路線価方式と倍率方式。宅地の相続税評価の2つの方法を解説します

「路線価方式」と「倍率方式」

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京都市左京区で開業している税理士です。元税理士試験受験予備校「相続税法」講師。相続税や所得税など「個人の方にかかる税金」に特化した税理士として活動中。個人で運営し、「税理士が直接お客様に全てのサービスを提供すること」を大切にしています。詳しいプロフィール「DEEN 税理士」「Nikon 税理士」で検索1位な個人ブログはこちら

建物の敷地として使われている土地のことを「宅地」と呼びます。
↓当事務所が入居しているマンションの敷地もそんな「宅地」の一種です。
マンションの敷地も「宅地」の一種です

この宅地が亡くなった人の遺産の中にあって、それにかかる相続税を計算する必要があるときは、
その宅地の税金計算上の価値を求める(=「評価する」と言います)必要があります。

そして、そのための方法には、

・路線価方式
・倍率方式

の2つがあります。

この記事では、これら2つの方法、「路線価方式」と「倍率方式」について、それぞれどんな方法なのかを解説していきます。

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1つ目の方法:路線価方式

まずは、「路線価方式」について。
こちらは、主に市街化区域内(≒市街地の中)にある宅地を評価する際に使っていく方法です。

評価しようとしている宅地が接している道路に付いている1㎡あたりの値段(=「路線価」と呼びます)に宅地の面積(地積)を掛けて価値を求めます。
算式にすると↓こうです。

【路線価方式の算式】
宅地が接している道路の路線価×宅地の形状などに応じた補正率×地積

路線価はその年分の数字が毎年7月に公表されます

この「路線価」は、国税庁から毎年7月1日にその年分の数字が公開されています。
宅地を持っていた人が亡くなったのが平成30年の場合、平成30年分の数字を使って計算します。
直近7年間の路線価は以下のサイトで確認することができます。
財産評価基準書|国税庁

↓このように、地図の形式で各地点の路線価がまとめられています。(当事務所周辺の路線価図です)
当事務所周辺の路線価図

自分が知りたい場所の路線価の探し方は以下の記事で解説しています。
【平成30年版】相続税路線価の調べ方を税理士が解説します

路線価の見方は?

上の路線価図の事務所周辺をフォーカスしてみました(^^;
縦方向や横方向に走っている道路に付いている「330D」とか「340D」とかいう符号の「330」「340」という部分がその路線(道路)に付いている路線価です。
アタマの数字が路線価

「330」とか「340」の後についている「D」という記号は、その宅地の借地権割合を表しています。
宅地やその上にある建物を他人との間で賃貸借していた場合に使っていく記号です。

借地権割合については以下の記事で解説しています。
借地権割合とは?賃貸借の目的となっている宅地の相続税評価の方法

どう計算する?

路線価は、その宅地の1㎡あたりの値段を千円単位で表示しています。
ということは、330なら330,000円、340なら340,000円が1㎡あたりの単価で、それに実際の地積をかけたら土地の相続税評価額(相続税計算上の土地の値段)が出ます。

【具体例:路線価340,000円の道路に接している200㎡の宅地の評価】
340,000円(路線価)×200㎡(地積)=68,000,000円

これが、路線価方式の基本的なやり方です。
「意外とカンタンやな〜!」と思われたでしょうか??

実は、ここからが長いんです…。

実際はもっと複雑です

上の算式だけで終わったら確かにカンタンなんですけど、上の算式はあくまでも基本のパターン。
実際はもっと複雑な算式を組む必要が出てきます。

というのも。
この路線価って、↓こーんな感じの

きれいな正方形で、道路に対して垂直に接している宅地を評価しようとする場合に使う数字なんです。

でも、実際↑こんなきれいな形をしている宅地はまず無いですし、
それらの宅地は正方形の宅地に比べたら使い勝手が劣るので、評価上もそれを反映させるべく、
実際に算式を組む場合には、その宅地が置かれた以下のような状況に合わせて、路線価に様々な調整を加えていきます。

  • 宅地の奥行きの距離は長すぎたり短すぎたりしないか
  • 宅地が路線価の付いている道路に2つ以上接していないか
  • 宅地の間口の距離は狭くないか、間口に対して奥行きの距離は長すぎないか
  • 宅地がいびつな形をしていないか
  • 宅地が「地積規模の大きな宅地」に該当しないか
  • 宅地が道路と直に接しているか(道路から離れた場所にないか)
  • 宅地の中にがけになっている部分はないか
  • 宅地の中に指定容積率が異なる部分はないか
  • 宅地の中にセットバックが必要な部分はないか
  • 宅地の中に都市計画道路の予定地が含まれていないか

などなど。

冒頭で紹介した路線価方式の算式をもう一度持ってくると、

【路線価方式の算式】
宅地が接している道路の路線価×宅地の形状などに応じた補正率×地積

とあります。
今言っているのはこの算式の中の「宅地の形状などに応じた補正率」という部分です。
それぞれの状況に応じて、以下の国税庁のページに挙がっているような補正率などをかけて、宅地の評価額を調整していきます。
奥行価格補正率表(昭45直資3-13・平3課評2-4外・平18課評2-27外改正) |国税庁

これらの調整を抜け目なく加えられるかどうかが路線価方式の評価の肝です。
ここは税理士であっても抜けが生じやすいので、スキルの差が如実に現れる部分でもあります…。

「地区区分」とは?宅地がある場所によって拾う補正率が変わる

また、上で紹介した調整をする際には、その宅地がどんなエリアにあるのかにも着目する必要があります。

ウチの事務所周辺の路線価図のアップをもう一度貼り付けてみます。
↓左で赤丸している路線価(330D)の周りにはマルの記号がついていますが、右で赤丸している路線価(340D)の周りには何もついていません。
左の路線価の周りには丸がついているけど右にはない

これにはちゃんと意味があって、その宅地がある場所の地区区分を表しています。

場所に応じて7つの「地区区分」がある

路線価では、その宅地の場所に応じて7つの地区区分を設けています。
「地区区分」というと難しく聞こえますが、ざっくり言うと、「その宅地が、主にどんな土地の使い方がされているエリアにあるのか」を分けたものです。

名称を挙げたほうがイメージが湧きやすいかもです。

  • ビル街地区
  • 高度商業地区
  • 繁華街地区
  • 普通商業・併用住宅地区
  • 中小工場地区
  • 大工場地区
  • 普通住宅地区

  • 住宅地のど真ん中だったら「普通住宅地区」
  • 住宅とお店が混在しているエリアだったら「普通商業・併用住宅地区」
  • 市街地のど真ん中だったら「繁華街地区」「高度商業地区」「ビル街地区」

そんなイメージで捉えて頂ければ!

地区区分の凡例は路線価図に載っています

宅地がどの地区区分に該当するかは、上で紹介したように、路線価の周りについている記号で判断できます。

すべての路線価図の左上には地区区分の記号の凡例が載っています。

アップにすると↓こんな記号です。
地区区分の凡例

 
ウチの事務所周辺の路線価図でもう一度確認すると、
左の「330D」の路線価をメインで使っていく場合は「普通商業・併用住宅地区」にあるものとして、
右の「340D」の路線価をメインで使っていく場合は「普通住宅地区」にあるものとして、

それぞれ、宅地の形状などに応じた調整計算をしていきます。
普通商業・併用住宅地区と普通住宅地区

同じ奥行き14mの宅地でも、
・市街地のど真ん中にあるのと
・住宅地の中にあるのと
・周りが工場ばかりの場所と
では価値が違って当然
なので、
画一的に「奥行きが何mだったらいくら!」とするのではなく、宅地がある場所や使用の用途によっての価値の違いを反映させよう!という目的でこのような区分が設定されています。

路線価方式のまとめ

以上、ここまで、「路線価方式」ってどんなやり方?といった点をいろいろと確認してきました。

上で紹介したように、路線価方式で評価する場合には、

  • 計算する年分(亡くなった年分)
  • 宅地がある場所
  • その場所の地区区分
  • 宅地の形状などから、調整計算できる余地がないか

などなど、いろんな情報を集める必要があります。

単純に路線価に面積かけりゃ済むわけじゃないのね。奥が深いな〜。

というのが掴んでいただければ幸いです(^^

2つ目の方法:倍率方式

次に紹介するのは、2つ目の方法・「倍率方式」です。

こちらは、道路に路線価が付いていない地域で使います。
路線価は市街化区域内にある道路に付いているので、つまり、市街化調整区域をはじめとする、市街化区域外の宅地は全て倍率方式で計算をします。

財産評価基準書のページから路線価を探してみたけど見つからなかった場合
とか、
・↓このように、路線価図に「倍率地域」と書かれている場所に宅地がある場合
には、その宅地は倍率方式の対象エリアです。
「倍率地域」と書かれているエリアは倍率方式で評価

算式は路線価方式よりも単純で済みます

倍率方式で計算する場合の算式は↓こうなります。

【倍率方式の算式】
宅地の固定資産税評価額×国税庁が場所ごとに定める倍率

その宅地の「固定資産税評価額」に決められた倍率をかければOK、です。

倍率も路線価と同じ「財産評価基準書」から拾います

どの倍率をかけていくかは、路線価図と同じく、財産評価基準書のページから拾うことができます。

都道府県別の財産評価基準書の目次のページから、2段目にある「評価倍率表 一般の土地等用」をクリック。

その先で市区町村を選択すると、↓このように、各地区ごとの倍率が出てきます。

地域ごとに、
・路線価方式で計算するのか倍率方式で計算するのか
・倍率方式で計算するなら倍率はいくらか
が一覧で挙がっています。

具体的にはどう計算?

たとえば、固定資産税評価額が1,000万円で、倍率が1.2倍の宅地なら

【具体例】
10,000,000円(固定資産税評価額)×1.2(倍率)=12,000,000円

これで終わりです!
路線価方式に比べるとずいぶんカンタンに終わっちゃいます。

路線価方式の場合、宅地の形状などに応じてごちゃごちゃと調整計算をやっていく必要がありました。
ただ、固定資産税評価額にはそれぞれの宅地が置かれた状況が織り込み済みなので、倍率方式では路線価方式のような調整計算をする必要は基本的にはありません。

基本はカンタン。でも油断は禁物

とはいえ、実際の面積が固定資産税の課税地積と違う(←よくあります)など、宅地の状況が固定資産税評価額の中に織り込まれていない場合には調整計算を加えることもあります。

また、大前提として、「宅地がどの地域(風土地区とか)にあるか」をわかっていないと正しい倍率が拾えないので、その点のリサーチも欠かせません。
最近はネットで調べられる自治体も増えてはいるんですが、
倍率地域の自治体はその辺の整備がされていないことも多いので、その場合は役所に行って調査することになります。

びとう

「倍率方式なら計算単純やし現地の状況は見なくてもええわ!」
なんて税理士もたまにいますが、それは危険です。
倍率方式の宅地であっても、計算をする際は私は必ず現地を見て、宅地の現況を把握するようにしています。

まとめ

というわけで、この記事では、相続税や贈与税を計算する際の宅地の評価額の計算方法を紹介しました。

方法には2つあって、

  • 市街化区域内にある宅地=路線価方式
  • 市街化区域外にある宅地=倍率方式

をそれぞれ採っていくんだ、ということをまずは押さえてください。
その上で、それぞれどんなやり方で計算していくのか、上の内容を確認していただければと思います。

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