土地の種類の1つに雑種地というものがあります。
身近なもので例を挙げると、駐車場用地や道路・公園などがそれにあたります。
こうした雑種地、特に駐車場用地が亡くなった人の遺産の中に含まれていた場合、どのように相続税を計算すればいいんでしょうか?
この記事では、そんな駐車場用地の相続税評価額の計算方法について詳しく解説してみます。
この記事を書いた人
過去に税理士試験の大手予備校で相続税を教えていた経験から、相続税が専門分野。
事務所開業以来、相続税や贈与税の申告、相続税対策、相続税贈与税をテーマとした研修会の講師など、相続税に関する業務を多数行っています。
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雑種地とは?
…と、本題に入る前に、まずは「どんな土地が雑種地に該当するのか」について確認していきましょう。
雑種地とは、他に定められた土地の種類のいずれにも該当しない土地の総称です。
相続税の計算上、土地には↓以下の8つの区分があるのですが…、
- 宅地…上に建物が立っている土地。自宅やビル・マンションの敷地など。
- 田…用水を利用して耕作する農耕地
- 畑…用水を利用しないで耕作する農耕地
- 山林…竹木や保安林が生えている土地。上に生えている竹木は「立木」として別評価。
- 原野…耕作地ではない、雑草などが生えている土地
- 牧場…家畜を放牧させるための土地
- 池沼(ちしょう)…水の貯水池
-
鉱泉地…温泉などの鉱泉が涌き出ている土地
これら8つのどれにも当てはまらない土地のことを「雑種地」と呼びます。
なので、一言で「雑種地」と言っても、たとえば
- 墓地、ため池、保安林、道路、公園など
- 競馬場の馬が走るコース
(スタンドなどの建物の用地部分は宅地) - 遊園地、運動場、ゴルフ場、飛行場のうち、建物の敷地以外の部分の利用がメインとなる土地
(逆に、建物の敷地部分の利用がメインとなる土地は宅地) -
高圧線の下、鉄塔の敷地、変電所の敷地
など、様々な土地が雑種地の範囲に含まれます。
駐車場用地は宅地ではありません!
雑種地として評価するにあたって勘違いしやすいのが、上の土地の種類の1つ目に挙がっている宅地との関係です。
見た目がほぼ同じだったり、1つの住宅地の中で隣接していることも多いので、
一般の方の中には「駐車場用地も宅地の一種だ」と思っている方が案外多いのですが、駐車場用地は宅地ではありません。
なぜなら、宅地というのは↑先ほども紹介したように、上に建物が立っている土地(建物の敷地)のことを指すからです。
雑種地(駐車場用地)の相続税評価方法のキホン
では、そんな雑種地はどう評価していくんでしょうか。
方法は大きく分けて↓以下の2つの区分に分かれますが…、
- ミニゴルフ場以外のゴルフ場用地や、地積が10万㎡を超える遊園地の敷地の場合
-
それ以外の雑種地の場合
駐車場は「2.それ以外の雑種地」にあたるので、この記事ではこちらの評価方法だけをご紹介します。
その、「2.それ以外の雑種地」の評価方法を文章にすると↓こーんな感じになります。
雑種地の価額は、原則として、その雑種地と状況が類似する付近の土地について評価した1平方メートル当たりの価額を基とし、その土地とその雑種地との位置、形状等の条件の差を考慮して評定した価額に、その雑種地の地積を乗じて計算した金額によって評価する。
(以下略)引用元:財産評価基本通達82
ごちゃごちゃした文章ですが、ザックリ言うと、
「周りの似通った土地の評価額を調整して、自分の土地の評価額を求めろ!」
ということです。
(ホントにザックリ書きました)
路線価地域なら?路線価方式+α【宅地比準方式】
これを、都市部(市街化区域内=路線価方式適用地域)にある大半の駐車場の場合に算式として置き換えると↓こうなります。
【路線価地域の場合の評価算式】
(駐車場が宅地であるとした場合の1㎡あたりの価額-1㎡あたりの宅地造成費)×地積
宅地の場合と何が違うかというと…ほとんど変わりません。
もしその駐車場が
- 凸凹があるなどで土地の地ならしが必要
- 樹木が生育しているので伐採や抜根が必要
- 湿田など軟弱な表土で覆われているので地盤改良が必要
-
道路よりも低い位置に土地があるので、土盛りや土止めの工事が必要
といった場合には「1㎡あたりの価額」から「1㎡あたりの宅地造成費」を控除できますが、
都市部にある大半の青空駐車場の場合はそういった状況にも無いので、これらの控除はありません。
(引けたとしても1つ目の土地の地ならしの費用(「整地費」と言います)ぐらいでしょうか)
つまり、都市部にある駐車場用地に関しては、
土地の種類こそ宅地ではなく雑種地となるものの、評価方法は宅地の場合とほぼ同じと考えてOK!ということです。
駐車場用地の目の前に路線価が付いている道路があるのであれば、
宅地と同じように、普通に路線価方式で計算すればいい!というわけですね。
- 宅地造成費の詳しい解説は以下の記事をどうぞ。
倍率表の比準・市比準・周比準とは?宅地比準方式の計算方法を詳しく解説 - 路線価方式の計算方法は以下の記事で解説しています。
相続税の路線価方式とは?市街地の宅地の計算方法を詳しく解説
倍率地域なら?倍率方式+α(近傍地の地目がポイント!)
ちなみに、上記の内容は都市部にある駐車場用地を対象としています。
市街化区域の外(市街化調整区域+都市計画区域の外)にある駐車場用地の場合は倍率方式で計算します。
倍率方式の基本的な計算パターンは↓こうなっていますが…。
土地の固定資産税評価額×国税庁が場所ごとに定める評価倍率
雑種地の場合、この算式を組むまでが大変です。
というのも、大半の場所について、倍率方式で使うべき雑種地の評価倍率が国税庁から指定されていないからです。
倍率方式で雑種地を評価する場合、
その雑種地の近傍地(きんぼうち)の地目が宅地かそうでないのかによって評価方法が変わります。
その土地の周辺の標準的な使用をもとに判定され、周囲が住宅地の場合は近傍地の地目は宅地となります。
また、近傍地の地目はその雑種地が所在する自治体でも教えてもらえます。
近傍地の地目が宅地の場合【宅地比準方式】
まず、その雑種地の近傍地の地目が宅地(=周囲が住宅地)である場合、
雑種地が所在する自治体に「近傍標準宅地の1㎡あたりの固定資産税評価額」というものを出してもらい、
それに宅地の評価倍率をかけることで駐車場用地の1㎡あたりの価額を求めます。
また、市街地と田舎の中間地点にある場合は以下のような「法的規制等に係るしんしゃく割合(ピンク枠部分)」をかけて評価額を下げることもできます。
国税庁HP「No.4628 市街化調整区域内の雑種地の評価」より引用
さらに、路線価地域同様、雑種地の現状によっては「1㎡あたりの宅地造成費」を控除することもできます。
以上3点を踏まえて、算式としてまとめると↓このようになります。
【倍率地域(近傍地の地目が宅地)の場合の評価算式】
- 近傍標準宅地の1㎡あたりの固定資産税評価額×宅地の評価倍率
- ①×評価しようとする駐車場の形状等に基づく調整計算
(奥行価格補正率や不整形地補正率など) - ②×(1-国税庁が定めるしんしゃく割合(0%or30%or50%))
※市街地と田舎の中間地点にある場合に適用可能 - ③-1㎡あたりの宅地造成費
-
④×地積
なんか一気にマニアック度が増して同業者向けになっちゃった気がしますが(^^;
- ①と⑤だけだと通常の倍率方式と同じだが、それに②〜④が加わっている
-
①はその土地ではなく「近傍宅地」の固定資産税評価額と評価倍率を使う
の2点が通常とは違う、とイメージして頂ければ!
近傍地の地目が宅地以外(農地、山林、原野)の場合【農地、山林、原野比準方式】
一方、近傍地の地目が宅地以外(=周囲が農地・山林・原野である)場合は、
宅地ではなく近傍地である農地、山林、原野の固定資産税評価額(1㎡あたり)に倍率をかけ、それに造成費相当額を加算し、最後に地積をかけて評価します。
(=農地比準、山林比準、原野比準方式)
上と同じように算式を形で表すと↓こうでしょうか。
【倍率地域(近傍地の地目が農地、山林、原野)の場合の評価算式】
- 近傍地の1㎡あたりの固定資産税評価額×農地、山林、原野の評価倍率
- ①×評価しようとする駐車場の形状等に基づく調整計算
(奥行価格補正率や不整形地補正率など) - ②+1㎡あたりの宅地造成費
-
③×地積
方法は以下の国税庁のページで紹介されているものとほぼ同じとなります。
(気になる方はリンク先をご覧ください)
農業用施設用地の評価|国税庁
倍率地域の場合の駐車場用地の評価方法まとめ
このように、駐車場用地が倍率地域(市街化区域の外)にある場合、
その土地がある場所(=近傍地の地目)によって評価方法が2つに分かれます。
それぞれ
- 近傍地が宅地の場合…1㎡あたりの価額から造成費相当額を引く
-
近傍地が農地、山林、原野の場合…1㎡あたりの価額に造成費相当額を足す
というアプローチで評価額を出します。
評価額が農地以上宅地未満になるように、というイメージですね。
雑種地(駐車場用地)の相続税評価方法まとめ
以上ここまで、駐車場用地の相続税評価額の計算方法について、雑種地の定義も含めて解説してきました。
駐車場用地については、以下のように方法が分かれます。
- 市街化区域の中にある場合=路線価方式+α
-
市街化区域の外にある場合=倍率方式+α
この場合、近傍地が宅地なのかそれ以外なのかにも要着目
では、貸駐車場はどう評価する?【続きは別記事にて】
ちなみに、上で紹介した評価の方法は自用地(他人に賃貸せず自分が使っている土地)の場合を前提としています。
じゃあ、もし駐車場用地を他人に賃貸していた場合にはどう評価するんでしょうか?
宅地と同じように、貸し手側は借地権部分を除いた残額だけを権利として持つ(貸宅地として評価ができる)と考えてOKなんでしょうか??
その答えは、続きの「貸駐車場は貸宅地評価OK?引けるのは借地権ではなく賃借権」という記事にてお答えします!
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