほどその影響は大きくて、
今回の裁判でも、だからこそ納税者は「雑所得」を主張して裁判をし、それが認められたというわけです。

払戻金の税金に関するより詳細な解説は以下の過去記事をどうぞ
競馬の税金の計算方法とは?馬好き税理士が解説します

※ターフを駆け抜ける一口愛馬

【そして今回】「ソフトを使っていないのに」雑所得として認定された!

そして本題である今回の裁判について。

冒頭にも書きましたが、今回、裁判所は上で紹介した現在の国の判断基準を
「ピントがずれている」
とバッサリと切り捨てました。

というのも、「雑所得」が認められた今回の納税者はソフトを全く使わずに馬券を購入していたからです。

国の理屈としては、

・ソフトを使っていない

・通達に挙げている要件を満たしていない

・だから「雑」ではなく「一時」だ

ということだったんですが、裁判所からすると
「いやいや、判断基準はそこ(ソフト云々)じゃないでしょ。なにズレたこと言ってんの?」
というわけなんです。

ポイントは「購入の数量」と「利益の規模」

実は、2年前の裁判の時から、裁判所が下している判断の基準には一切ブレがありません。
手段云々は問わず、行為自体が税法で言うところの「営利を目的とする継続的行為」にあたるか(突発的なものでは無いと認められるか)を見ています。

裁判所が考える「一時」か「雑」かの振り分けのポイントはあくまでも

【購入の数量】
・購入件数や頻度などが一般の競馬ファンの買い方からすると飛び抜けて多いか

【利益の規模】
・あげた利益も膨大で、しかもそれが経常的に続いているか

の2点であって、国がこだわっている「その手段としてソフトを使っているかどうか」なんてのはどうでもいいのです。

今回の裁判も、
「一般の競馬ファンとは一線を画した買い方をしていて、あげた利益も膨大で、しかもそれがずっと続いているという点で2年前の事件と本質は全く変わらない(むしろ、規模自体は2年前のそれよりも大きい)」
ことから、「何の疑いも無く雑所得に該当する取引である」との判断が下されています。
(最高裁判所の4人の裁判官全員一致の結論だったとか)

「『ソフトの使用云々』を判断基準として課税しようだなんて、アンタ、この問題の本質を全然わかってないよね?」

と裁判所が断じた結果が今回の判断だ、というわけですね(^^

※2017年京都2歳Sのゴール前

通達の改正は必至

という判断を受けて今後注目されるのは、
今ある国の判断基準(通達)がどうなるのか?という点です。

ここまで裁判所からバカにされて、今ある通達を全く変えないというわけにはさすがにいかないでしょうし、改正は必至でしょう。

おそらく、「ソフト云々」の文言をそっくりそのまま削除したものに修正してくるのではないでしょうか。
冒頭に挙げている通達の内容の表現でいうと↓こんな感じですね。

1:馬券の払戻金は基本的に偶発性の高い儲けなので、原則はそんな儲けが対象となる「一時所得」として課税する。

2:でも、もしその域を超えている(「継続して儲ける目的で買っている」)のであれば「雑所得」として課税する。

3:「一時」か「雑」かの判断基準の分かれ目は、長期にわたって頻繁に馬券を買い、儲け続けているかどうか。

こうすれば、裁判所の判断と食い違うことも無くなりますもんね。
果たしてどうなりますことやら?

※ナイター照明に映える高知競馬場

「外れ馬券を引っかき集めろ」説に待った!

最後に、今回の裁判の我々競馬ファンへの影響について。

結論から言うと、「影響は全く無い」です!

だって、今回の裁判はあくまでも
「一般の競馬ファンとは一線を画した買い方をしていた」人の話
ですから。

上で紹介したとおり、裁判所が考える「雑所得」の基準は
「購入の数量と利益の規模が一般の競馬ファンのそれとは一線を画しているか」
で、そのためには、

・馬券購入の件数や頻度が膨大で
・たくさん利益をあげていて
・しかもそれを毎年継続していること

が必要とされます。

趣味の範囲で買っている程度の我々がたまたま高額の払戻金をゲットしたとしても、それは税金計算上はあくまでも「まぐれ当たり」扱い。
「一時所得」以外はあり得ません。

てか、その方が税金の計算上も実は有利ですしね。

その辺についても以下の過去記事で触れています。
競馬の税金の計算方法とは?馬好き税理士が解説します

なので、この裁判を受けて巷に流れている
「外れ馬券も経費になるから落ちている外れ馬券を引っかき集めろ!」
なんて説にはくれぐれも踊らされないように気を付けてください(^^;

そんなのしても無駄ですし、第一汚いですし…。(←超潔癖男)

時代に即した課税の実現が課題

というわけで、この記事では、今回裁判所から下された馬券の払戻金に関する税務判断について掘り下げてみました。

ただ、上で紹介している過去記事にも書いているのですが、私自身、馬券の払戻金に対する課税には検討すべき課題が多いと感じています。

払戻金が「一時所得」はいいとして、それだと流しやボックス、フォーメーション買いの点数全部が引けなくなる、というのは今の競馬ファンの感覚からは大幅にズレていますし、
そもそも払戻金に税金をかけること自体がどうなのか。
ただ、もし非課税にするなら今の控除率(20〜30%)は低すぎやしないか。
逆に、払い戻しの時点で一定額を源泉徴収しよう!なんて方向になったらどうしよう…。

などなど、挙げだすとキリがないのが実情です。

しがない払戻金しか手にできない一競馬ファンとしては、
今の形が結局一番バランスが取れているような気がしますが、あなたはどう感じますか?

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