相続税はどんな財産にかかる?【本来の財産とみなし相続財産】

相続税はどんな財産に対してかかるんでしょうか?

結論から言えば、
「亡くなった人(以下「被相続人」と言います)が死亡当時に持っていた財産でお金に換えられる価値があるものすべて」
にかかります。

この記事では、そんな「相続税がかかる財産(=「相続税の課税財産」)」について、
どんなものが含まれて、どんなものが除かれるのかを詳しく解説していきます。

この記事を書いた人


税理士 尾藤武英
税理士 尾藤 武英(びとう たけひで)
京都市左京区下鴨で開業している税理士です。
過去に税理士試験の大手予備校で相続税を教えていた経験から、相続税が専門分野。
事務所開業以来、相続税や贈与税の申告、相続税対策、相続税贈与税をテーマとした研修会の講師など、相続税に関する業務を多数行っています。
詳しいプロフィール(経歴や活動実績など)
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民法上の「本来の相続財産」と相続税法上の「みなし相続財産」

相続税がかかる財産=「相続税の課税財産」は、大きく分けて以下の2つに分類されます。

以下、それぞれどんなものが含まれるのかを見ていきましょう!

民法上の本来の相続財産(相続や遺贈で取得した財産)とは

まず、民法上の「本来の相続財産」とはどんなものでしょうか?
これは、被相続人が亡くなったことによって、相続人などが相続や遺贈で取得した財産のことを指します。

相続と遺贈の違いは「相続、遺贈、死因贈与とは【相続財産の3つの取得原因】」という記事で解説しています。

「相続や遺贈で取得した財産」のより具体的な定義を国税庁のページから引用してみると…、

1 相続税がかかる財産
相続税は原則として、死亡した人の財産を相続や遺贈(死因贈与を含みます。)によって取得した場合に、その取得した財産にかかります。この場合の財産とは、現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋などのほか貸付金、特許権、著作権など金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのものをいいます。

引用元:No.4105 相続税がかかる財産|国税庁

とあるように、

  • 現金、預貯金、有価証券などの金融資産
  • 土地や建物などの不動産
  • 家具や車などの家庭用財産(細かいところでは電話加入権も)
  • 宝石や書画、骨董品、ゴルフ会員権、船舶などのぜいたく品
  • 被相続人が事業をしていた場合の棚卸資産や減価償却資産、貸付金、特許権、著作権など事業用の資産

などなど、民法上、被相続人固有の遺産とされるものはすべて相続税の課税の対象となります。

こんなものも本来の相続財産です

上記以外にも、細かいところでは↓こんなものも本来の相続財産に含まれます。

  • 亡くなった人が生前に払っていた掛金などで解約したらお金が戻ってくるもの
    (例:JAの建物更生共済契約の掛金、葬儀会社などに払っていた会費など)
  • 死亡後に支払われた給与や賞与
  • 支払期限が過ぎて未収の状態になっていた家賃や賃料
  • 健康保険組合から支払を受けた高額療養費の還付金
  • 所得税の準確定申告で戻ってきた還付金
    (還付加算金(↓下記参照)は除く)
  • 上場会社の株式のうち「端株」と呼ばれる、取引の1単元未満の株式

どれも
「もし亡くなった人が生きていたとしたら、その人にお金として返ってくるもの」
なので、相続財産に含めます。

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最後に挙げている「端株」については以下の記事で解説しています。
上場株式の相続では端株(単元未満株)の存在も要チェック!

こんなものにはかかりません

逆に、

  • 死亡により戻ってきた老人ホームの入居一時金を遺族が受け取った場合
    →死亡時に、亡くなった人から受取人に対して贈与があったと考えます。
  • 健康保険組合から支払を受けた葬祭費や埋葬料
    →遺族に対して支払われたお金なので相続財産には含まれません。
  • 亡くなった人への未支給の国民年金(亡くなった人と生計を一にしていた親族が受け取るもの)
    →親族自身の固有の権利として受け取るお金なので、受け取ったその人自身の所得(一時所得)と考えます。
  • 所得税の準確定申告で戻ってきた還付加算金
    →亡くなった人が払っていたお金ではない+相続人が準確定申告をすることによって戻ってきたお金なので、相続人自身の所得(雑所得)と考えます。

などは、それぞれ書いている理由から相続財産にはあたらないので、相続税もかかりません。

びとう
ひとことで「民法上の本来の相続財産」と言っても、その中身はとても奥が深いです。

名義ではなく実質で判断します

また、「被相続人固有の遺産」を考えるにあたってはもう1つ重要な論点があります。
それは、名義ではなく実質で判断しますよ、ということです。

実は、相続税の税務調査で指摘されるケースの大半が
「子供や孫名義の預金口座を亡くなった方の相続財産に含めずに申告していた」
など、他人名義の財産を相続財産から漏らしていたケースなんです。

相続税の計算では、たとえ名義は他人でも、実質的に被相続人固有の遺産だと認められるものについては相続財産に含めて申告をしなければいけません。

これについては「税務署に指摘されやすい名義預金。相続税課税を防ぐために必要なこととは」という記事で詳しく紹介しています。

以上ここまで、相続税の課税財産の1つ目・「民法上の本来の相続財産」の範囲について解説しました。

相続税法上の「みなし相続財産」とは

相続税の課税財産の2つ目・「みなし相続財産」とは、
上で紹介したような被相続人固有の遺産ではないものの、実質的に遺産と同じ性質を持つものについて、相続財産とみなして相続税を課税しよう!というものです。

どんなものが「みなし相続財産」に含まれるかは相続税法で決められています。
(「相続税法上の」と書いている理由はそこからです)

主なものをピックアップしてみると、

  • 生命保険契約の死亡保険金
    (被相続人が被保険者+保険料負担者だった場合限定)
  • 生前の職場から支給された死亡退職手当金
  • 生命保険契約に関する権利、定期金に関する権利
    (保険事故未発生で被相続人が保険料負担者だった場合に発生します)
  • 保証期間付定期金に関する権利、契約に基づかない定期金に関する権利
  • 相続財産法人から与えられた財産
    (相続人がいない場合に出てくる話です)
  • 特別寄与者が支払を受けた特別寄与料の額
  • 低額譲受や債務免除など、死亡に起因して被相続人から受けた何らかの経済的利益
  • 信託に関する権利(信託受益権)
  • 「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税」や「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税」の適用を受けてい場合の管理残額
  • 相続や遺贈で財産を取得した人が、被相続人の死亡前3年以内に被相続人からもらっていた贈与財産(暦年課税の贈与財産)
  • 被相続人から、生前、相続時精算課税の適用を受け取得した贈与財産

などがあたります。(よく出てくる項目のみ太字にしました)

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相続税の課税財産の範囲のまとめ

以上、この記事では相続税はどんな財産に対してかかるのかという点についていろいろと見てきました。
もう一度まとめると、相続税がかかる財産=「相続税の課税財産」は大きく分けて以下の2つに分類されます。

「意外と奥が深いんやなぁ」と思われたかもしれませんが、基本的な考え方は冒頭にも書いたように
「被相続人が死亡当時に持っていた財産で、お金に換えられる価値があるものすべて」
です。

これに当てはまるものには相続税がかかりますので気を付けて下さい!


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