相続税申告書の作成に必要な資料:弊所が準備をお願いする書類を一覧で紹介します

相続税申告書の作成に必要な書類:弊所がお願いする資料を一覧で紹介します

相続税の申告書を作成するにあたってはどんな書類(資料)が必要になるのでしょうか。
亡くなられたご本人に関する資料、相続人に関する資料、財産に関する資料、債務や葬儀費用に関する資料、生前贈与に関する資料など、その範囲は多岐にわたります。

この記事では、弊所に申告書の作成を依頼されたお客さまに私が実際に準備をお願いしている資料を、

  • 必要な資料や書類の名称
  • 請求先や保存先
  • 備考(こんな点に気を付けてくださいetc.)

の別に一覧で紹介します。

びとう
様々なケースに対応できるように作成したので項目数は多くなってしまいましたが、
「ウチの親はこんなの持ってないぞ」など、当てはまらないものに関しては無視してご覧ください。
以下に挙げている書類はすべて原本ではなくコピーでOKです。
(申告書に添付する場合もすべてコピーを引っつけます。)

この記事を書いた人


税理士 尾藤武英
税理士 尾藤 武英(びとう たけひで)
京都市左京区下鴨で開業している税理士です。
過去に税理士試験の大手予備校で相続税を教えていた経験から、相続税が専門分野。
事務所開業以来、相続税や贈与税の申告、相続税対策、相続税贈与税をテーマとした研修会の講師など、相続税に関する業務を多数行っています。
詳しいプロフィール(経歴や活動実績など)
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亡くなられた方(被相続人)に関する資料

まずは亡くなられたご本人(以下「被相続人」といいます)に関する資料です。
(スマホでご覧の方は表を横にスクロールしてご覧ください)

必要資料名 請求先など 備考
被相続人の死亡事項が記載されている
戸籍(除籍)謄本
被相続人の住所地の役所
(戸籍謄本は全国どこでも取得可能)
出生から死亡まですべてのものが必要です。
(法定相続情報一覧図を既にお持ちの方は一覧図で代用可能)
・被相続人の住民票の除票
・被相続人の戸籍の附票
・住民票の除票=被相続人の住民票のこと
・戸籍の附票=被相続人の過去の住所の変遷をまとめたもの
いずれも被相続人の住所の確認に使用しますが、
老人ホームに入居していた被相続人について小規模宅地等の特例を使う場合以外は
住民票の除票のみでOKです。
・被相続人の遺言書
・遺言書検認通知書
・死因贈与契約書の控え
公証人役場
または自宅
遺言書がある場合や生前に死因贈与契約を行っていた場合にご準備ください。
・過去の所得税や消費税の確定申告書の控え
・過去の相続税の申告書の控え
自宅 いずれも過去に申告していた場合のみでOK。
所得税や消費税の確定申告書は過去3〜5年分、
相続税の申告書は過去相続人として申告したものをご準備ください。
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相続人などに関する資料

続いては、相続人受遺者(相続人ではないが遺言により遺産を取得された方)、相続放棄者に関する資料です。

必要資料名 請求先など 備考
・相続人や受遺者全員の戸籍謄本
・相続人や受遺者全員の住民票
 (本籍地とマイナンバー記載のもの)
・相続人全員の印鑑証明書
皆さまの住所地の役所 戸籍謄本は最新のもののみでOK。
また、被相続人と同じ戸籍にいる方の改めての取得は不要です。
印鑑証明書は遺産分割協議書を作成する場合のみ必要です。
(申告書の添付書類に指定されています)
相続人や受遺者全員のマイナンバーがわかる書類
(マイナンバーカード、通知カード)
自宅 上記「マイナンバー記載の住民票」で代用可能なので、
それを取られた方は不要です。
相続放棄、欠格、廃除関係書類 自宅 相続の欠格、廃除=一定の理由により相続権を剥奪されること
・特別代理人専任の審判の証明書
・成年後見登記事項証明書
家庭裁判所
法務局
または自宅
財産を取得される方の中に未成年者や被後見人がいる場合に必要です。
障害者手帳など 自宅 障害者控除の金額の計算に使用します。

不動産に関する資料

被相続人の遺産に土地建物などの不動産が含まれている場合、それらの評価額の算定のために以下の資料が必要です。

必要資料名 請求先など 備考
・土地、建物の登記簿謄本(全部事項証明書)
・土地の公図、地積測量図
法務局(全国どこでも可能) 土地の公図や地積測量図はある場合のみでOKです。
・土地、建物の権利書、地積図、建築確認申請書の控え、建物の見取り図など
・土地、建物の賃貸借契約書
・過去の借地権等に関する税務署への届出書の控え
自宅 該当するものがあればご準備ください。
土地、建物の固定資産評価証明書、名寄帳 土地、建物が所在する役所 被相続人が亡くなられた年分のもの
(例:令和7年中に死亡なら令和7年度分)をご準備ください。

預貯金に関する資料

被相続人の遺産に預貯金が含まれる場合にご準備いただきたいのは以下の2点です。

必要資料名 請求先など 備考
各口座の通帳(過去10年の範囲であるものすべて) 自宅 預金通帳は被相続人名義のみならず、
借名名義と思われるものやご家族の方のものも可能な限りご準備ください。
同上の残高証明書 金融機関(銀行、郵便局、信託銀行など) 発行を依頼される場合は金融機関に
「定期預金は既経過利息考慮後のもの」とご指定ください。

残高証明書だけでなく通帳をご準備いただく意図としては、
被相続人がお亡くなりになった日現在の預貯金残高の把握はもちろんのこと、

  • 死亡前後の口座からの出金の有無
    (残高証明書に反映されない口座からの出金は現金として計上が必要)
  • 計上漏れが発生しやすく、かつ、税務調査の対象にもなりやすい生前贈与の把握

の2点があります。
この辺、詳しくは後半の生前贈与に関する資料にて解説していきます。

また、1つ目の備考欄に
「預金通帳は被相続人名義のみならず、借名名義と思われるものやご家族の方のものも可能な限りご準備ください。」
と書きましたが、その理由は、相続税の税務調査でこの点(借名財産)がとても指摘されやすいからです。
詳しくは以下の記事で解説していますので、こちらもどうぞご覧ください。
税務署に指摘されやすい名義預金。相続税課税を防ぐために必要なこととは

株式や出資、債券、投資信託に関する資料

被相続人が生前に

  • 上場株式
  • 被相続人が経営されていた非上場会社の株式
  • 出資、債券、投資信託など

をお持ちだった場合、以下の資料が必要です。

必要資料名 請求先など 備考
・上場株式の残高証明書
・自宅保有株券
・株主名簿記載事項証明書、配当金支払通知書
証券会社
株式発行会社
金融機関
株主名簿管理人
自宅
など
名義に限らず、被相続人ご自身がお金を出されていたと思しきものは
すべてご準備ください。
・非上場会社の過去3年分の法人税の申告書、決算書、総勘定元帳など
・非上場会社が保有していた資産や負債に関する資料
・出資金の残高証明書
・信用金庫や農協などの出資証券
・債券の残高証明書
・国債、地方債、社債などの保護預り証書
・投資信託の残高証明書(計算明細書)
・投資信託の受益証券
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上場株式の相続税の計算ではいわゆる端株(単元未満株)がないかの確認も行います。
(我々税理士が代理で申請します。)
詳しくは↓こちらの記事をどうぞ。
上場株式の相続では端株(単元未満株)の存在も要チェック!

保険や年金、退職金に関する資料

被相続人が生前に

  • 生命保険やご自宅などの損害保険に加入していた場合
  • 個人年金保険の支払いを受けていた場合
  • 死亡に伴い生前の勤務先から退職金が支払われた場合

に必要な資料の一覧です。

必要資料名 請求先など 備考
・死亡保険金の支払通知書
・保険証書、郵便年金証書
保険会社
自宅
被相続人の死亡により保険金を受け取った場合に課税対象額の算定に使用します。
生命保険の解約返戻金計算書
(保険事故未発生の契約分)
保険会社 「保険事故未発生=被相続人の死亡による保険金の支払いはない」が被相続人が生前に掛金や保険料を負担していた契約(例:子や孫を被保険者としている契約)については、
解約返戻金相当額が相続税の課税対象となるため、課税対象額の算定に必要です。
・損害保険契約、JA建物更生共済契約の契約証書
・JA建物更生共済契約の解約返戻金相当額等証明書
保険会社、農協など
自宅
ご自宅などの損害保険契約について解約返戻金がある場合は
解約返戻金相当額が相続税の課税対象となるため、課税対象額の算定に必要です。
(解約返戻金がない場合は準備は不要です。)
・個人年金保険の直近の支払通知書
・個人年金証書、郵便年金証書
保険会社
自宅
死亡退職金や弔慰金の支払通知書 生前の勤務会社  

「保険」といえば死亡保険金が思い浮かびますが、
2つ目や3つ目に挙げているような
「保険事故が発生する前の契約について解約返戻金相当額が課税対象となるケース」
もありえるため、被相続人が生前に掛金や保険料を支払っていた保険契約については種類を問わずすべて教えていただくようお願いします。

その他の財産に関する資料

その他、被相続人が生前に事業をされていた場合や金銭的価値のある物品をお持ちだった場合には、
それらに関する以下のような資料をご準備いただく必要がございます。

必要資料名 保存先 備考
・被相続人が生前に営んでいた事業用の財産に関する書類
 (青色申告決算書や棚卸表、売掛帳、固定資産台帳など)
・事業に関する未収金や未収地代、未収家賃に関する書類
 (不動産賃貸借契約書など)
自宅など 事業用財産のほか、
お金に換えられる価値があるものはすべて
相続税の課税対象となります。
・未収配当金や未収給与など、未収のお金の明細
・貸付金があった場合のその明細(金銭消費貸借契約書など)
・信託財産の受益権証書
・家財道具の主な内容
・書画、骨董品、貴金属などの明細
・ゴルフ会員権、レジャー会員権証書
・自動車の車検証

生前贈与に関する資料

「相続財産に足していくもの」の最後は忘れちゃいけない生前贈与です。

  • 被相続人から生前に贈与を受けていたかどうか
  • 受けていた場合、相続時精算課税を選択していたか

などの確認として、以下の資料が必要となります。

必要資料名 保存先 備考
・相続人や親族などに対する生前贈与の有無
・過去の贈与税の申告書の控え
・相続時精算課税選択届出書の控え
・贈与契約書
・名義財産と思しきものの有無
被相続人や
贈与を受けた人の自宅など
 

生前贈与の計上漏れは国税庁が「誤りやすい事例」に挙げているように、税務調査でもよく突かれます。
関連記事相続税の申告で間違えないために。国税庁「誤りやすい事例集」は要チェック!

また、暦年課税で生前の贈与税を計算していた(=相続時精算課税を選択していなかった)場合、
贈与税の基礎控除額110万円以下の贈与であっても、その財産は生前贈与加算の対象となります。
関連記事相続税の生前贈与加算とは?死亡前の贈与財産にも相続税がかかるかも!?

ほか、昔担当したとある相続税の申告では、
「贈与時に相続時精算課税の選択をしていないのに、親子間の贈与であれば2,500万円までは課税されないと勘違いされていた
相続時精算課税の特別控除は勝手に適用されると思い込んでいた)」
お客さんもいらっしゃいました。

こうした思わぬ勘違いや適用ミスなどを可能な限り潰していくために、
上の表に挙げている資料や預貯金の通帳などをもとに、

  • 生前贈与について正しい手続きがされていたのか
  • 相続財産に足すか足さないかなど、生前贈与の正しい振り分け

といった点を慎重に判断していきます。

債務や葬式費用に関する資料

ここまでは全部「相続財産として足していくもの」に関する資料の紹介でしたが、
最後は唯一「相続財産から控除できるもの」についてのご紹介です。

相続税の計算上、

  • 被相続人が死亡の際未払いの状態だった債務
  • 被相続人の死亡に伴う葬儀費用

は相続財産から控除できますが、そのための資料として以下のものが必要です。

必要資料名 請求先など 備考
・借入金の残高証明書
・借入に係る根抵当の有無
金融機関
自宅など
根抵当は6ヶ月以内に名義変更手続きが必要です。
・資産の取得による未払金やローンの有無
 (例:家や車、事業用資産のローンなど)
・建物の保証金や敷金などの預り金、保証金の利息の有無
 (賃貸借契約書や決算書などの確認が必要)
・国税や地方税の納税通知書
・被相続人が死亡した年分の給与や公的年金等の源泉徴収票
・被相続人死亡前後の医療費の領収書
 (未払いの医療費はいくらかetc.)
・被相続人死亡前後の電気、ガス、水道等の支払額
・カードの利用代金など生活上の未払金
・その他の債務や保証債務の有無の確認
自宅など 債務になるのか判断が難しい場合は
とりあえずそれと思しきものを全部ご準備ください。
(引けるもの、引けないものの振り分けはこちらで行います。)
葬儀費用の明細書、請求書、領収書、その他葬儀にかかる一切の費用の明細 葬儀会社等
自宅
菩提寺へのお布施や戒名料、御礼は
支払先と支払金額を書いたメモをご準備ください。
(領収書は発行されないためそれが控えとなります。)

備考欄の2段目にも書いていますが、債務や葬式費用として何が控除できるのかは意外と複雑で、
↓こうしてひと記事書けるほどいろんな論点があったりします。
関連記事香典返し費用が相続税で債務控除できない理由【会葬御礼費用との違い】

ですので、迷うようであればひとまずざくっとご準備いただいて大丈夫です!
控除の可否は税理士の方で判断いたします。

まとめ

以上、この記事では相続税の申告書作成にあたってお客さまにご準備いただきたい資料を一覧で紹介してみました。

弊所では、申告書の作成を依頼されたお客さまに上の内容をまとめた書類をお配りし、
個別の状況に合わせて内容をご説明の上、資料の収集をお願いしています。

資料は全部こっちで揃える必要があるの?
(そっちで揃えてくれないの?)

というご質問もごくたまに頂戴するのですが、
税理士の職権に限界があること、また、
皆様ご自身にも財産や債務の状況を随時把握していただきたいという趣旨から、
資料の収集は原則お客様にお願いしています。

また、上のリストは完全なものではもちろんなく、
お客さまの状況次第では上のリスト以外の資料の準備をお願いする場合もございます。
その際はどうぞご協力いただければと思います。

この記事が「税理士に相続税申告を頼もうか」とお考えの方の参考になれば幸いです。


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 相続税や贈与税でお困りの方へ
税理士試験の予備校で相続税を教えていた税理士がすべての業務を直接担当。
わかりやすいアドバイスでお困りごとを解決します。 相続税・贈与税でお困りの方へのサービス

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この記事を書いた人

税理士 尾藤武英

税理士 尾藤 武英(びとう たけひで)
京都市左京区下鴨で開業している税理士です。
過去に税理士試験の予備校で相続税を教えていた経験から、相続税が専門分野。
事務所開業以来、相続税や贈与税の申告、相続税対策、相続税贈与税をテーマとした研修会の講師など、相続税に関する業務を多数行っています。
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