懸賞で当てた家に住んでいるという、なかなかの強運の持ち主であるちいかわ。
もし人間の世界(しかも日本)でちいかわのように家を当てたらそれにはバッチリ税金がかかります。
じゃあそうだとして、いったい何税がかかるのでしょうか。
この記事では、
といった内容について、ちいかわにどハマりしている税理士がとことん解説していきます。
最後までどうぞお付き合いください!
この記事を書いた人

税理士試験大手予備校の元講師で、事務所開業後は所得税などの研修会講師を数多く担当。
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懸賞で家が当たったら「所得税」と「住民税」がかかる
映画の公開もあって、最近ますます世の中を席巻している感のあるちいかわ。
私もドハマりしていますが(映画見て号泣しちゃって…笑)、登場する様々なエピソードの中で税理士的に1つ気になる描写がちいかわが住んでいる家です。
— ちいかわ💫アニメ火金 (@ngnchiikawa) July 15, 2020
懸賞で家が当たるってそんなんある〜?(^^;
って感じですが、人間の世界で私が見たことのある同様のケースといえば、2023年、当時東京ヤクルトスワローズに所属していた村上宗隆選手が三冠王達成の賞品として3億円の家をもらったぐらいでしょうか。
(まったく無いかと思ったけど意外とあるのかな)
このように、企業(=法人)から個人が懸賞品をもらった場合、どんな税金がかかるんでしょう?
結論から言うと、かかるのは「所得税」と、それに付随する「住民税」です。
- 所得税…国に納める税金
-
住民税…都道府県や市区町村など、お住まいの地方公共団体に納める税金
※ 納付先に違いこそあれ、税金の計算方法は(完全に同じではないけど)ほぼ同じです。
個人が1年間に獲得したもうけ(収入から経費を引いた金額)に応じて課税されるこれらの税金が、家をもらうことによって発生することになります。
法人から家を贈与されたのになぜ「贈与税」じゃないの?
…という話をすると、法律を勉強されている方なら↓こう思うかもしれません。

確かに、法律上ちいかわは贈与を受けています。
しかし、日本の税法では以下のようなルールがあるのです。
- 贈与税…法人から贈与により取得した財産には贈与税は課さない(=贈与税の非課税財産とする)
-
所得税…法人からの贈与により得たもうけは所得税の「一時所得」で課税する
個人が法人から受けた贈与については贈与税ではなく所得税(一時所得)の対象になる、と法律でしっかり定められています。

- 所得税=自分が他者に何かしたことにより手に入れた対価
- 贈与税=自分は何もしてないのに手に入った財産
に課税される税金、という違いがあります。
今回のちいかわは特に何もせず家を手に入れています(=贈与)が、上記理由から、贈与税ではなく所得税で見る、ということですね。
ちなみに贈与税は他人(ヒト)から贈与により取得した財産にかかる税金です。
詳しくは「他人からお金をもらうと税金がかかります【贈与税とは】」という記事をどうぞ。
贈与税が非課税な理由は相続税との関係から
では、なぜ法人からの贈与には贈与税がかからないのでしょうか?
その理由は、相続税との関係にあります。
実は、日本の法律には「贈与税法」という法律はなく、
贈与税ってこんな場合にかかって、こんな計算をして税額を出して、こうして収めて〜的な「贈与税のあれこれ」はすべて「相続税法」に規定されています。
50種類以上あるという日本の税金(のうち国に払う税金)の中で、1つの税法に2つの税金が規定されているのは相続税法だけです。

なぜこうなっているのかといえば、贈与税は「相続税を補完する税金(=補完税)」だからです。
贈与税が相続税の補完税とされる理由
なぜ贈与税が相続税の補完税とされているのか。
その理由は贈与税の生い立ちにあります。
日本に相続税ができたのは明治時代ですが、その頃はまだ贈与税はありませんでした。
贈与税と相続税の違いはざっくり言うと↓以下の点にあります。
- 贈与税=生きている人から財産をもらったときにかかる税金
- 相続税=亡くなった人から財産をもらったときにかかる税金
「死亡に伴って、亡くなった人から財産を取得したときにしか税金が課税されない。」
そうなると、皆さんはどう考えるでしょうか。

となりますよね?
贈与税はそうした「生前贈与による相続税逃れ」を防ぐため=相続税で足りない部分を補うために作られた税金なのです。
この点については「贈与税が相続税の補完税とされる理由【贈与税はなぜあるのか】」という記事でも詳しく解説しています。
そして、法人からの贈与が非課税とされる理由もココ=贈与税はあくまでも相続税の補完税だからにあります。
法人は死亡しない→相続税がかからない→贈与税も非課税に、という理屈
というのも、法人=会社には自然人のような「死亡」がありません。
(会社が無くなることはあるけど、それはあくまでも「解散」であって「死亡」ではない。)
相続税は「人の死亡」に伴い財産が誰かに移ったときにかかる税金です。
つまり、(死亡という概念がない)法人から財産をもらっても、それに相続税がかかることはない。
であれば、補完税である贈与税も非課税でいいんじゃないの?という理屈です。
ただ、「それで終わり〜」としちゃうと、みんな法人から贈与しようとするので、
所得税(一時所得)の側でしっかりと課税するよ、という仕組みになっています。
実際いくら払うの?(一時所得の計算方法)
では、所得税が課税されるとして、実際の計算はどうなるのでしょうか。
ちいかわの家が時価1,000万円と仮定した場合にいくら税金がかかるのかをシミュレーションしていきましょう。
一時所得の計算には、我々個人事業主の事業所得やサラリーマンの給与所得とは異なる、計算上の2つのメリット(優遇措置)があります。
- 年間50万円の特別控除がある(=50万円を超えない限り課税されない)
- 他の所得と合算する段階(税率をかける前)で金額が1/2になる
その上で、課税対象となる一時所得の金額(税率をかける前の金額)の具体的な計算の流れを見てみると。
(1) 総収入金額
1,000万円
(2) その収入を得るために支出した金額
0円
※経費のイメージ。せいぜいハガキ代程度なのでここではゼロとして計算します。
(3) 特別控除
500,000円
(4) (1)-(2)-(3)=950万円
(5) (4)×1/2=475万円
こうして出てきた475万円が給与所得や事業所得など他の所得と合算されて、
その金額から基礎控除や社会保険料控除・扶養控除などの所得控除(詳しくはリンク先をどうぞ)を引き、
最後に、所得税・住民税それぞれの税率をかけます。
税率は所得税が最低5%〜最高45%まで所得(もうけ)が増えるほど大きくなる一方、住民税は一律10%です。
平均年収の方を例にとると、適用される所得税率の実効がだいたい20%前後なので、
所得税額は475万円×20%≒約100万円、住民税額は475万円×10%≒50万円。
合計すると、1,000万円の家をもらったことで、約150万円の税金(所得税+住民税)が発生する計算になります。

最終的な税額は他の所得の有無や大小、家族構成などによって変わります。
一時所得の詳しい計算方法は「競馬の払戻金にかかる税金の計算方法。確定申告はいくらから?」という記事で解説していますので、興味のある方はこちらをどうぞ。
他の一時所得と合算される点に注意
なお、一時所得は1年間(1月1日〜12月31日まで)に発生したすべての一時所得の合計で計算します。
家が当たった以外にも↓以下のような「臨時のもうけ」がある場合
- ふるさと納税の返礼品の時価相当額
(自治体=法人なので、これも「法人からの贈与」扱いになる) - 競馬の馬券など、公営競技の払い戻し金のもうけ
-
保険金や解約返戻金の差益部分
(受け取った保険金から払込済保険料を引いた残額)
これらがあるならこれも合算の上、一時所得を計算する必要がある点には注意が必要です。
車やカメラなどは時価の60%が収入でOK
また、もし懸賞品としてもらった品物が家ではなく車やカメラなど一定の動産(具体的には、不動産や有価証券、貴金属や骨とう品以外の品物)だった場合、
一時所得の収入金額は時価100%そのまんま、ではなく時価の60%とすることができます。
つまり、時価1,000万円の車をもらったとしても収入金額は600万円として税金を計算できる、ということですね。
他にも注意しておきたいポイント
以上で終わりかと思いきや。
法人から家を懸賞品としてもらった場合、所得税+住民税以外にも以下の点に注意が必要となります。
国民健康保険料が上がる可能性がある
個人事業主や不動産賃貸、働いていない方など、「国民健康保険」に加入されている方の場合、
保険料の計算に一時所得の金額が加算されてしまうので、家のような高価な品物を法人からもらってしまった場合、翌年の保険料がドカンと上がる可能性が高いです。
会社の社会保険に加入されている方(サラリーマンなど)との違いを整理すると
- 社会保険(サラリーマンが加入)=一時所得の金額は保険料に影響しない
-
国民健康保険(自営業者などが加入)=一時所得の金額も含めて保険料が計算される
というわけで、国民健康保険の加入者の方はこれも覚悟の上で(?)当選品を受け取る必要があるでしょう。
不動産ならではの税金もかかる
また、家や土地などの不動産の場合、もらったときにかかる税金だけでなく、その後の税金。
具体的には、
- 家を登記するときかかる「登録免許税」
- 家を取得したことに伴う「不動産取得税」
-
家を持ち続けることにより毎年かかる「固定資産税」
といった税金の存在も知っておくべきかと思います。
懸賞品は所得税の源泉徴収の対象です(お金で払う必要アリ)
最後に。
実は、今回のように懸賞で家などの高額な賞品を出す会社側(むちゃうま製菓さん)には、
家をちいかわにあげる際に、所得税の源泉徴収(1,000万円の家なら約100万円分)を行う義務があります。
所得税の源泉徴収というのはざっくり言うとその年分の所得税の前払いで、
ここで払った税額は最終的には確定申告することにより精算できます(年末調整を通じて精算されるお給料の源泉徴収と同じです)が、
今回のちいかわのように家を懸賞品としてもらう場合、
源泉徴収される金額はどのようにして源泉徴収が行われるのかによって2パターンに分かれます。
具体的には、
- ちいかわが家の引き渡し時に源泉所得税を(お金で)払う場合:969,950円
-
むちゃうま製菓が源泉所得税を立て替える場合:1,080,242円
※この場合、この金額が一時所得の収入金額に上乗せされます。(税額を立て替えてもらうこと自体も会社からの贈与にあたるため)
と、どちらの方法を採るのかによって源泉徴収税額、さらには、一時所得の金額(→最終的な納税額まで)も変わることとなります。

また、「どっちが得?」といったご相談は必要に迫られたタイミングでお近くの税理士にご相談ください。
(興味本位でのご質問はお控えください(^^;)
まとめ
以上、この記事では
といった内容について、ちいかわにどハマりしている税理士が詳しく解説してみました。
「夢のマイホーム(?)」を当てた強運を持つちいかわですが、
もし現実の世界でこれが再現された場合、所得税・住民税やその他の税金、さらには健康保険などが複雑に絡み合う一大イベントになります。
実際、家は可能性としては低くても、
「車やカメラが懸賞で当たった」なんてことはあり得る話だと思うので、
「そのときにはいろんな税金が絡んでくるんだなー」ということを、是非雑学として知っておいていただければと思います!
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なのになんで贈与税じゃないの??